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能力教室の号哭  作者: スペルナ
星を追う飛魚編
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焔風の支配者・九

 ──同時刻・公園──



ようやく辿り着いた公園はさっきよりも状況が悪化しているようだった。奇跡的にテイラーのいる所は影響を受けていないようだが、植木は全て灰と化し、昨日この時間に座っていたはずのベンチでさえ、そこにあった痕跡のみを残して消えていた。二箇所に未だ熱を持った赤い岩が落ちていて、その周りにクレーターが生成されている。そんな忌々しい熱源を腹いせに爆破させながら、車椅子に深々と脱力しているテイラーに声をかける。


「おい、生きてるか?」


「ぁぁ、ヒばナか」


「んな死にそうになってさ、体張りすぎじゃねえの?」


死にそうっていうかほぼ死んでるだろこれ。テイラーの様子はそう言っても過言ではない程に悲惨なものであった。どこからも出血は無いし、なんなら昨日と変わった部分なんてあまりないように感じる。しかし明らかにその呼吸や体勢、半開きになっている目や力が入ることなく垂れ下がっている腕はもう限界であることを知るのには十分だ。


「ぃゃー、ちょっとね………」


「なんでそんな死にかけてんだ?当たったわけでもないだろ?」


「少し、魔力を……」


「魔力不足か……少しだけだからな」


手をのせて魔力をその手に移す。少しずつで良い。それでも今は、最低限の魔力が必要なんだろう。俺自身に影響が出ないくらいに調整したため完全に回復、とまではいかないだろうが、みるみる顔色が良くなっていくあたり効果はしっかりあるのだろう。


「……………ふぅ、ちょっと良くなったわ、ありがとう」


「ったく……準備してたってのは嘘か?こんな時に一人でくたばろうとしやがってなぁ、噴火はまだ終わってねえぞ?」


「一応これでも抑えたんだけどもね、思ったより魔力消費が多くて死にかけちゃった」


「おいおい、大丈夫かよ」


そんな事を言いつつも、軽口を叩けるのならもう大丈夫だろう。そんなこんなで俺の知っている情報、ハナビは家に送り、ミサキも今向かっているから心配ないこと、ミズキが来ていたことを伝える。


「そう、じゃあ今ミズキは家にいるわけね」


「あぁ、んで、俺らは心置きなくやることやれるってことだな」


「ならちょっと場所を変えようかな」


「ほう、何処にだ?」


「山麓の方、風壁を修正しなきゃ」


なるほど、そういえば山麓の方では高熱で溶けた岩を始めとした流れが押し寄せてきていると聞いたな。ならその部分の風壁を更に強くすればいい、と。


まあ見知らぬ輩を助けるよりかは見知った顔を助けた方がいいだろ。折角だし超サポートしてやろう。


「ここから動いて良いのか?」


「自動型にしたからもう大丈夫」


自動型?そこまでできる余裕があるのか?というかあの風はそんな事ができるくらい単純なものなのか?魔力はあんなに使うのに?


「そうか。……あのな、別にあんたの実力を低く見てるわけじゃない。少なくともあんたはここにいる……いや、ミズキの次くらいには強いだろ?」


「あとフォボスの次くらいかな?差は大きすぎるけれど」


「そんなあんたが魔力を枯渇させるほどの魔力消費、その魔力は全部あの風に行ってるんだよな」


「そうだね。少なくとも火山灰を防ぐくらいの風力で、範囲はこの町を覆うくらいにしてる」


「そうか…………じゃあやっぱおかしいだろ。あの程度で(・・・・・)あんなんになるわけねえよ。あんた、他にも魔力使ってんじゃねえか?」


「…これもまた必要な出費なんだよ。早く行こう、こうしてる間も噴火は止まってくれない」


「……」


自分の言いたいことだけを一方的に言って車椅子による移動を始めたテイラーの後に速度を合わせる形で俺も移動を始める。


……無視、か。何か隠したい事があるんだろうな。


俺たちはともかく、テイラー自身はこの噴火のことを知っていたはずだ。ならやっぱり対策もずっとしていたはずだが、結果は今の大惨事。テイラーは死にかけ、街は町は依然大混乱だ。噴火のスケールを見誤った?あり得る。こいつだって話に聞いていただけで実際の体験は初めてなんだ。……ん?


「そういえばひとつ気になったんだがいいか?」


「何?」


「その、噴火って概念、元を辿れば誰から聞いたんだ?」


「ミズキだよ?それ以外にあり得なくない?」


「それは、口頭で言われたのか?」


「うん」


「証拠は、何かあったのか?」


「ないね。その時にこれから起きることを言われたの。このままだとみんな死んじゃうから、対策してほしいって……」


「なぜ、そこまで信じれた?」


「え?」


「あんたがこれまでに費やした7年と数ヶ月、それは決して短くない年月だし、生半可な覚悟でやったわけでもないだろ?少なくとも7年をいつその災害が来るかもわからない極限状態で過ごすくらいには覚悟はしていたってことだ。普通そこまでするか?あんたはそんな他人の発言一つだけでそんな大掛かりなことするような奴じゃねえだろ?」


「それは…………確かに、なんでだろう……」


「あいつ、まだなんか隠してやがるな?」


「確かにそれはあるかもだけど、その前に風壁作りに行くよ!」


ますます怪しいな、天城ミズキ。あいつは一体何なんだ?あの笑顔の裏で、いったい何を考えている?あの左眼は一体……いや、今はそんな考えは要らない。まずは目の前の問題からクリアしてかねえと。


スピードを上げたテイラーの後を、それを上回る速さで走り、並列になって走り続けるのだった。ゴールが何メートル先かは、数分前のテイラーの活躍によるな。

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