焔風の支配者・十八
──午後2時55分・ミサキ視点──
「先生、今おかしい事が起きました!能力が、反応しませんでした……」
そんな事を言いながらチハヤは急いでこちらに戻ってきた。ミズキ先生に対処法を聞いているようだ。
「ほう?それは変だね。何か原因は思いつく?」
「もしかしたらハナビちゃんは能力を受けないのかもしれない……」
「うーん、じゃあ能力が反応しなかったことだけは伝えてきていいよ」
「わ…かりました。行きます」
そう言うとチハヤは足早に私たち、というかミズキ先生の前を去っていった。
「………」
「……ミサキ?」
「わかってます、今物事を俯瞰して見られるのは私だけ。私が情報を集めるんですね?」
「わかってるじゃーん」
「情報の大切さを思い知ったのでね」
私たちが今ここに集まれているのは、ヒバナさんが掴んだ情報、ヒバナさんが残した爆発という情報があったからだ。情報は姿形はないにしろ、戦況を変えるほどの力を持つと私はもう知っている。
「戦いは大きくなればなるほど情報の価値が上がりまくるからねー」
のほほんとした態度の先生を尻目に考察を始める。急げ、ここまで頭を回せるのは私だけなんだ。
ハナビちゃんの能力、だんだんわかってきたがあれは恐らくはものを「動かす」という点に長けている、と考えれば理にかなっているだろう。そうすれば瓦礫を一気に動かす、つまり飛ばす事ができるだろうし、逆に「動かない」ようにすれば煙を固定して、体を宙に浮かせることもできる。ともなればその対処法は……いや、さっき一回だけハナビちゃんが避けた時があったはず、あれはなぜ?死角からの攻撃だろうか?
次、チハヤの能力が通じなかった件、あの時私は自分の体が軽くなった気がしなかった。なのに能力は間違いなく使った?さっきチハヤは何よりも先に「能力が使えなかった」じゃなくて「能力が通じなかった」と言った。となれば……チハヤは能力を進化か何かさせたのだろう。そして私には感じれない何かをして見せた。それは何なのかまではわからないが一つ試させたい事がある。
「チハヤ!ちょっと来て!」
「……何?ちょっと今すごく覚悟決めてたんだけど!」
「ごめん、けど、一回不意打ちする事だけを考えてやってみてくれない?」
「え、不意打ち?」
「二人が派手に戦ってるからある程度は大丈夫だと思うし、どうかな?一発やったらすぐ帰ってきていいから、ね、先生もそれでいいよね?」
「……悪くない。安心してよ、何かありそうだったら私が守ってあげるから」
「っっ……わかった……一回だけね」
そう言ってチハヤはさっきとは比べ物にならないくらい震えた足で建物の方へと歩き出していった。きっとぐるっと大回りしてハナビちゃんの背後を取るつもりなのだろう。じゃあ期待して見ていよう。
あ、風壁が解除された。ヒバナさんは少し擦り傷があるっぽいけど、ハナビちゃんはまだ傷一つない。あの風壁の中でも一撃も食らわすことはできなかったか。
しかしここまで来れば確実だろう。ハナビちゃんがあそこまで攻撃を避け続けている理由、受けるとダメージ自体は食らうんだろう。完全に不死身じゃないというだけでモチベ上がるな。ミズキ先生とか見てみ?何やっても倒せるビジョンすら見えないから。あれほど絶望的なのはないね、はは……いや先生?冗談です、よ?そんなに怖い目で見ないで……
──ヒバナ視点──
「これも通じないか……次あるか?」
「もうそろそろ尽きてきたよ?右手の建物を落として!」
「まだあるんなら十分、20秒頼む!」
言われた五階建ての建物の窓をドロップキックで割って入る。ん?コンクリ製の建物なのに鉄筋入ってないな。ならここと……この柱と……この亀裂に捩じ込んで……よし、起爆。
ドォオオン!!と全ての爆発が同時に起きる。それでもその爆発の大きさでどっちの方向に倒れるかくらいは目測で判断できる。さぁ、これだけで潰れるわけはないだろうが……
「潰れろ!んでもって」
決め台詞だけは言っとくか!
轟音を鳴らしながらゆっくりと建物の一階が斜めに割れ、その上……二階から上がバランスを崩して倒れていく。その間に俺はすぐさま離脱して隣の建物に移り、窓枠の窪みに指を掛けて様子を見る。体積にして約4.5階分ってとこか?さぁどうなるか……
……
………
…………
まじかよ。
なんであいつ……建物浮かしてんだよ。ここまで来たら……本当のバケモンじゃねえか。
コンクリート 1m3 = 250〜380kg。
一般的な5階建てマンションで使われるコンクリート 600〜1500 1m3(AI調べ)
あとはもう、わかるね?
最大約570トン……




