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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
星を追う飛魚編
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焔風の支配者・十一

 ──午後1時・小学校──



小学校はやはり避難所になっているのだろう。大勢の人が集まっている。大人子供バラバラで、それぞれが割り当てられたスペースで自分たちの仮住まいを作っている、そんな様子が校舎の窓から体育館の扉から、目の前にいっぱい広がっていて少し気持ち悪い。こんなに大勢の人が被害に遭っていると言う現実に、そしてこの学校も安全であると言い切れない現実にだ。


それでも「大勢が集まる」という予想は当たっていたことになるし、情報も多いはずだ。早速聞き込み調査を始めよう。チハヤは意外と部外者には内気なので私がここからは先導しよう。


「すみません、この辺りで小さい女の子を──」


「君たち!こんな時間まで一体何をしていたんだ!」


私が選んだのはこの場を制御している町の警察なのかこの学校の先生なのかわからない──が、その男の人の怒気が丸見えな声色に私は一瞬だけ顔を強張らせる。多分チハヤはもっと固まっているだろう。姿は見えないが、なんとなく今チハヤは私に後ろに隠れていると思う。


「──!あぁすまない、いつものクセで怒鳴ってしまった。命からがらここまでやってきたんだろう?まずは休んでくれ」


怒り心頭のような表情はそう言うと同時に今度は申し訳なさと焦りに変わっていく。今のこの状況、落ち着けと言われて落ち着ける人の方が少ないんだろうし、この人も落ち着けずに、それでも頑張っているような必死さが窺える──私も結構読心術使えるかもしれないな。


とはいえ私たちが必要なのは安全な場所ではなく情報だ。


「あの!それで、ここに一人で来た子どもはいますか?」


「何人かはいたと思うが……もしかして姉さんかい?」


本当は友達、と言いたかったが、いちいち言うのも面倒くさいので嘘をつく。大丈夫、決して大きな嘘じゃない。


「そん…な感じです。黒髪の長髪で、10歳ぐらいの子ですけど」


「うーん、どんな服だったかとかは覚えてる?」


「普通の半袖短パンです。今日は水色のTシャツを来ていたはずです」


今思えば、初めはハナビちゃんは質素な服を着ていた。ズボンとシャツには分かれていたが、あまり洗う事ができないからか、どこかしらに泥などの汚れが付いていた。それでもハナビちゃんのことを不潔だとは思わなかったな。


「水色、かぁ。それなら見ていないよ」


「そうですか、ありがとうございます」


「ちなみにその子の名前は?」


「ハナビって言います」


「ハナビちゃんね。はい、じゃあもしこっちで見つけたら教えてあげるよ」


思わぬ協力に感謝をして私たちはここを去ることにした。ここにいないとなればほぼ確実にハナビちゃんは一人だろう。ハナビちゃんは一人だろう10歳とはいえ頭はいい。どこに行くべきか、一人で判断できる──流石に買い被りすぎか。私ですらできるか怪しいんだもん。


背後から「待て!危険だ!」と聞こえたが、それは重要ではない。あえて知らんぷりで走っていく。チハヤはその人が見えなくなるまで私を抱えてくれなかった。



 ──午後1時10分・道路──



小学校から離れ、私たちだけになったことを確認してから話を始める。


「さて、情報はなかったけどどうしようか」


「とりあえず合流じゃない?事情を話せばきっとヒバナさんも協力してくれるよ」


「あー」


正直言って……抵抗がある、かなり。ハナビちゃんが消えたことをヒバナさんが、そしてテイラーさんが聞いたらどんな反応をするのだろうか。私が膝から落ちたんだ。二人はリアクションには出さないかもだが、私以上の衝撃を受けるだろうがそれでも仕方がない。


「でもなんて言おう。ハナビちゃんがいなくなっちゃったことなんて、そうそう──」


「はぁ、やっぱりか」


「!」


「!!」


いつの間に!?


「家に帰ったら誰もいなかったし、ワンチャン賭けて合流までしたが……そういうことなんだな」


私の背後には今一番会いたくなかった人物──ヒバナさんがいた。いつも険しい表情の彼はいつも以上に顔を暗くしている。


「ごめんなさい!私がついていかなかったせいで──」


私は咄嗟にただそう言うことしかできなかった。自分が全面的に悪い。自分の行動でこの事態を防ぐことが出来たことが分かっているから、弁明も何もできない。ただそれだけ言って、ヒバナさんが何をしようとそれは仕方がないと腹を括っていた、が。


「いや、俺がこの事態を予測できなかった。俺に非がある」


「それでも──」


「すまないが……少し一人にさせてくれ」


それだけ言って、ヒバナさんは私たちの隣を横切って力無く歩いて行ってしまった。私に止める資格なんてなかった。ただ、死角に入って見えなくなるまで、目でその様子を追いかけるしかできなかった。


テイラーさんが来た時にはもう、ヒバナさんはどこにもいなかった。

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