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能力教室の号哭  作者: スペルナ
星を追う飛魚編
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焔風の支配者・八

 ──午後0時20分・テイラー家──



ただその光景を見ることしかできなかった。そこで何かが行われているわけじゃない、ただそれが終わっただけの、もう無機物しか残っていない部屋をただ見るだけ。呆けていた。


私のせいだ。今思えば警戒心が無さすぎたんだ。考えろ、ここは外界だ。日本区とは比べ物にならないくらい汚れ仕事に特化している人が多いのだ。加えてこの状況、一般人ならパニックになるだけかもしれない。それでもヒバナさんは普通に動き回れているんだ。他の人物が暗躍していたってなんの不思議もないし、寧ろ当たり前だった……そんなことにすら、気付けなかった。


先生が、ヒバナさんが作ってくれていたこの絶好の機会を、外界を、世界を知るための機会、経験が結局!……何にも使えなかった。それが悔しいのと同時に、今から何をすればいいのかがわからなくて戸惑いが生じる。


探す?どうやって?チハヤの能力は使えないから、私が自分の力でどうにかしなきゃいけない。でもこんな広い場所で、こんな異常事態の時に?そんなの不可能だ。理想と現実は最も遠い場所にあるって、そのことを私は知っているはずだ。


「ミサキ……」


「どうしよう、ハナビ、ちゃんが、誘拐されちゃった……」


「そのさっきから言ってた『ハナビちゃん』ってのは?」


「私の……友達」


「そっ……か」


「…………」


「あ、そうだ、まだそんなに時間経ってないでしょ?なら今すぐに探し始めたら……」


「もう無理なんだよ!」


親友にこんな大声をあげるなんて最低だと思う。それでもこの状況は絶望的で、情緒なんて保ってられない。


「この家……隕石に耐えられる様に強く作られてたんだ……この家だけは、全く壊されてなかったでしょ?それなのにガラスは割れてる。ここだけ……」


「でも、三人がかりでやればきっと……」


「私以外の二人は声すらわからないのにできるわけないよ……それにこれってつまり……犯人は隕石よりも強力な攻撃を繰り出せるってことでしょ?そんな人に追い付くにはもう遅すぎるよ」


ハナビちゃんが家に着いてから私たちが家に着くまで、つまり犯行時刻は10分から20分前。犯人がヒバナさんと同じ実力だとすれば最高時速はチハヤが出していた70キロと同等かそれ以上になるだろう。なら今の犯人の活動範囲はここから円形に10キロ以上。


終わった。私は、守るほどの強さがなかった。嗚呼、強くありたかったな……それでも今は無理なんだろう。少なくとも私がこうしている限り──





「……諦めるのはまだ早いんじゃない?」


いつも道を切り開いてくれるのは先生だ。


「どこが……?」


「よく見てみてよ、このガラス……外側に割られてる(・・・・・・・・)。内側から割ったんだ」


「え?もしかして……いや、鍵はかかっていなかったし、玄関から入って……ならなんでわざわざガラスを?」


「それよりもシンプルであり得るのは──」


「ハナビちゃん自身がガラスを割って行った?」


「だと思うよ、少なくとも私は」


それなら安心、となるわけがない!


「ならハナビちゃんは今一人ってこと……!?」


「だろうねー。でも理由までは私もわからない」


試しに別の部屋の窓を全力で叩いてみるも、ヒビすら入らなかった。何度試しても変わらない。足で蹴ってみても、タックルしてみても、常時持っている小型ナイフの持ち手部分で叩いてみても、ヒビも何も入らない。こんなの壊せない。それこそ攻撃に長けている能力でもない限り。


「ハナビちゃんは能力を持っていないはず……」


「なら答えは簡単さ。今さっき、あの瞬間に能力を開花させたんじゃない?」


「嘘……でもそんなことって……」


「チハヤが良い例だよ。チハヤはさっき能力を進化させたからミサキを見つけられたんだから」


「でも、ハナビちゃんは魔臓不全なのに……!?」


「魔臓不全?そういえばあれはまだ病気だと思われてるのか」


「何か知ってるんですか!?」


「魔臓はそもそも人体に必須な魔力の生成機関で──ってそんなの要らないね。結論から言えば、『魔臓不全』でも魔臓自体は動いている。ただ魔力自体が普通と違うっていう特異体質なんだよ」


「それでもハナビちゃんは今危険な状態にあるんじゃ?」


「こうやって魔力が変異するのは遺伝子の関係ってのもあるけど……ほとんどは能力に合うような魔力を作るためにあるんだ。うーんまあ理論はめんどくさいから省くけど、要するにめちゃくちゃ強い能力を持つってこと」


「じゃあ……」


「多分そこまで心配しなくて良いんじゃない?それにもし何か不都合が起きるとしてもそれは逆にハナビちゃんが暴れるだけだし、当の本人に影響はほぼないはず」


それならこちらとしても少し安心である、と言えないのがこの私である。それはわかったし、先生の発言を疑うわけでもない。ただそれでも、友達がどこかで何か危機に晒されているかもしれない、と思ってしまえばすぐに探しに行きたいのだ。


「それでも……やっぱり何か胸騒ぎがとまらないんです」


「なら探しに行っちゃおうか?」


「なら早く行かないと!」


「私も強化するからちょっと待ってー」


こうして(ミサキ)、チハヤ、ミズキ先生の三人はハナビちゃんを探すために活動を再開するのだった。

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