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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
星を追う飛魚編
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得るモノと失うモノ

 ──正午・区外森林──



「何だ?お前は」


「良いところにいたもんでな。色々()いに来た」


「それは……言葉の通りに受け取って良いのか?」


「五秒で終わらせる」


「そうかい。でも俺はお前に勝てる気がしないし、話し合い──ぐへぇ」


「………」


『人のものを奪うなんて、それこそ姑息じゃないですか!』


『もう!だからなんでそんな簡単に人のものを盗れるの!?早く返してきて!』


ずっと前からそういうこと、言われてきたっけ。確かに俺も……俺だってそう思ってるよ。強奪という行為はどんな理由があろうとも結局のところ努力と時間の否定だ。奪う側は良いのかもしれない。悦に浸って、モノという現実に存在している確かな結果を得るし、この世にものは極論言ってしまえば何でもこの方法で手に入れられる。


奪う側のこういう幸福を知っているのと同じように、奪われる側の不幸もよく知っている。俺だって元から強いわけじゃないんだ。最初は座ることすらままならない弱さを持って生まれる。子供の頃は何度も奪われて、そのたびに周りが与えてくれていたな。


一部では「モノを盗るためには強さがいる。強さを得るためには努力がいる。つまり自分たちはモノを奪うための努力をしたからこれ(強奪)は正当性がある」と考えている人もいるし、なんなら俺もそっち側の人間だ。俺が力を得たのは弱者を守るためじゃなくて自分のためなんだ。もし他者を守ろうとするなら……もっと強くないといけない。


焚き火の周りで食事をとっていた男の物資を漁る。二人分の食料が一日分あれば良いから……これだけにしとくか。


「おい、事も済んだし早く行くぞ。到着が遅くなる」


「…あ、はい」


仕方がないと言えば仕方がないが、こいつは平和ボケした無能だ。人が死んでいるところも見た事がないんだろう。もし二ヶ月前に廃墟エリア辺りで見た血の池と首無し直立死体を見たらそれだけでショック死しそうだと、心配はしていないがそう思う。


「案外……ヒバナさんも優しいんですね」


「は?どこがだァ?」


「うっ……いやだって……あの人から物資全部盗らなかったじゃないですか。大事そうなのは残してて、まるで本当にただお裾分けしてもらったような──」


「はぁぁぁ、お前ほんっっと平和ボケがすぎるわ。理由その一、持ち運びできない。理由その二、向こうに着いた時に強奪したことバレたらめんどい。おーけー?」


「バレたらどうなるんですか?」


「……はぁ。ここだけの話、妹に口聞いてもらえなくなる」


「え!妹いたんですか!?」


妹……そう言えばあいつは俺が守りたいって思った最初で唯一の人間だったな。もう以前より成長もしてきてまだまだ未熟ではあるが一人で留守番させるくらいにはなった。妹、妹……うっ、帰ったら泣きつかれそうだ。あいつ結構粘着質だからな……飯食う時もずっとくっついてそうだ。


「血は繋がってないけどな。形式的には兄妹ってだけだ。だから妹にはこのこと言うなよ?マジで」


「は、はぁ」


「……口止め料だ。稽古くらいはつけてやる」


「ホントですか!!?」


えっ。いやえ?流石にここまで食いつかれるのは予想外なんだが。うわぁ……こいつの性格見誤ってたわ。ってかあれ?


ミズキが能力について教えている=強くなりたいと思っている


あいつ多分ここまで予想してたろ……マジで腹立つわクソが。


「男に二言はねぇ。手加減したことないから怪我しても知らんぞ?あとこの過程について俺は一切責任取らん」


「はい。お願いします」


「そうか。じゃあまず着いてこい……長距離走だ」


足場の悪い森林の中、俺は木々の間をすり抜けつつ走っていった。長距離想定の走り方だし、着いては来れるだろ。



 ──15分後──


「ま、ちょっと待ってぇ!」


おいおい、まだ二キロくらいしか進んでないぞ?後ろで何か聞こえたが……はぁ、こいつ魔力強化できねえのかよ。ミズキ何やってたんだよ……稽古降りたくなってきたんだが。


仕方ないから一回止まる。


「おい、お前トレーニングはしてるか?」


「まぁ、特別教室で少しだけやってます」


「集落に着いて滞在する期間は最低毎朝10、いや15キロは走れ。基礎体力だ。魔力強化はどう教わってるか?」


「えーっと、あまり考えなくて良いから能力を反射的に出せるくらいには定着させようって言われてます」


「へぇ……なるほど、ミズキはまず能力の進化の方に力入れてるんだな──でもまずは魔力強化、んでフィジカル面な。強い体がないと強い出力で能力を出せないわけだからまずそこをやれ」


それだけ言ってまた走り出す。はあはあと息を切らしながらもしっかりと着いてきているところ体力がないわけではない。まあ全然足りないしこの程度で理想だのなんだのほざくのは普通に不快なんだが。


言っておくが俺は優しいわけじゃない。ただそうしろと言われたからそうしているだけだ。圧をかけてはいるものの、一応こいつと俺は主人と従者の関係にある。だからもし何かしろってこいつに言われたら俺はそれに従う他ないんだ。優しさなんてこの世界では価値を持たない。優しさがもたらす周りからの信頼は価値があるかもしれないが、無償の愛なんてモノはただの夢物語なんだよ。いいな?

ヒバナができること


魔力強化、気配操作


ヒバナができないこと(できてないこと)


昇化、能力の進化、妹に逆らうこと

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