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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
星を追う飛魚編
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焔風の支配者・十五

 ──午後2時15分・富士山町南部上空──



「ふふっ、お兄ちゃん気付いてくれるかな?」


昨日のようにあからさまに自分の存在を周りに見せつけるように自身を宙に止めて(・・・)周りを見渡す。おっ、いたいた。お兄ちゃん、ちゃんとこっちみて走ってきてる。


でも嬉しいなあ。お兄ちゃん、私のためだけにあんなに必死になってくれて、ほんとに嬉しい。でもやっぱり許したくはないかな。できるだけ苦しませてから殺しちゃいたい。


『お願い、もうやめてよ!』


「なんでよ。この気持ちは私だけじゃない、私も、貴方も持っていたものでしょう?なら止めないでよ」


『こんなのを俺は望んでいないの!』


「………」


『お願い!俺を分かってよ!』


「貴方はただ見ていればいいの。それで事が済んだら、また戻るから」


『でも───、────!』


プツッ。うるさいから切っちゃった。いくら体を貸してもらってるとはいえ少しは静かにしててほしいよね……さて、どうやって遊ぼうかな〜。その時になったらわかるか。



 ──午後2時30分・富士山町南部──



多分気付かれてはいる。ただ逃げないし対処すらしない。これがただの舐めプなのかどうかはわからんがこちらのすることは変わらない。登って、捕まえて、ぶちのめす。それだけだ。


近場のマンションを能力で少し、壊れない程度に壊して足場を作りつつその上を魔力強化で駆け上る。あいつは目測にして上空約30メートルくらいに浮かんでいる。このマンションの屋上からならギリ届くはずだ。


そうこうしているうちに屋上にまで辿り着き、その勢いと助走を足した勢いで一気に──跳ぶ!


「黒球は何も爆破だけじゃねえんだよ!」


黒球は生成直後は黒い球、魔力で構成された「物質」としてそこに存在する。爆発するまではそいつはただの球だ。


空中で生成したバランスボール並みの黒球を両足で踏み切る。大丈夫だ。このくらいの衝撃ではあれは爆発しない。そして、これでならギリあいつに届く!


「まずはそっから引き摺り下ろしてやる!」


背後でとんでもない爆発が起きた事が音と衝撃波でわかる。建物のどこかに当たったのだろうか?ならまずいな、破片になると飛んでくるかもしれない。いや問題ない、その前に終わらせてしまえばいい。


そうして俺は偽ハナビの脛を掴んでそのまま一緒に落ちていく、つもりだった。


「……『止まれ』」


「っっ!!」


そんな言葉を聞いた瞬間俺の体は動かなくなってしまった。空中にも関わらず、だ。いや、体が動かないだけじゃない、俺は今偽ハナビに向かって突っ切っていたはず、なのに距離が一向に減らない。文字通りこの場に「止まって」いるんだ!


それを自覚した次に感じたのは重力だけだった。横への運動はゼロ、自由落下だ。クソ、こうなると黒球は使えない。なすすべなく落ちるしかないのかよ!


(せめて受け身だけは……っと、よし)


地面に叩きつけられたわけでも無理な姿勢というわけでもなかったため安全に着地することはできたが、また振り出しに戻っちまった──いや、振り出しにまでは戻ってないらしい。


「いやぁ、なんかつまんないし、折角だから降りてきてあげるよ」


そう言いつつ道路に着地する偽ハナビ。相変わらずムカつく笑顔しやがって。


「ハッ!そりゃありがてえな、首しめご苦労さん」


「うふふ、だって私ね、今負ける気がしないの」


「奇遇だな、俺もだ」


とは言ってみたものの、正直無理っぽいなこれ。一応さっきの爆発でテイラーたちが気付いてくれればいいんだが、少なくともどうここまで降りてきたのかすらわからない俺に勝ち目はほぼないだろう。


目線は同じ、いや、俺の方が高いはずだが、あいつはヤバい。少しでも戦闘を長引かせて増援を待つ!


「……なぁ教えてくれ、俺のどこがそんな悪く思ったんだ?」


「……。…悪く?お兄ちゃんに対してそんな事思わないよ!私は──」


「あーそれ以上言うな、どうせ妹ですとか言うんだろ?でもな、これだけは聞いておきたい。人を殺すってのはな、俺が見たこの20年と少しでは一つたりとも起きなかった。外界を見てきた俺だからわかる。殺人は最も重い罪でありながら全ての人間が忌み嫌い嫌厭するものだ」


「……それはどうしたの?」


「お前にはできねえよ、少なくともそんな薄っぺらい笑い方してる時はな!」


「やってみよっか?私はできるよ?」


「うるせえな、じゃなんであの時あえて急所を避けた?」


「それは……」


「当ててやる、お前は俺を殺したくない」


「それは絶対違うもん!お兄ちゃんが嫌いだから、私がお兄ちゃんを殺すって決めたんだもん!」


「『兄』と呼ぶなっつっただろうがこのニワトリがァ!!!」


次に俺が取った行動は攻撃ではなく、回避だった。しゃがむようにして回避をすると、もともと自分の胴があったところに破片が浮いていた。危ねぇ、これ当たったら腹にこれ埋め込まれてたって事だろ!?マジで死ぬわ。


「一つ教えてやるよ」


「…何!?」


「うおー癇癪起こしてる。だがもう時間切れだ」


「は?そんな事ないし、次はもっとおっきいのぶつけるから」


「そんな余裕、もうねえよ」


この展開前も見たな……まぁいい、こちらとしては最高が二回起きてるんだ。なにか心配する必要もない。


「いや全員で来られても困るんだが?」


「逆に今来なくていつ来るのさ」


「あれが、ハナビちゃん?」


「………」


とりあえず今回俺たちが負けることはないだろうな。……無いよな?


駆けつけてきた増援を見て、俺はそんな杞憂と共に安堵のため息をつくのだった。

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