開幕の奇襲
──午前10時・観戦席──
さて、突然だがみんなに質問です。217人から16人を選ぶのって大変だよね?わかります。仮に217人が全員動かずに隠れていたら、どれだけ経っても勝敗が決まらないからね。
ではどうするか、そこで運営側は、「キルスコア制度」を取り入れた。この制度は、端末が自動的に相手を倒した数を計測し、それを基準にペナルティを与えるものだ。具体的に言うと、もし残り生存者が全体の半分、今回の場合108人になった時までに一人以上は倒していないと、その時点で強制退場になってしまう。
さらに言えば、この端末は15分に一回音を出すため、生存者は隠密行動をし続けることができないのだ。
だとしてもやっぱり生存者全員が戦闘を避けたらどうなるの?という疑問が生まれてくると思うが、案外簡単なことで説明がつく。それは……
(やっぱり何人かいたね。初手の奇襲は一種のお約束になりつつあるからね。みんなちゃんと避けられたようでいいねぇ)
単純にそんなことをする人が少ない、ということだ。
愛脳高校。頭いい。みんな強い。自分が一番強いと思う。オッケー?こんな感じで、サバイバルゲームなどのバトロワが行われた場合、確実に、100パーセント大乱闘が始まる。あ、早速一人脱落した。
「みんな頑張れよぉー」
「ここの声、向こうに届きませんよ」
「知ってるわ」
さーてと、そろそろ視点をチハヤに戻すとしようか。波瀾万丈なサバイバルゲームの始まり始まり〜
──同時刻・日本山・中腹──
「やっぱり待ち伏せいた!」
「バレてんのぉ?まじかー」
「おいこっちくんなうわぁ!!」
「あ、ごめーん」
待ち伏せはいた。複数人いたのは予想外だったけども……事前対策がバッチリ機能したため私にダメージはなかったが、今の攻撃で同じく奇襲を考えていた(と思う)一人の脱落が、腕時計端末が赤く点滅することで示された。
(なんだろう今の……電気かな?)
ならばと思い、近くの木の枝を折って剣代わりにして、初キルを取った男に向かって臨戦体勢を整える。能力もこの段階で発動する。ナイフは金属製だし、下手に触ると感電するかも……耐久性はないけど、絶縁体である木が、今の最適解のはず!
「うわぁ、君一年だよね?俺、一年前そんな判断できたっけ……優秀だぁ……倒すけど」
この感じ、反応的に能力は電気をどうこうするって感じかな。
すぐにサイドステップから走って避けの体勢に入る。男は掌から、電気を直径10センチくらいのビームのように出しながら攻撃を始めてきた。避けた電気が木に直撃すると、そこにくっきりと穴が空いていた。
(威力高っ!一発でも受けたら……)
嫌な想像を振り払うように男との距離を詰める。この男、戦い慣れているのか、能力ではなく殴る蹴るを主体として戦ってきている。しかも全身が明るいオーラ……多分電気だろうか。それで覆われているということは、少なくともどんな攻撃でも一発受けたらその時点でまずいということだ。
「どうしよう……」
「降参すればいいんじゃないか?そっちの方が助かる」
「それは、無理な話ですよ……!」
「まあだよね」
男の腕を木の枝で受け流しながら避ける。狙った方向に完全に受け流すことはできないが、避けながらすることで攻撃をかろうじて避けられるレベルまでになる。ビームじゃなければ木は壊せないようだが、やはり枝は枝だ。もう折れかけている。
仕方なく男から距離を取りつつ別の木のちょうど良さそうな枝をナイフで切って構える。うおお、反応が遅れてっ!拳がすぐ横を通り過ぎていった。ちょっとだけビリッときた。あっぶな。
私の能力は直接的に攻撃に繋がるものではないし、個人で使う分には機能できない。ということをミズキ先生に相談してみようとしたこともあったが、それより前に先生は私に別の指示を出していた。
『最初は一人で始めるけど、その後は仲間と合流していいよ。あ、チハヤだけね。他のみんなは個人で頑張って』
正直言ってなんでこんな縛りをわざわざしなければいけないのだろうかとも思う。だってもし全員が一つに集まっていれば、それだけで百人力じゃないかと私は思った。
というか今はそれどころじゃない。やはりというか木の枝。あまりにも武器として不向きだ。これまでで3回だけ男の体に攻撃を当てられたが、全く効いている気配がしない。有効打に欠けている状態じゃ、どんなに頑張ったってジリ貧で負けてしまう。
(…………!)
ナイスタイミング。能力が機能した感じがした。
私は以前、ショウのことでミズキ先生に相談をしたことがあるが、その原因がこれだった。私は他人を強化する時、わずかだが「あ、強化したな」という感じでちょっとした感覚を覚える。今回はそれを利用。あえて誰もいない時に能力を発動しておくのだ。すると、見知った高校内の生徒、つまりは特別教室の誰かが私の近くに入った時点でそれが分かるということだ。また、逆に他の視点から見れば、急に体が軽くなるみたいな現象が起きるから、みんなも私が近いことを知れるのだ。
もちろん近づいてきたことだけが分かるため、どっちに方向に特別教室のどの人が出てくるかはわからない。ただ確かなのは、この強化具合から見て、かなりミサキとショウ以外の誰かが近くにいるということだ。
男の存在を思い出させるかのように私の右耳の側を電気ビームが通り過ぎる。避けた先にいる男の下段蹴りをジャンプで交わしつつ男に枝を刺す。もう二本目折れた!
……恥ずかしいけど、やらなきゃすぐに負けてしまう。腹を括れ私!一時の恥ずかしさなんてミズキ先生に預ける!!
もう一度、先の二度とは別の方法で距離を取る。男の顔に少しだけ不快感が見えてきた。
そして私は大きく、大きく息をつって……
「誰か助けてーーー!!!!」
木々を揺らすほどでもないが、その叫びは半径25メートル内にいる仲間に居場所を伝えるのには十分であるはず!
チハヤがしたのは、参加自体していないショウと、格段に仲の良いミサキ以外の誰かが来ているという推測です。
補足: この世界の人々、昇化が使えずとも、自身の能力に体が耐えられるようにするためにある程度は体は丈夫になっています。
ちなみにこのゲームで一番有利なのは二年生です。
一年→雑魚狩りの標的。集まっても踏み潰される系の雑魚
二年→めんどくさい雑魚。集まったりされたらすっごいめんどくさくなる系の雑魚、
三年→ジャイアントキリングされる。けど無双ゲームの主人公。倒した人はヒーロー呼ばわりされる。
ミズキの理想は生徒を能力祭に出すことではなく、生徒を強くすることなのです。




