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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
小さな蟷螂編
34/101

蟷螂の斧

はい、長編タイトル終わりです。

 ──午後8時・外──



「自爆!?」


「いえ……少なくともフォボスに被害はないでしょう」


爆発の範囲を覆うように土埃が舞う。それは俺たちの目から結果がどうなったかを隠して動かない。


「でも何でいきなり……?」


「あまり信じたくはありませんが……私たちは騙されていたんでしょう。「魔力弾はフォボスにも効果がある」と。そしてその前提でミズキさんは戦い、その結果動揺した瞬間に一斉に起爆。完全に虚をつかれた攻撃です」


「丁寧にご説明ご苦労だな」


「「っ!?」」


「やっぱこっちの方が喋りやすかったな。変に猫かぶるもんじゃんねえな……」


もう背後に…何回見ても見えない。今じゃ絶対に勝てないことがもう分かりきってる。万事休す…か。


フォボスが手を翳した瞬間、俺たちの体が動かなくなる。レイナさんはどうにか体を動かそうとしているが、俺が無理だった以上レイナさんがどうにかできるものではないだろう。


「おいミズキ!早く出てこい!お前が生きてることはわかってるんだよ!」


……ようやく土埃が晴れる。土埃が隠していたものは、数多の爆発がまるで一つの巨大な爆発になったかのような、大きなクレーターのような凹みだった。そこにミズキ先生の姿はない。それどころかミズキ先生は俺の……いや多分俺たち全員の視界から消えていた。


「出てこねえと……こいつらを殺すぞ?」


フォボスがレイナさんの首元にナイフを突きつける。──ミズキ先生の姿はない。


「いいのか?お前が大切にしていたものだぞ?」


レイナさんの顔に焦燥が現れる。多分俺も同じような顔をしているだろう。──ミズキ先生の姿はない。


「そうか、やっぱりお前……ゴミだな」


「人質取ってるお前に言われるほど堕ちてはないぞ」


「……テメェもじゃねえか」


現れたミズキ先生の左手には、ローブのフードが脱がされて素顔があらわになっている少女が反抗をされながらも拘束されている。拘束されているからか、ただ触られているからか、少女は強い嫌悪感を抱いているようだ。


「交換だ」


「……」


「今日のところは手を引く。これ以上やっても無駄になるだけだしな。どうだ?」


「……………………次は殺す」


「こっちのセリフだ」


拘束が解除され、抜けた力では体を支えられずに二人して膝を地につける。同時にミズキ先生も手を緩めて少女を解放する。解放された少女は一目散にフォボスのもとに駆け寄り、フォボスに抱きかかえられた。


「俺はお前を一瞬たりとも許したことはねえよ」


それだけを言い残して、少女を抱いたフォボスは消えていった。ミズキ先生もそれを追いかけようともせずに、そのままフォボスがいた場所を見つめ続けていた。


「知ってるよ……何十回も聞いたからね」


いつも能天気で、ちょっとしたジョークを混ぜて、毎日踊るように動きまくるミズキ先生の口は、今回だけは、そんなことはなかった。


風に靡く白髪が、青と赤の瞳が、天城ミズキという人間が、何を見て、何を聞いて、何を経験したのか。俺には見当がつかない。しかし、きっとそれは、何か壮大な何かなんだろうなと、何故か思った。


「帰ろっか」


三日月が俺たちの背中を照らしていた。








 ──同時刻・???──



「ったく……やっぱ人外だろあいつ。なんであれから反応できるんだ……はぁ……」


「ねぇせんせ?」


「ん?なんだ?」


「地下にいた男の人さ、お金とかお酒はわかるんだけど……なんで女の人が欲しいの?寂しいのかなぁ」


「……多分そうだろ。うん」


「私ちゃんとできた?」


「あぁ、ナイスワークだった。少なくとも当初の目的は果たせたわけだしな」


「えへへ、撫でて?」


「……少しだけな」


ミズキ達とは逆の、日本区とは真逆方向に歩を進めつつ、俺たちもまた、一時の平和と安らぎを味わっていた。が、それを遮る人が50人。


「おいテメェゴラァ!散々使いまわしといて何一人でずらかってんだよ!こちとら傷だらけで楽し……戦ってたんだぞ?」


「……だから何だ?」


「報酬だよ。俺らはタダ働きするために来たわけじゃねえんだよ」


「……俺言ったぞ?「夜吹ショウを捕らえた者一人に対して願いを一つ叶える」とな」


「うるせぇ!俺らは…………」


「馬鹿だな。何感情的になってんだよ」


「あ゛?」


「そんなんだからこうなるんだよ(・・・・・・・)。」


「テメェふざけ」


ぽとぽとぽとぽとぽと……


確かにそこには50人いた(・・)。一体何に不満を持ったのかはわからないが、馬鹿な50人はもういない。


「せんせ、強ーい」


「っと、ちとショッキングか?まあいい、行くぞ」


「えいえい、おー」


消えたフォボスの後に残された50の生首と、直立したままもう二度と動かない体から、ひと時おいて、全ての断面から一斉に血が溢れ出す。鮮血はあっという間に辺り一帯を覆う池となった。




この惨状は暫くの間放浪者達の間で語り継がれ、未来でも一種の都市伝説として残り続けることとなった。

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