栄光なき勝利・sideミサキ
今回はミサキ視点のサバイバルゲームになります。とは言っても一人語りですし2000字もないんですけど。
──9月16日・日本山 中腹──
私があれほど怖がっていた初手の襲撃は、どうやら私のところには来なかったようで、ゲームが始まったのにも関わらず相変わらず辺りは静まったままだ。
──ついに始まってしまった。そんな実感を改めて感じながらも、周りの警戒は決して怠らない。
静かに、体勢を低く、息を潜めて、ただそこにいるだけの物と化す。私は戦いはどちらかというと嫌いだ。私が傷つくのが嫌だからだ。痛いのは嫌だし、疲れるのも嫌だ。でもだからと言って、やりたくないと言えばそれはまた違う。戦いとはすごいのだ。かっこいいのだ。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないが、動機はそれだけで十分だった。
ワンチャンに賭けることは嫌いだ。賭けとは必ず失敗する可能性大きく、いつも成功よりも失敗の未来を考えてしまうから。
そんな嫌いが重なる一種の「無謀な戦い」に挑んだ理由は、結局はそんな「かっこいい」とかの「理想」にすぎない。
……音でわかる。近くで戦闘が始まっている。行って漁夫の利を得てみようと考え、静かに一歩一歩歩いて音源に近づいていく。ふと時計を確認すると、残り生徒は170人か……
私はそうやって、静かに動いては息を殺す。これを繰り返していった。
…
やってしまった。ボロボロになった生徒が倒れているのを見つつ自分のキル数のカウントが一つ増えるのを確認する。
少しだけ同情する。さっきまで凄まじく熱い戦いをしていたのに、ボロボロになりながらもなんとか勝ち取った勝利を私が掻っ攫い逃げる。
自分で言ってて自分のことが少し嫌いになりつつも、「これは戦いの中のれっきとした戦術だったのだ」と、なんとか自分のことを正当化する。残り148人。
……
危なかった。敵に居場所がバレたのはまだ良いにしろ、能力が身体強化だったのがいけなかった。一瞬にして距離を詰められて、もう駄目だと思ったけれど、どうにかして他の人とぶつけさせて戦線を離脱してきた。能力は上手く使えた。それだけでも成長したと胸を張っては言い切れないが、まあ成長したのではないだろうか。それだけで自己肯定感が上がるわけではないけれども。残り71人。
………
怖い。さっきから爆発が何回も何回も起きているのがわかる。より一層姿を隠しながらも、私は敵と会わないように生存第一で動き続ける。──奇跡的に見つかることはなかった。残り19人。
──午前11時30分・日本山 麓付近──
『ただいまを持ちまして、残り生徒数が16人になりました。……おめでとうございます。この音声を聞いているあなたは、能力祭への出場権を得ました!』
15-1-0──左から順に、残り生徒数、キル数、アシスト数である。
そう。私は結局のところ、あの時の漁夫の利以来、一度も敵を倒していないし、戦争に関与していない。それなのに、ただ隠れている──いや、実際は敵から逃げたり敵同士をぶつけたりもしたが、戦わずして勝利を収めたということだ。
(……はぁ)
苦しい気持ちでいっぱいだった。沈みきったこの感情は、麓に降りて、他の人が能力祭への出場に喜び合っているところを見てさらに沈んだ。そんな気持ちは、先生が私を祝福したところで何も変わらなかった。
そんな苦しみの根底にあるのはただ一つの悩み。
本当にこれが勝利と呼べるのだろうか
ああそうだ。ルール上では勝ちなんだろう。私は紛れもなくルール通りに残りが半数になるまでに一人倒したし、残り15人の状態まで脱落しなかった。でも、そうやって手に入れた私の勝利は、苦しみながら必死になって敵を倒して手に入れたわけじゃないし、強大な力を誇示して手に入れたわけでもない。
謂わばウサギ。トラやライオンなどの猛獣が跋扈する中、気配を潜めただけのウサギだ。
……………………それでも
…………………………………………だからこそ
試したくなった。自分が強く、他の14人のようになりたいと、そう思った。
私は棄権しない。そうだ。ここまで息を潜められたのは私の実力だし、何度も狙われた時に逃げ切れたのも私の実力だ。そうだ。きっとそうだよ。
そうであってよ。
それから翌日のことだけれど、チハヤの参加が決まった。チハヤの様子を見ていると、私と似ているような感覚がして、少し胸が苦しく感じた。
でも私は何も言わない。自分と似ているなら、して欲しいことも少なからず似ているだろうと思った。
出場メンバー16人が、決定した。
もしここでミサキが棄権していたら出場するのはカエデだったという………




