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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
小さな蟷螂編
30/100

対天城ミズキ特別組織【奈落】・八

 ──午後7時20分・外──



回復した俺はすぐにレイナさんと協力してフォボスを攻撃する。単純計算で手数は倍になっているし、実際はレイナさんがかなり動いているのでもっと手数が増えているだろう。



──ここまでして尚、遊ばれている。



明らかに余裕がある動きで何度も攻撃を防ぎまくる様子を見ると否が応でもその事実を受け入れざるを得なくなる。いやほんとにどうしよう。


全盛期(地下1階)では周りの動きがだいたい3分の1くらいになってそこから身体強化も含めて全力で走ってたから……少なくとも時速300kmくらいは出てたのだけれども……今はその半分くらいの速さですごくもどかしい。それでも十二分に速いはずだが……もしかしたらさっきのベストコンディションでも結果は同じかも?それでもこの程度の怪我で済んでいるのはまだマシな方かもしれない。


だとしても俺たちが一方的に押されているという状況は事実であるわけで──


「そこです!!」


「っと……なかなかいい動きですが──そちらもしっかり気配を消して奇襲せねばすぐにバレますよ」


「うっ……くそ…」


いつまで持つだろうか?さっきフォボスは「はやく終わらせる」と言っていた。ということは今の状況は単に気分がいいからとか、そういう簡単な言葉で片付けられるだろう。


レイナさんは俺から雅を受け取った後は積極的に近接戦闘に持ち込んでいる。なぜか、雅による攻撃だけは避けるのだ。これまでずっと攻撃を受け止め続け、その場から一歩も動かずに余裕の笑みを浮かべていた男が、だ。それはつまり


雅で攻撃できれば倒せる


そういう事なのだろう。だとしてもどんな状態でも余裕の笑みを浮かべながら紙一重で避けるフォボスに一撃でも当てる事は難しいが、今の希望はそれしか無かった。


「ショウくん!お願いします!」


「はい!」


今持てる最高速度での攻撃、フォボスは必ず受け止める。ならば……


背後から藤色の刃が迫る。フォボスはまた避けるが、レイナさんはそれを先読みするように蹴りを入れる、とそれが左手で受け止められるもそこを俺の拳が叩く。


だんだんと連携が取れてきた。一対二の状況は確かに優勢を取れる。互いが攻撃時に晒さなければいけなくなる隙を互いがカバーし合う。これだけで戦力は一気に上がると言って良いだろう。


そう、隙だ。俺たちの勝機はそこにあると俺は考える。フォボスは強い。これは、圧倒的な力と最適化されきった体の使い方や攻撃の見切り方にある。だからこそ隙が無くなる。どんなものでも簡単に対処される。


しかし、だからといって隙が完全に無くなるわけではない。ちょっとした気の緩みでも目にゴミが入ることでも何でもいい。ひたすら耐えて観察し続けろ!俺たちはそれができる目を持っているはずだ!




終わりは呆気なく。一言で終わるものだ。そうだろう?そうなのだから。


「うーん、動きはいいですが……やはりだめですね。遅すぎる。あなたは逃してもいいのですが……女性の……ええと確かレイナさん?あなたはここで殺してしまってもいいかもですね。もういいでしょう。悪いですが死んでください」


それは、均衡が崩れ去る音。それは、処刑宣告。まるで玩具で遊んでいた子供が急に機嫌を損ねて暴れ出すように。本当に、本当に一瞬だった。



どごっ



「……っ」


やはりフォボスは圧倒的だった。身体能力も、魔力も、戦闘経験もが全て。薄々気付いていたけれども、これまでなんて全てただの演技だった。きっとフォボスならこれ以上に速くなれるだろうし、能力を使われたらそれこそ終わりだっただろう。必然に抗うことなんてできずに、一人の女性の体が倒れる。貫かれた腹から血をドクドクと流しながら動かなくなる。


心の底から絶望をした。戦意なんてとっくに消え去った。恐怖した。怖いが俺の頭を支配して足を崩す。ぺたんと折れた俺の足は、これ以上はもう動かなかった。


フォボスが背を向けて歩いていく。何処に行くのかとか、奴の目的は何かなどという合理的な判断よりも、恐怖が勝つ。結局俺はその場から一歩も動けなかった。


タイムリミットまであと──

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