表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
星を追う飛魚編
89/100

焔風の支配者・十

 ──午後0時35分・富士山町端──



「なるほど、こりゃあ流石に無理だわな」


十分ほど走り、最終的に富士山の山麓についた俺たちが見たのは、とんでもない光景だった。事前の情報として「岩が溶けている」ということを知らなければこれの正体すら知ることはできなかった。大粒小粒形も色も様々で液体と固体でスムージーみたいに詰まった質量、そうとしか形容し難いそれは、風壁に沿うように動きを止めている。所々その質量に火が混じっているのは元々あった木や草が燃えているのだろうか。


状態を調べるためにこの質量に近づいていく。とても熱そうだ。触ったら一生物の後遺症になるような気がする。あとやっぱりめちゃくちゃに重そうだ。いろんなものが一気に圧縮されたせいか、密度がハンパねえ。試しに拳大の大きさの黒球を投げてみる。着弾地点で爆発するも……やっぱり無傷。これは多分あれだな、爆弾で地面があまり掘り起こされないのと同じだ。俺が爆発の方向を変えれたら良かったんだが、現状効果はあまりなさそうだな……ん?


…………………─────………──……


ふと聞こえた今のはきっと……あまり考えたくはないが………もう飲み込まれてしまった生き物の声。不運にも逃げ遅れたのか、正常性バイアスが働いたのか──この声の主は建物から動かなかったのだろう。その結果、壊された瓦礫の中に埋まってしまった。そういう感じだろうか。


風壁はかろうじてまだ機能しているのか、この質量は今拮抗状態にある。しかし、風壁は恐らくこれを止めるだけであって押し戻す役割までは持っていないのだろう。俺たちにもう手遅れになってしまった人を助けることはできない。


俺自身は宗教は信じない派だが、今だけは少しだけ合掌しておきたい気分になった。せめて一息で楽に殺してやりたい気もするが、それすらも許されない。この中にいる男か女かもわからない誰かはこの灼熱の中でゆっくり殺されていくんだろう。この中だったら……呼吸困難がいいな。一番楽に死ねそうだ。俺からはこうやって楽な死に方を願うくらいしかできない。


俺は確かに笑みを浮かべて走っていたが、それとは別に、この瞬間にこの災害がどんなものなのか、初めて理解できた気がする。これはしっかり犠牲者も被害も出る厄災なんだ。


「そういえば魔力消費についてはどうするんだ?」


「大丈夫、ここに来たのは座標を知るためだから。風壁を新しく作るんじゃなくて、元々あるリソースのバランスを変えるだけだから、魔力はほぼ使わない。他の部分は弱くなっちゃうけど火山灰さえ防げれば問題ないから被害が大きくなることはないと思う」


なるほど、考えてはいるんだな。それでも初手の魔力消費は計算外でしたと……んなわけねえだろ。普通に怪しいが今言っても何も言わねえだろうな。


「……よし、とりあえずこれで食い止められると思う」


「そうか、じゃあ次はどうする?」


「一度帰ろう。みんなと今後を共有しておきたい」


「俺には今共有しないのか?」


「いいでしょ?どうせ後で喋るんだから」


「へいへい」


今更だが走るの面倒だな……来た時みたいにバイク使うか?いや、道の状態が悪すぎて使えないな。クソ、確かに道路は大切だわ。


そこら中凸凹していて、至る所に炎と瓦礫の山が散乱しているアスファルトを見ながら、かろうじて車椅子で移動できる隙間を見つけつつ、時に道を開きつつ、進んでいく。ここから家まで15分ってとこか?


何だか不安な気分になってきた。確かにそこにはミズキがいる。俺が直々に家まで送ったことを確認した。それでもこの目で確認しない限りは本当にハナビが安全に留守番できているのかがなぜだか不安になったのだ。そして、案の定というべきか何というべきか、その直感は………当たっていたんだ。


「は?」


15分後、俺たちがたどり着いた家の中には、ハナビはおろか、ミサキもミズキもいなかった。文字通りのもぬけの殻になっていた。俺たちが見つけたのはその割れた窓ガラスだけ。何も、誰もいなかった。



 ──同時刻・ミサキ視点──



「勢いに任せて外に出てきちゃったけどこれからどうしよう」


「とりあえずは情報を集めるべきじゃない?今何が起きてるのか一旦把握しないと」


チハヤの言う通り、確かにまずはそうした方がいいだろう。それにもしかしたらその過程でハナビちゃんの情報もあるかもしれない。


「なら───避難所に行こう。人が集まってる分情報も多いはず!」


「でも、避難所ってどこなの?人の流れ的にあっち方向ってことぐらいしかわからないよ?」


「これは結局ただの自然災害なんだよ?行くなら学校か公民館ってとこでしょ!道案内するから連れて行って!」


「了解!」


流れるようにチハヤに抱えられて移動する。流石にさっきみたいな速度は出さないとはいえ、私が走るより十二分に速い。この街に滞在していた頃、近くに小学校があることを思い出したのだ。今回は頭上を気をつけなければならないため寧ろ大きな建造物は避難所に適さないかもだが……初体験の災害、来るならここに来るはずだ。


「この次の信号右!」


「了解!」


この調子なら5分で着くが、チハヤの体力も温存しておきたいからそんなに走らないでいいんだよ?と言ったが、結局聞く耳を持ってくれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ