君の音色、歪んだ旋律をのせて・四
少し短めですがキリがいいので区切ります。この調子なら次回には長編タイトル終わります。
あと2本連続投稿になるのは狙っているわけではなく、書けちゃったからですね。毎日投稿はしません。
──午前10時50分・グラウンド──
諸刃の剣はもう使ってしまった。二度も同じ手は通じないかもしれない。もう血は止まっていそうだし、この量じゃ危ないけれども失血死、とまではいかないだろう。少しだけ安心だ。とは言ってももう私に勝ち筋はほとんど残っていない。
ならば少しでも悔いのない終わり方をしようと、ナイフを構えながらどうしても聞きたいことを聞く。
「……ミサキ、さっきの言い分を使うなら、じゃあミサキはどうして勝ちたいと思うの?」
「!……それは、どういう?」
「ミサキって、名誉とか実績とか、そういうのにはあまり興味がないでしょう?なのに頑なに勝とうとしている。なんで?」
「……せっかくここまできたんだよ?勝たないと損じゃんか」
「でもそれじゃあ!言い方は悪いかもだけど、ミサキはこんなにもタフじゃなかった。普通ならもう降参してるでしょ?」
「……いや、違う「違わないよ!」
「やっぱり今日のミサキはおかしいよ。ずっと見てきて、見られてきた。私の隣にいたのがミサキだったんだよ───何か、意図があってそうしてるとしか思えない……!」
「いや、違う!!絶対に、断じて、私は、私は…………ぁ?」
その顔を見ればわかるよ。核心をついた言葉だ。自分でも信じられないくらい頭が回る。これが火事場の馬鹿力ってやつかなぁ。ミサキの能力は私を邪魔しなかった。
「わかった。後でじっくり話そう?今は戦いに集中しようって、ミサキから言い出したんでしょ?」
全力のぶつけ合い。親友とそれができるだけで気分は良かった。今度は私から誘う。私から笑う。澄んだ瞳を見つめながら、少しだけ優越感に揺れながら………
「「能力、発動っっ!!」」
それは、偶然だった。それでも、能力『絆強化』と『感情の糸』は同時、コンマ1秒の狂いもなく同時に作用した。これらはどちらも他人と繋がる能力である。そんな相互干渉が引き起こした結果は────
相互の意識共有だった。
─────────
「……チハヤ!」
「……!何?」
「私は予選で隠れ続けて勝った。チハヤよりよっぽど陰湿だよ。それでも、全力で戦おう。恨みっこなしで、全力でやろう」
自分で自分の発言に驚いた。それはもう、目の前のチハヤ以上に驚いた。本当は言うつもりがなかったあれこれが一斉に私の口から漏れ出した。こんな大きな声を出すのなんて、久しぶりだった。
「このままじゃ防戦一方だよ」
「来ないなら、私から行っちゃおうかな?」
「ふふふ。随分と顔色が悪いね」
今考えれば、どれもこれも私らしくない。私が私らしく!みたいなことは考えてはいないけれど、それでも強気に出ているこの様を少しだけ喜ぶ気持ちもある。弱気な自分よりも強気な自分の方がよっぽどいい。私にも、チハヤにも。
予選で自分と同じような境遇だったからわかる。きっと苦しかったんだろう。
チハヤはどこか目立ちたがり屋だ。いや、目立ちたいわけではないが、常日頃からすごく頑張っているのを知っている。みんなよりも強くなりたいんだろうなって思うし、きっと強くなれると思う。
その反面、自己肯定感が低いことも知っている。能力的にチハヤはサポート側である。これはつまり、目立てない。頭ひとつ抜けている、なんて表現とは縁が遠い。チハヤの理想と違って。妄想でしかないが、きっと今の自分に満足できなくて、常に自分を卑下し続ける。
だからこそ、私は理想であらなければいけない。チハヤにとって、そして私にとっての理想。
『親友として、私は私の理想でありたい』
それこそが今回の出場のたった一つの理由だった。初めてここまで心を許せるようになったんだ。尽くしたくなってしまうものだ。そのためなら何でもする。それこそが親友であると信じて。
私の計画としては、「私が接戦の末負ける」というものだった。あまりにあっけなさすぎると手を抜いたことがバレるかもしれないし、チハヤのためにもならない。もちろん全力でやって打ち負かしてくれるのならば万々歳だ。それでも能力の使えないチハヤでは不可能だろうと思ったのだ。いや、そんなことを考えるのは良くないか。
そう考えてこれまでやってきた。途中でチハヤが能力を使ってきたことは想定外だったし、それほどのことができたことが友として誇らしいとまで思う。ここまで完璧な進行である。最終局面、この一撃で私は沈む。しかしそれでいいのだし、最善の方法なのだ。
ごめんチハヤ。私はチハヤを侮辱しているんだと思う。これはきっと自分の欲だろう。抗うことはできなかったんだ。
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