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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
飛べない豚編
42/101

サバイバルゲーム、開始!

気付いたら、累計PVが1000を超えていました。

この話を開いてくれた皆様、そしてここまで読み進めてきた皆様に感謝しかありません。

 ──午前9時20分・日本山 麓──



「一年が二年を突き飛ばしたらしい」


「これ、ルール違反じゃないの?」


「うわー、非常識は困るよー」


噂、噂、噂。全て嘘から始まる捏造された情報。真実を見ない。見ない、見ない。


ああ、あぁ、うるさい。



やめてよ



「くっそおお!!痛いなあああぁぁ……ぁ……。」


……全員、黙った。突然の話だった。百以上の生徒が騒いでいた、風で揺れる木の音や、川に流れる水の音でさえ、あれだけ騒がしかった会場が、一瞬にして静寂に包まれた。疑問に思って見回してみれば、誰もが同じような表情、とても驚き、焦り、恐怖を一瞬にして感じたような表情をしていたし、私もだんだんとそれらを感じるようになってきた。そして私の知る限り、こんなことをできるのは一人しかいない。



……静寂を破ったのは、やはり聞き覚えのある声だった。


「おっかしいね。本当おかしい」


それ(天城ミズキ)はいつからいたのか、私たちを取り囲む群衆の最前列に立っていた。……笑っている。されどいつものように屈託ないわけではなかった。目は細く一点だけを見ていて、口も閉じて、ただ口角を上げているだけの笑顔だった。


いや、笑顔というわけではない。むしろ怒っているだろう。今感じているこのヒリヒリとした緊迫感が、決して今が笑いどころではないことを語る。


何も言わず、動き始める。ゆっくり、一歩、また一歩とその歩みを進める時間は果てしなく感じた。


そして彼女が彼、尻餅状態から動けずに固まっている男の前に立ったところで、静止した。


これは私に向けられた圧じゃない。男に向けられているのだ。と、頭では理解している。のにも関わらず、私含め、生徒達ですらみんな、固唾を飲み込まずにはいられなかった。


「立ちなよ」


「……………」


「どうしたの?立ちなよ」


「はっ………はっ……………」


「……立て」


「はい!っ………」


逆に言えば、圧をかけられている男が感じているのは……男の顔からはとっくに血の気が失せ、目を見開き、大量の汗が噴き出ている。この状況が、そんな問いの答えになるだろう。


「……なんだ…立てるじゃん……よかったよ……怪我がなくて。ねえ?」


彼女が男の肩に手をかける。と同時に、男ははっきりとその手を見ていたはずなのに、ビクッと体を跳ねさせる。


男は無意識的にだろうが、背筋を伸ばし切って胸を手で押さえている。


「いいよ?君は加害者ではないからさ……でも次同じようなこと、したら……」


そうして彼女は男の耳に顔を近づけて──


「─────」


男はそこで両膝から崩れ落ちた。力が入らないのか、全身を脱力していた。そこでようやく世界に音が戻った。


「まったく、チハヤもチハヤだから……こういう人はほっとくとめんどくさいからはやくこっちも主張しないといけないでしょ?」


「……ぁ、はい、ごめんなさい……」


「次からは気をつけてね。経験は有限なんだから」


「はい……」


「んじゃ、予選頑張ってねー。ばいばい」


私だって彼と同じだった。彼女が先生に戻ったからこそ、ようやく私は声を出せたし、そうじゃなかったらまったく話せずに終わっていたと思う。


(生きてる心地がしない……)


すでに姿が見えなくなったミズキ先生を後に、心の中で小さく呟いた。


一筋の冷や汗が頬をつたった感触に後から気づいた。




『間も無く、サバイバルゲームが始まります!物資を配りますので、参加者の皆さんは、今一度最初の場所に戻ってきてください!』


ここでの一件を知らない放送が、私たちの静寂を破ることで、群衆はだんだんとばらけていった。私がその中に紛れてその場を後にしたことで、ちょっとしたトラブルが終わった。



 ──午前9時55分・日本山中腹──



見渡す限り、周りには葉の緑色と、木と土の茶色しかない。静か、ではあるが、やはりさっきのアレを経験したからか、何か少しでも音があることに少しだけ安心感を覚える。


ふと、配布された腕時計端末に目を向ける……後5分で始まることを再確認して、もう一度深呼吸をする。


この端末に示されているそれぞれの数字が、現在時刻、気温、湿度、標高、生存者数を示している。


(開始前の生存者、つまり全体の参加者は217人……思ってたより多いかも)


とは言っても、実際前回の参加者もそのくらいだったことから、今年も普通くらいになるのだろうか。


(……!)


ふと近くから枝を折るような音が聞こえたため、その場から距離を取る。


後5分。その後は自由に戦闘が始まるが、裏を返せばそれまでは攻撃をしてはいけないということ。つまりはゲームが始まる前に敵と遭遇すれば、後々何をされるわからない。隠密を貫き通すのが最優先なのだ。


現に私は今もずっと存在を消しながら移動を続けているし、これまでバレてはいない。


残り1分、私は事前に持ってきたナイフを手に取り、体勢を整える。


(どうか、本戦に出場できますように……!)


ゲームの開始を示す空砲が




今、はっきりと轟いた。

チンピラの話がなければ前回この展開になるはずだった。

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