「殺してやる」
──11時30分・日本山 中腹──
「待って、誰か来る!」
「そりゃああんな爆発されてちゃ………もしかして、特別教室の?」
「うん……あんまり考えたくはないけど……」
「爆発が近くなった時にちょうど反応があったってことは、つまりそういうことなんだろうね」
うーん。考える中ではミズキ特別教室の生徒……長いな。ミズキーズの中にはあんな爆発を起こせるような人はいない……となると敵側の攻撃……
「ちょっとだけ隠れよう」
「う、うん」
私たちはすぐに近くの低木の陰に隠れる。
「上にレーザー打ってくれない?」
「え、そんなことしたら場所がばれて……いや、わかった」
どうやらチハヤは私に協力してくれるようだ。チハヤがエネルギーを上に打ち出している様子を横目に心の中で感謝する。
「……少なくともあの爆発の中で長時間戦闘が続いているってことは、これくらいで気付くと思う………って、多分もうきてるこれ!」
「いつでも動けるようにしておこう。攻撃の準備もしておいて」
ドンドンバンバンとあれほどやかましかった爆発音が消えた……でも今度は男の叫び声が聞こえる。
……程なくして、私たちは彼女の姿を見た。
それと同時に、私たちは息を呑んだ。飲まざるをえなかった。
──少し遡り、マオ視点──
「しぶとい……!」
「楽しいことは延々とできるものだろ?」
「だからといってそんな傷だらけで何で…」
「俺はアドレナリンでヒャッハーしてんだよ今。そこに傷なんて関係ないだろ」
チラリと見た腕時計端末は、戦闘開始から50分が経過したことを実感する。残り生徒数は21人……少なくとも戦闘開始前には100人近くいたはずなのに、だ。
体力管理はしている、が、それでもあまり整備もされていない山の中50分もずっと動き続けたらどうなるかなんて、説明するまでもないだろう。
この50分の中、私は何度も斬りつけたし、爆発の衝撃でボロボロになった。身体中に切り傷がある男と、全身がボロボロの生徒。流石に苦しい。限界を超えろなんて言われても、その限界すらももう超えている状態なんだよ。今の私は。
手足が痺れて力が入らない。もうずっと前から心臓がバクバク言いまくって一呼吸ごとに痛みが走る。倦怠感が体を襲うも、何とか気力で耐えつつ、私の足は止まる事を知らないし知らせない。
チラリと見た腕時計端末は、戦闘開始から50分が経過したことを実感する。残り生徒数は21人……少なくとも戦闘開始前には100人近くいたはずなのに、だ。
(ペースも最初と比べれば落ち着いてきて全体的にも終盤ってところだなあ。最高のシナリオはこのままチハヤか他の生徒と合流して協力すること。最悪はそういう頼れる人たちが全員もう脱落してること)
私だけで勝つにはもう不可能だ。少なくとももう一人、誰か連携の取れる人が欲しい。一番見つけやすいのはチハヤだ。何せ彼女の能力で居場所が大体絞れるから。
………ハッ!今一瞬意識が無くなりかけた……カフェインとか無しで徹夜してる気分だ。気分が悪い。身体中が重いし痛いし、無意識のうちに腕が降りたりする。手足はもちろん、頭にかけての全身が泥と自分の血でまだらに汚れている。気力だけでこれまでは何とか持ち堪えたけれど、この考えもこれで三回目だけれど、流石に、今度こそもう……
たまたま、偶然、幸運 etc. 呼び方なんて何でもいいけれども、私はついにずっと待ち望んでいたその感覚を掴む。体がフワッと軽くなって少しだけバランスを崩しかけたことが嬉しくてたまらなくなって、少しだけ口角が上がる。
(…!!!やった!この近くにもういる!)
もう一度、手足に力が入る。視界がクリアになる。耳が色々な音を認識する。全てが、希望が見えたからだった。だからこそ、またもや既視感のあるレーザーの存在にも気づけた。
「……ん?あそこに誰かいるな。まあいるだけじゃあ罪じゃねえ。気にせずやろうぜ。お前、さっきと比べてまだ今の方が生き生きしてるし」
男の黒粒はばら撒かれるも、それが地面につけばたちまち爆発する。どれもが、例外なく、だ。
「返すよ!」
そのうちの一つを優しくキャッチして、男目掛けて投げる。流石に想定内なのか、男は迷いなく回避行動を行う。そりゃあ衝撃で爆発するものなんて、触りたくはないよね。それにこの爆発、男自身にも効果があるっぽい。実際無傷でやり過ごせるんだったらわざわざ小粒にして投げるっていう手段は取らない。手を掴んで拘束してから大規模爆発とか……もっと効率のいい方法なんていくらでもある。
しかし私の目的は攻撃ではない。回避行動、いや、私以外の何かに一瞬でも集中させることだ。それさえあれば、死角だらけの動きづらいこの木々の間でなら容易に距離を離すことくらいはできる。
「あっ、テメェ、逃げんな!まだ勝負は終わってねえぞ!!」
背後から聞こえる声が苛立ちを増していくことがよくわかる。
「どいつもこいつも……ほんっっとうにクズばっかだなぁ、なぁ!!正面から正々堂々戦えよ!それが無理ならとっとと死ね!!」
距離は離れていっているはずなのに、聞こえる声は段々と大きくなっていく。
「くそ!結局は貧弱ばっかじゃねえか!!」
それでも私は声を聞かない。このままやっても絶対に負けるとわかっているから。
どこにいる?二人はどこだ?
「クソがァァ!!絶対に殺す!クズは殺す!!死ねよゴラァ!!!」
何がそんなにも男の感情を膨らませたのかはわからないが、風船は膨らみ続ければいつかは割れる。そして中身は、膨らんだ量に比例して大きな音となっていく。
私はそのことに気づけなかった。大きな失態だった。
大きな大きな爆発が、木々を薙ぎ倒して私を殴り飛ばして
モロにくらった。そんなのは感覚でわかっている。完全なる不意打ちで、避けられるはずがない。
木に打ち付けられて、そのまま足の力が抜けてしまった私の視界の端で、近くにいた二人の、見覚えのある生徒の腕時計が一斉に真っ赤に染まったのが見えた。
残り生徒数──────15
友達が血泥で汚れまくっている状態で突然かつてない勢いで出てきたらそりゃあ目を見開いて驚くよね。
尚その後すぐに爆発に巻き込まれる。




