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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
星を追う飛魚編
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家庭訪問

ミサキの話──の前にちょっとだけ。

 ──9月22日 午後6時・ミサキ宅前──



午後6時、所謂黄昏時っていう時間帯だ。無事にマオが準々決勝、準決勝と着実に勝っていったのを見届けてから私は一人とある家の前──上で行っちゃってるから隠す必要もないか。ミサキの家の前に来ていた。星崎という表札は手入れされているのか、はっきりと読める年季の入っているものだった。


大事な生徒の成長のためだったとはいえ、流石に親にも連絡させずに旅に出すのは不味かったかと反省を胸に戸惑うことなく扉に足を進め、そのままチャイムを鳴らす。


彼女の親は一晩帰ってこなかった自分の娘について一体どう感じているだろうか。きっと寂しく感じているだろうし、心配と不安で本当にグチャグチャになりそうなほどの感情に心をミキサーされているだろう。


(我ながら馬鹿したなあ。一度彼女と直接連絡させなきゃかも……もし戻れって言われたりしたらどうしようかな。なんならもう特別教室にも来れなくなるかも……あれ、これ詰んでる?)


親というものは子を何よりも大切にする存在だ。そうじゃなきゃこの世界にモンスターペアレントなんて言葉は存在しない。虐待は……論外だろう。そんなことしてたらバラバラに刻んでやる。精神的にも物理的にも。


そうこう考えているうちに扉がガチャリと開いた。中から出てきたのは一人の女性──ミサキの母親だった。


「突然の訪問となってしまい、申し訳ございません。私、愛脳高校でミサキさんを担当させていただいております、天城ミズキと申します」


「……そう。で、何の用でしょうか?」


ミサキの名前を出しても何も感情が動いていない……忘れていたけどそういえばそういう人だったな。


「申し訳ありません。ミサキさんは今、こちらで研修に行っていまして、暫くは帰れないのです。しかしこのことを彼女は親に伝えていなかったようで……昨日ミサキさんが帰ってこれなかったのはそのためです。大変心配をおかけして、申し訳ありません。安全については高校側から保障しますので何卒……」


「そうなんですか……わかりました。少しショックではありますが、これも社会経験となると思うので……うちの子を是非よろしくお願いします」


「……わかりました。是非今度帰ってこられた時によくお話をしてみてください」


「はい、わかりました」


「……では、私はこれで」


「はい。よろしくお願いしますね」


そう言って彼女は笑みを作ってみせた。




ミサキの母親について、チラッとだが資料で見たことがある。元愛脳高校で、卒業した後は公務員として役所で部長を務めている。まあそんな事はどうでもいいのだが、大事なのはこの後。娘、つまりミサキについてあまり関心を持っていないという事だ。


私は書類としてしかみていない(調べたのはレン)ので、どのくらい関心がないのかはわからなかったが、まさかここまでとは……


ミサキ母……随分と穏やかな喋り方だった。顔もそれっぽく作っていたがそこに感情はない。かつてのミサキはそういうところも感じ取っていたのかな?でもそれら全てが今となっては異常行動なんだ。


行方不明、予選での侵入者の騒動、放浪者……子供一晩帰ってこないことはそういういろんな情報から、少なくとも子供に何か悪いことがあったのではないかと想像せざるを得ない。そんな中でいきなりチャイムが鳴ったら世の中の親たちはどう思うだろうか?無論、扉を急いで開けに行くだろう。もしかしたらそれは子供かもしれないという一縷の望みが頭から捨てきれないから。それでも足音もなく、ゆっくりといつものような速さで扉を開けるその様はまるでミサキなんて元からいなかったかのような……はぁ。ちょっとダーク気味だのぉ。


(研修……あながち間違いじゃないからいっか)


ミサキはこういう親に関心されない世界で生きてきた。でもこれは世間一般的に見るとおかしな話だ。そう。主観的な視点だけではなく、他の視点からも見る機会を得ることで新しいものの気づきがあるというものだ。世界の常識は日本の常識ではないということだ。


「てか敬語疲れるぅー。帰りにどっか行こうかなー……異空間でカラオケでもしとこ」


ま、今悩んだって何か解決するわけでもないし、久々のフリータイムだから決して無駄にはしないのだ。ということでさよなら世界、ウェルカムトゥマイワールド。ふははは。


そうして私はこの世界から一時的に消えた。

ミサキ母は

・何に関する研修なのか

・何日間の研修なのか

・費用はかかるのか

・どこでやるのか

などなど、基本的な情報すらも聞かずに会話を終わらせています。関心がないというか、もうすでに期待していないというか、完全に別人のように思っているのか……好意的な意味はまずないですね。

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