焔風の支配者・七
投稿時刻19時くらいに変えようかな……
──午後0時05分・富士山町──
流れ込んだ記憶は記憶というよりもチハヤの葛藤という方が近かった。苦しいほどの激情が私にぶつかったような気がしたが、それでもこれは知らなければいけない事だった。
「そうだったんだ……」
「うん。ごめんね?長々とこんな話」
「ううん、知れて良かった」
「それで………仲直りは……」
申し訳なさそうに視線を逸らすチハヤ。そんなチハヤに投げかける言葉なんて、会う前からもう決まっている。
「……また、笑い合おう?」
「!──うん!」
今思えば、本当に私たちは分かりきった事ですれ違い続けてきたんだなと思う。自分が相手のことを考えるのなら、相手だってそうしないわけないのに……一方的にああじゃないかこうじゃないかって迷い続けるのはもうやめだ。少なくとも親友とそれをするくらいなら、一緒に映画でも見に行く方がマシ。でしょう?チハヤ、って、もう共鳴は終わってるか。
でもこれと今の状況は別だ。もう次に進もう。内輪の問題の後は、外輪に進めるのだ。噴火は止まる気配がなく、未だ各所に岩が降ってきている。その度にどこかから叫びが混じった爆発音が聞こえる。
「仲直りは終わったかい?」
「はい!それよりも先に……一旦、まずは家に向かわないと!」
「私もついてく!」
今の状況、うまく行っているなら二人は私を探しているかも知れない。それかハナビちゃんだけが家にいるのか……とりあえずは行かないと話が始まらない。
そう思い走り出そうとした時に、私は向かい側から猛スピードで走ってくる人影を見つけた。あれは……ヒバナさん!?
「……ミサキ!?お前今までどこに──ってお前かよ」
ヒバナさんはそう言いつつ先生の方を呆れた顔で見る。
「私じゃまずいか?」
「こっちは心配──いや、それより早くハナビのとこに行ってくれ。家に置いてきちまってな」
「はい!走りますっ。行こう、チハヤ!」
「え、うん!」
必要最低限の会話だけして私たちは逆方向に走り始める。時間が惜しい!こんな状況下、時間を無駄にしてられないのだ。
それにしても本当に私には体力がないな。さっき少し休んだはずなのにもう息切れが再発し始めた。
「そういえば目的地ってどっち?」
「えっと……このまま…真っ直ぐ行って、……三つ目の…信号を左に曲がって……少し行った所」
汗だくになりながら息を切らし、苦しみに耐えながら走る私の横を走る平然としたチハヤはそれだけ聞くとすぐに行動に移す。
「じゃあ抱えていくね!」
……ん?抱えて?それってどういう?
走っている速さをキープしながら私をお姫様抱っこさせるチハヤ。そして彼女はさらにスピードを上げてっ……!?
「ぶああぁぁぁぁあぁ!死ぬぅぅぅ!!」
「死なないって。まだ車くらいの速度だし」
「60キロ!?」
「あ、今は70キロね」
「変わんないって!!ちょ、ミズキ先生助け……」
「私なら300キロは出すけど?」
「なんなのこの人たち??」
そんなこんなで一瞬で家に辿り着くことができた。いつからそんなに速くなったんだ!?でも一応時間短縮にはなったからいい……いいとする。
息を整えながらなんとか平常心も整える。こうやって落ち着けるということは今のこの状況に慣れつつあるのだろう。だからと言って油断は厳禁、ずっと暑いわけだからもう喉がカラカラだし、岩が落ちてくれば本当に死ねる。
周りが岩や火で建物がボロボロになっていたが、それでもこの家だけは原型を保っている。というかどこか傷ついた部分もないようだ。防火と耐衝撃構造の家ってもうシェルターじゃん。
楽観的な考えを巡らせる余裕が出てきたのは私がもう一人ではないからだろう。なら一刻も早く一人になってしまったハナビちゃんを落ち着かせないと。そう考え早速ドアノブに手を掛けて開ける。中を見ると薄暗い空間が続いていた。
「電気ついてない……止まっちゃったのかな」
ハナビちゃんが家にいるなら電気ぐらいつけるだろう。いくら頑丈とはいえど電気とか水道とかは壊れちゃうのかな。
「ハナビちゃーん!」
……返事はない。
「ミサキだよ!待たせちゃってごめん!もう大丈夫だから!」
静かすぎる……?
「……ハナビ、ちゃん?」
もしかしたら……!?いや、まさかそんなわけない。ヒバナさんは確実に送り届けたはずで、ハナビちゃんは確実にここに居るはずなのに……いや、まだ決まったわけじゃない。この家は広い。だからどこかの部屋に篭ってるのかもしれない。
「チハヤ、先生、ちょっと家の中で女の子を探すの手伝ってくれない?」
「女の子ね、ちょっと待って…………あれ?」
いち早く反応したチハヤがそれだけを言って目を瞑る。この感じは能力を発動しているのだろうか。しかしハナビちゃんとチハヤには接点が無かったはずだけど……いや、もしかしたら方法があるのかも知れない。じゃないと私を強化せずに私を見つけ出す事が出来なかったはず。あの時体が軽くなった感じはしなかった。なら新しい方法というのを考えるべきだろう。
そして暫く、ほんの5秒くらいした後、最終的に私はその真実を知ってしまう。
「おかしいな……いやでも確かに能力は……ってことは多分────この家には誰もいないと思うよ」
「え?」
「この付近の人を強化しようとしたんだけど、この家の中には反応がなかった」
「いや、それはチハヤとハナビちゃんが会ってないから……」
「初対面だと全く強化ができないわけじゃない。ほんの少しならできるし、他の一般人にはできたはず」
「なら!?」
咄嗟に家に入り込んでいく。電気のない部屋と部屋を走って進んで行く。まさか、まさか!?
キッチン、いない
ダイニング、いない
寝室、いない
畳部屋、いな──
その時だった。畳部屋の奥で、掃き出し窓が割られていた。周りに道具らしきものは落ちていない。強化ガラスだったからなのか、割れた破片は粉々で、窓はかなり大きな穴になっている。それこそ大人一人、ましてや立ったままでも簡単に通れる……
「誘……拐……」
無意識に心から漏れ出た二文字が言葉となる。膝から崩れ落ち、へなへなと手を前につく。ただ明らかな事、それは
ハナビちゃんは、もうここにはいない。
掃き出し窓: 庭とかに出れるあのガラス張りの扉のこと。




