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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
飛べない豚編
54/101

君の音色、歪んだ旋律をのせて・二

このタイトル、一応長編ではありますが10話もかからないと思います。さらに言えば実際の戦闘の長さもそこまで長くないという……

 ──午前10時35分・グラウンド──



「ふふふ。随分と顔色が悪いね」


「くっっ……」


「足が空いてるよ」


そう言われた後、ナイフばかりに気を取られていた私は足払いを食らって転倒した。やっばい!!向けられたナイフをなんとか転がりながら避けつつ、もう一度距離を取る。しかしそれも叶わず、ミサキの能力の妨害もあってすぐに追いつかれてしまう。


「どうして……そんなに……?何があったの?ミサキ……」


「勝つためには、こうしなきゃいけないんだよ。過酷で、苦痛でいっぱいかもしれない。でもこれが戦闘で、私が、私たちが(・・・・)選んだ道なんだよ……」


相変わらずミサキの表情はいつもよりも少し硬い。目は私を真っ直ぐ見て、口は微笑を浮かべ続けているも、それは嘲りなのでは決してなく、余裕の表れ。その一途さに少しだけ恐怖を覚えるも、そんな恐怖は目の前にグラウンドの仮設壁、つまりは戦闘場の端についたことで吹っ切れた。


「うわっ!」


「まだまだー!」


何度か斬りつけられるのをギリギリで防ぎきり、ミサキを見るも、そこには私とは相反する余裕の表情のミサキ。腕に落ちた水滴が雨ではなく自分の汗であることにしばらくして気付いた。


仕方ないので、乾いた地面を足で蹴り上げ、攻撃と煙幕を両立させる。完全に姿を消すことはできないが、数メートル距離を取るのには十分である……あれ?ちょっとだけ頭がマシになった?


「もしかして……条件は視界?」


「……今更知ってもどうにもならないでしょ。それに二度も同じ手は通じないよ。チハヤは今まさに、絶好の攻撃の機会を逃した。まずそこを実感しないと」


視界が開けたのは数瞬後。再び不快感が私を襲う。さらに言えば、さっきまでの不快感に嫌悪感まで追加されてない?結果的に状況は悪くなっちゃった。


さっきの先制攻撃の威勢はどこへ行ったのか、今の私はナイフを避けつつ考えを巡らせるだけの「おもんないやつ」になっている。ギリギリで避けて、ギリギリで受け流して、浅い傷をつくられる。少しだけならまだしも、それが長期戦、つまり何回も何回も繰り返されるわけだから、傷は増え、疲労は溜まり、消耗は続く。


ジリ貧だ。


解決策が思い浮かばないというのは裏を返せば、「もうすでに解決しなければいけない問題に立ち向かわなければいけない」ということである。そうだ。結局のところこれは「問題解決」なんだ。それさえできれば勝機は見えてくるはず。


こんな時ミズキ先生はなんて言っていたか……



『問題に直面した時は──』



一つ、問題が何なのかを明確にする。


二つ、どうしてその問題が重大になっているのかを明確にする。


三つ、それらから策を考える。



今回の問題は「ミサキに押されている」こと。こうなった原因は何よりも能力の有無が大きい。そしてそこから考えられる解決策は…………


先生が敢えてそんなことを私たちに教えたということは、これが大切だからだろう。実際そうやった方が思考がクリアになって考えやすい。


(そうだ。確証はないし、失敗する確率の方が高いけど、あれ(・・)ならいけるかも)


ほら、もう解決案が見つかっただろう?あとはそれを実践するだけだ。


(……まだ、まだだ……)


戦闘とは力のぶつかり合いであり、意思のぶつかり合いであり、知恵のぶつかり合いだ。どれか一つが欠けていたら戦力は大幅ダウンする。だからこそ私はここまで不利になっているんだ。


(狙うのはギリギリ。それこそ、ミサキが勝利を確信した後だ)


再びナイフのぶつかり合いが起きる。ガンガンと金属特有の鈍い音が鳴りながらも、衝撃は武器を通して私を貫く。


本来ミズキ先生とマオがナイフ一本で戦えば、おそらく先生が圧勝するだろう。ならばそれぞれの技術を受け継いだ私たちの技術としては、もちろん先生から教わった私の方が秀でているはずだ。それなのに私が押されているのは、能力の有無。そう。能力だ。


ついに私を襲う衝撃が限界に達し、握力が消える。横から受けたナイフに手は耐えきれず、私の武器は吹っ飛ぶ。さらに言えば、それが原因で私の体勢は両手をあらぬ方向に伸ばしたような。ここからの反撃は…………不可能。


だからこそ、確実に、されど決定的な攻撃を仕掛ける。首ではない。よりダメージを与えられる胴体を狙いにくる。


勝負は決した。勝者はミサキ()である。






今、そう思ったね?その覚悟と確信に満ちた目を見ればわかる。だからこそ、条件は揃ったんだ。




ミサキがこの一瞬で決めようものならば、劣っている私が打開するためにはそれ以上を賭けるしかない。既にその状況まで追い詰められているし、これがこの、いや、能力祭の戦いなんだ。


「痛いけど我慢してね」


私が賭けるのは逆に相手が有利になるかもしれないという敗北の可能性と、もしかしたら致命傷を負うかもしれない死の可能性。それでもやる気がもうすでにある。


(今、やるしかない……!能力──発動!!)

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