対天城ミズキ特別組織【奈落】・十一
やっと……投稿できた……
──午後7時45分・外──
はっきりと言おう。フォボスは強い。そもそも大太刀はナイフよりも刀身が長いし重いため、ナイフの攻撃範囲の外から一方的に重い攻撃を繰り出し続けられる。だがフォボスは言葉では自暴自棄になっていても、手先を一分も狂わさずに千紫万紅を受け流し切っている。
さらには圧倒的な魔力量を塊として空間に創造、それをまとまりではなく個々として認識して、私を包囲、そして拘束し続けている。常人には到底不可能な曲芸だ。
まあ元々こいつの戦い方は知ってたし、こういう手を使うのも想定していた。私とてタネが割れているマジックに騙されるような馬鹿じゃないし、そのための千紫万紅だ。
赤紫大太刀・千紫万紅は元となった刀のエネルギーを使用する事で一定時間だけ使用できる赤紫の大太刀だ。能力は大きく分けて二つ。
一つ目は『不可壊』。効果として文字通り壊れない。これは一見地味に見えるが、結構ぶっ壊れ能力だ。なんせ大太刀で攻撃を受け止めても壊れない。力比べで押し負けて折られることもない。まさに矛盾を兼ね備えている性能となる。とは言っても、今回重要なところはそこではない。それとは別に重要な役割があるのだ。
「これは鈍器として使える!」
普通の刀だったらすぐに折れるが、『不可壊』があれば側面で叩けば打撃攻撃として使える。そして狙うのはフォボスのナイフだ。ナイフさえ吹き飛ばせば丸腰にできる。
それに、千紫万紅を出したのはそれだけじゃない。私はこいつに圧倒しなければいけない。ギリギリの戦いじゃない、それこそ赤ん坊と大人の殴り合いのような、誰がどう見ても勝ち以外の選択肢が思い浮かばなくなるくらいにはボコボコにしなければいけない。
そのために必要なのは、フォボスを完全に超える技術と一瞬のうちに状況ごと覆すようなどんでん返し。
さすがに間合いが近すぎるな。大太刀じゃ戦いづらい。かといって距離を置こうとすれば魔力弾がなぁ。なかなか痛いところついてくれる。お前のそういうところ私は好きだよ。とはいってもまずは魔力弾からだな。
「とりあえず……ぶん回してみるか」
「ミズキテメェ脳死は自殺行為だろ……ッ!?」
やはりな。今意図的に魔力弾を避けさせたということは、これは爆弾だ。魔力を圧縮しているから少しの衝撃で崩れて爆発するんだろ?私対策の魔力弾だし、最低でも腕が吹っ飛ぶくらいの威力はあるはずだ。よってお前は自身の近くの魔力弾を壊せない。仮にそれらを遠ざけたとしても、折角詰めたこの間合いを捨てたくはないだろう?
なら私のすることはフォボスではなく、魔力弾を斬ることだ。くっそもう気付いたな。ナイフの妨害の手数が増えた。
「お前のそれはただのガラクタか?こっちが持ってんのはたかがナイフ一本だぞ?」
「それだけお前が上手いだけじゃないか?勝手に誇っときな。私は賞賛しないけど」
至近距離、それこそ拳を叩き込むことができるくらいの間合いの中、獲物は火花を散らしながら魔力弾の間を踊り舞う。太陽が沈み、とっくに暗くなった暗闇の中、火花が私達を瞬間的に照らし、視覚的情報として伝達される。魔力弾はエネルギーの塊だからか、ぼんやりとした光を伴っている。さながら蛍に囲まれるように、戦闘は続く。
「…………なんであんなことをしたんだ?ミズキ、お前に忠誠を誓っていたはずだぞ?それなのに……」
「そうだな。私が一方的にお前を突き放した。私が悪い。でも私は無意味なことはしない」
「……は?」
「正直言って私はどうしてこうなったのか、私は過去何をしたのか覚えていない。だとしても私はそんな好き勝手で人を傷つけるはずがないんだ」
「……舐めんなよ?」
「舐めてないさ。私は──」
「いやいい。どうでもいい聞きたくない。どうせお前にとってはその程度のことだった。そうだろう?ノーとは答えさせねえ」
「人の話は最後まで──」
「お前が重要視しているのは何だ?過程?原因?意味?違う、結果だ。お前は一つの大義を成し遂げるためなら余裕で一万人の命を犠牲にできる。違うか?」
「……」
「沈黙、イエスと捉えていいな?……………やっぱ死んでくれ。ゴミが」
感情が揺らめいだのか、過去の話で動揺したのか、私は確かにできたその隙を見逃さなかった。千紫万紅を魔力弾の間を通してフォボスの首元まで届かせる。
(有効打にはならない。しかし頭部の欠損。多少時間はできるだろう)
そう思ったのが間違いだった。いや、そうはならなかった。時間ができなかったというわけじゃない。その前だ。
「かかったな?」
「何故…首が斬れてない!?」
「てめえ今……初めて予想外が起きたな?」
「やばっ……」
次の瞬間、魔力弾が、視野を埋め尽くす背景となっていた魔力弾、その全てが、私を囲むように、周りの被害なんて鑑みないと言わんばかりに一斉に爆発を引き起こした。




