到着
──9月23日 午後3時──
「ついたぞ」
出発から約45時間。短く、されど私にとっては長い時間を経て、私たちはついに集落に辿り着いたということになる。え、どうして「なる」なんて言うかって?それは単純なことだ。
「ここ……ですか?」
「おう」
「なんか……廃れてますね」
「お?それはどういう意味だ?返答次第ではわかってるよな??」
「あっ、いや、そうじゃなくて……なんか日本区とは全然違うと思って。何だかすぐに吹き飛ばされそうな感じだったんです」
何だろう。藁?布で出来てる?それにどの家も何だか小さいテントみたい。よくわからないけれど、少なくとも私が住んでいたところのようにコンクリートや木材で作られている一軒家はなさそうだ。
「そりゃそうだ。そういう風に作られてるわけだしな」
「何でですか?」
「日本区じゃねえんだ襲撃だの何だの普通に起きる。だからすぐに拠点を動かせるようにしてるんだ。最悪捨てることになってもダメージは少ない」
そっか。クリスタルがないからこの集落は危険に常に晒されている状態になっているんだ。……ヒバナさんがいるから大丈夫だとは思うけれど少し心配かも。
「え、じゃあどうやって生きてるんですか!?食べ物とか、着るものとか、どこにもなくないですか?」
「そのための俺だ。物資の供給のために俺みたいな奴が出稼ぎに行って物を買って帰ってくる。だから俺にとってここは自宅というよりかは故郷ってとこだ」
「へえ…………やっぱり日本区と外とでは世界は全然違うんですね」
「あぁ。──まずは報告に行くぞ。ついてこい」
「わかりまし───」
あれ、何かがすごいスピードで走って近づいてくる。誰だろう?黒髪、長髪、私より小さい……知らない少女だ。もしかして敵!?
「敵襲ですか!?」
「いや違う。ただ面倒なのに見つかったな……はぁ……」
「お兄ちゃんおかえりー!!」
ドン!という音を立ててその人はヒバナさんに衝突したが、ヒバナさんは倒れずに直立したままだった。そしてその人はどうかというと、ヒバナさんの頭から胸にかけてへばりついたままで頬擦りをしている。何にせよこの女の子の顔を見れば少なくとも彼女が敵ではないということはわかる。それくらい純粋無垢な幸せに満ちた笑顔だった。
「おかえりー!!元気だった?今回の収穫はどう?こっちは特に何もないけど」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あー、ひにふんな。ほいふはむひへいい」
「あ、そうですか……」
「あ、ごめんごめん。くっついたままだと喋りづらいね。よっこらしょっと……これでいいでしょ?」
そう言いつつ女の子はヒバナさんの顔を覆っている状態から腕に抱えられている状態まで移動する。個人的には何も変わっていないようだけれど何も言わないし、多分これでいいんだろうな。
「まあそれでいい──ついてこい」
そうして私たちは歩き始める。
「あれ?この人誰?もしかして、お嫁さん!?」
「本気でそう思うか?」
「いや?だってお兄ちゃんのお嫁さんはハナビだもんねー!」
「はぁ……まだはええよ。もう5年は考えてから言え。こいつは日本区から見学ってことで連れてきた。弱いから俺にやるみたいに突進とかしたら吹っ飛ぶぞ」
「はーい。気をつけまーす」
「女子同士気が合ったりするんじゃないか?暇な時に話しといてもいいと思うぞ──このテントだ」
狭いというわけではないが、小さい集落だ。多分外周の長さを測っても一キロあるかないか……入り組んでてよくわからないが、恐らく高校のグラウンドくらいの大きさしかなかったため目的地にはすぐについた。他と区別がつきづらい、並一通りのテントのうちの一つがそれだった。
「ハナビ、離れろ。俺はまだやることがあるから家で二人で待ってろ。いいな?」
「えー?もうちょっと一緒にいたいー!」
「ダメだ。これ終わったらもうちょっとくっついててやるから」
「はーい」
「ってことだ。中は狭いし特に何もないが、横になっててもらって構わない。ベッドでもソファでも何でも使っていいぞ。とりあえずお前にとっては長旅だっただろうから今日はもうこいつと話しながら休め。じゃ」
それだけ言ってヒバナさんはどこかへ歩いて行ってしまった。
「じゃあ入ろ?」
「あ、うん」
初々しさを感じているのは私だけなのだろうか、まだ私より幼いはずなのに人とのコミュニュケーションでもう一杯食わされた気分。
でもそんなことより、疲れたあぁぁ。全体で何歩歩いたんだろう。少なくとも20万歩は歩いてそう。足がパンパンでもう動けない。ヒバナさんがいた時は弱音を吐くにも吐けなかったし、ほんと疲れた。横になって休もう。
そうして私たち二人はテントの中に入って行った。




