『価値』の記憶
記憶話はキャラの設定の根幹に大きく関わります。つまりどういうことか、普通に書くより時間がかかるんです!
まずは最初に、私はミサキを悪く思っているわけじゃないし、むしろ能力祭で私を倒してくれたことをありがたく思ってるんだ。ミサキがどうかはわからないけれど……少なくとも私は全力をぶつけたつもり。
そして、私からもごめん。きっと私が言っていた言葉は全部、ミサキを傷つけるものばかりだった。そんな言葉、暴言と何も変わらないんだ。だからミサキが感じた負担は私が思っているよりずっと大きかったんだよね。
ミサキ、私はあなたと本当に似ているって思ったんだ。前回の共鳴で私は少しだけだけど、あなたの過去が見えたの。
ミサキの過去は私の過去と本当に似ていた。もう本当に、同一人物だったんじゃないかってくらい。幼い頃に数多の称賛を浴び、幸せに満ち溢れて、歳を重ねて現実を知る。私も本当におんなじなんだ。
ただ少し違うのは、その後その現実をどう受け止めたかなんだ。
そうやって周りからいつの間にか平凡に思われてきた頃から、私には自分の価値が無いように見えてきた。凡人は何処にでもいる変えの効く存在だ。凡人には何か特別なものが無い、持っていない。凡人は「大衆」としてその人生を終える。
この世界では、いやきっとどんな世界でも、当たり前のことだが、一番が一番輝く。そのことに関しては私は別に疑問を抱かない。しかし、おかしいのはその後。
例えば、「校長先生は誰か?」という問いがあったとしよう。大体の人はそれに対してさも常識であるようにすぐ答えられる。でも、大体の人は「じゃあ教頭は?」と聞かれると黙りこくる。別に悪いことだとは言わない。おかしいとは思うけれども間違っているわけではないのだろうと思う。百人中百人がイエスと答えれば、たとえ一人がノーと言えど何も変わらないから。
一番と二番を比べれば、それは一番の方が上だろうが、地位的には実際あまり変わらない。だというのに、それでも私は、一番と二番で決定的な、天と地との差がついてしまうのはなぜだろうかと、疑問に思って仕方がない。
だから私は一番でいなければならなかった。でもやっぱりどんなに努力してもそうはいかなかった。そう、思っていたから──私は頑張ったのに……頑張って、最高峰の高校にまで辿り着いたのに……
努力が足りなかったのかもしれない。努力の方向が間違っていたのかもしれない。みんな努力すれば、なんていうけど……大半が努力できないから人類ってのは一人の人間によって進歩する。本物の才能を目の前にすれば私たちが出来ることは何もなかった。少なくとも、努力する才能がない私には不可能だって事が分かってしまった。
分かってる、こんなのは言い訳だって、私だっていつまでも子供じゃないんだ。でも一つだけ言わせてほしい。
同じ量、同じ数、同じ質、やっているはず。ずっとずっと、私と周りとで違いはないはず──なのに、気付けば私はいつも誰かの後ろにいる。本当に、どうしてだろうか?
ミサキが『理想』を求め続けるのなら、私は『価値』を求め続ける。じゃあ全てが平凡になってただの凡人に成り果てた私の存在価値は……?
私はいつも導かれる立場だ。そうやって導かれ続けていたからこそ、導く方法を知らない。
親の後を追って行った。先生の後を追って行った。友達の後を追って行った。追うだけじゃ何も変わらなくって、私はいつも二番煎じ。
それが嫌で嫌で、ずっと這い蹲る。いつか一番に、いつか私が、私自身に意味を見出せるように、何度だって上を見る。
……..ほら、私って、見てるばっかでしょ?
もう一度問う。「私の存在意義、価値は何?」
───────
見つけた。私の今できる唯一のアンサー。
ミサキ、ミサキこそ、私の生きる意味であって、今ここにいていいって思える理由なんだよ!
だからミサキにだけは、最高の友で、隣にいる仲間でいたかった……のに、ミサキは私の隣にはいなかった。
これは一種の依存なのかもしれないし、自意識過剰な欲求を満たすだけなのかもしれない。ただそれでも、何の意味もなく、理由もなく、ただ生きて生きて生きるのは結局死んでいるのと同じだった。
ミサキ自身がエゴだの私を傷つけただの言ってても、私は嬉しかったんだよ?そうやって友達に自分のことを考えてもらえるのは、きっとすごくありがたいことだ。
踠け、跪け、それでもなお生きなければいけないならば、私のままでい続けなければいけないならば、私はこうやって自分を見つける。
これはミサキにとって嫌味かもしれないけれど言っちゃうね。私がミサキの理想になれて良かった。たとえミサキの中だけだったとしても、私はこの瞬間、漸く真の意味で一番になれた。価値があるって分かったんだ。
そうやって傷つけた私の親友は、いつかどこかに行ってしまった。他の誰でもない私が、他の誰でもない唯一のミサキを、殺してしまったんだ。
そうして、今に至る。
こんなにぶちまけてしまってごめんなさい。私の中がドロドロでごめんなさい。未だ我儘でいて、ごめんなさい。
それでも許してくれるなら、こんな私でもまだ親友で居続けられるなら────私とまた遊んでくれませんか?
この私の願いへの答えがどうであれ、今度は私も「どうして?」なんて、絶対に言わないから。
お話を、最後まで聞いてくれてありがとう。ミサキ




