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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
飛べない豚編
53/100

君の音色、歪んだ旋律をのせて・一

アニメ見てると小説書きたくなる。これってあるあるなのでしょうがないね。本日2つ目です。


ということで(?)前回の予告通り、長編タイトルです。

 ──午前10時・待機室──



熱狂の最中、双方が傷だらけになりながらも、とうとうそのうちの一人が倒れた。もう一方は倒れない。確かに地面を踏み締めているその姿は、汚れつつも、輝いているものとなった。


『勝者・小林カズト!!』


ワァ、と歓声がより一層大きくなる。それはさながらスポーツ観戦──いや、実際にこれはスポーツとほぼ同じだろう。


「………」


「………」


能力祭の出場者の待機室。銭湯の後に大きなスクリーンに映し出されたのは、トーナメントの進行状況だ。一方の名前から伸びる線が赤く染まり、止まる。それはつまり、次の試合へ進む権利を得たということであり、まさしく文字通り、戦闘の成果だった。


なるべく見たくはないが、すぐそこに迫ってきている現実からは目を背けることは決してできない。視界の端、トーナメントの右端には、(チハヤ)とミサキの名前が並んでいた。


「まぁ、元気出してよ。心苦しいかもだけど、どっちかが勝ってどっちかが負けるんだから」


私たちの隣でスクリーンを見るマオはいつもの表情をしていた。マオは一回戦を余裕の表情で突破している、いや、実際に「余裕」と言っていた。しかし、そんな言葉でこの雰囲気を壊すことはできない。


……と、思っていた。


「……チハヤ!」


「……!何?」


「私は予選で隠れ続けて勝った。チハヤよりよっぽど陰湿だよ。それでも、全力で戦おう。恨みっこなしで、全力でやろう」


正直、驚いた。そんなこと、ミサキが言うことではないと思っていた。


ミサキの目を見る。真面目で真っ直ぐだった。魅せられた私に拒否権はなく、


「うん……!」


ただ頷いて、共に微笑むことしかできなかった。



 ──午前10時30分・グラウンド──



『それでは第4試合、守山チハヤ対星崎ミサキ、スタート!!』


お互いの武器はナイフ。筋力的には刀を持っても良かったが、技量がまだ足りないので今回は二人ともナイフである。まずは牽制。お互いで睨み合って、相手の出方を伺うところから始める。


……動かない。なら、私が先制する!


ショウやミズキ先生の動きを見た私からしたら、自分の動きに対して「遅っそ!!!」と酷評できる動きだったが、それでも距離を詰めるのには十分。加えて直接的な攻撃ができる能力を双方が持っていないことが、私の接近を可能とした。


「とりゃぁ!」


深くなくていい。どんなに浅くても傷は治らないし、痛みは感じる。その蓄積さえあれば、どんな敵だって倒せるんだって、ミズキ先生の教育大。速く、コンパクトで、かつ次の動きに繋がるようにナイフを振る。ミサキは半歩だけ後ろに下がるが、次の動きで捉えられる。


「……くっ!」


「…..うっ!」


双方のナイフがお互いの腕に掠り、僅かな傷をつくる。傷が慣れない痛みを発するが、それはミサキも同じはずだ。


「速いね。切られちゃった」


「いや、攻撃に合わせられてるし、私も切られてるよ……!」


「マオにお礼しないとなぁ」


「こっちは先生に教わったんですけどー」


「あはは。「対策する」なんて言ってたけど、やってること同じじゃんか」


「んっっぐ……そっちは能力使えるわけだしね……」


「逆にそっちが使えないのが不利なだけだよ」


急激に頭に雑音が混じる。不快な感覚は私の体に影響を与えるわけではないけれど、集中力を削いで隙をつくられてしまう。


ミサキの能力、感情の糸。本人に過去聞いた話だと、感情を弦楽器みたいにできるそう。なら今の私の感情は、


「不協和音……!」


「正解〜」


「んなっ……!」


気付けばミサキは私の懐にまで入り込んでいて、低い体勢のミサキに攻撃を与えることもできず、腿の辺りを斬られる。さっきよりも深い切り傷から血が明確に噴き出てきて、ズボンを赤黒く染め上げていく。


痛いという気持ちがこれまた増幅されて、子供の弦楽器と共に頭を逆撫でする。埋め尽くされそうな気持ちが、さらに他の感覚を鈍らせていく。


このままじゃいけない。そう思い、一度ミサキと距離を置く。


「このままじゃ防戦一方だよ」


「そんなの自分が一番よくわかってるよ」


「来ないなら、私から行っちゃおうかな?」


どうしてだろうか。いつもよりもミサキのテンションが高い。初めは能力祭ということで盛り上がっているだけだと思っていた。実際私たちを取り囲むギャラリーたちは今も息を呑んで私たちを見ているし、勝負が決まった時の熱狂具合を私たちはもうすでに見ている。


でも、ミサキのテンションを「盛り上がり」で片付けるのは少し軽率な気がする。私だから、ミサキの親友である私だからこそわかることだ。ミサキはそんなことをしない。もっとシャイで、初めてに極端に弱くて、外部に感情を公にしない。それが私の知っている星崎ミサキだ。


「………何があったの?」


「ん?どういうこと?」


「今のミサキ……なんだかおかしいように見える」


「……そうかな?」


「いや、そう。違うよ!どうしたの?」


「まずは戦いに集中しよう?」


ミサキは答えを濁らせつつ、私に再度接近を始めた。


なぜだろうか?どうしてもその違和感が残る。いつもと違うだけ、されどその違いが私の勝利への糸口になるかもしれない。賭けに出るならそこだ!普通にやって勝てないなら、勝てる方法を探さなきゃ。

前に言い忘れていたことあったのでここで言います。


昇化や魔力強化は極端なこと言うと「実は全人類は空を飛べるんだ」とある日急に言われても「は?いやどうすんのよ?」となる感じです。それだけ難しいということなので、現状できる生徒は限られているわけです。

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