対天城ミズキ特別組織【奈落】・四
2000字くらいを心がけていたはずなんだけれど……なぜ一話ごとのボリュームが小さく…?
──【奈落】第三支部地下2階──
私はこれまで、出会った時からずっとショウくんの声を、実力を、性格を知らなかった。初めて──ちょうど地下3階で出会った時からずっと、彼は一切話さなかった。さっきまでは「あまり話したくない性格だったりするのかな。」と結論づけていたが、違った。
一瞬だけ見えた。いくつかのガラクタをかろうじて繋ぎ止めたような鈍器の振り下ろしがショウの頭部をぶちまける直前。私は初めて彼の顔を見た。そこにあったのは──不安と恐怖
そうか──嗚呼、知ってるよ。私もそうだった。自分が怖い。自分の行動一つで、全てが壊れてしまう。故に何もしない。後退よりも停滞の方がマシだと思っていたから。
「…………ぁ」
突き飛ばされて地面に倒れたショウくん──いや、ショウが私を見て初めて声を漏らす。私の顔を血がつたう。残った衝撃がぐわんぐわんと頭を揺らす。
直ぐに男の頸に雅を突き刺し、捩じ切る。実にあっさりと切れた。頸動脈を切られた男はその場に倒れて動かなくなった。私は咄嗟に近くの壁にもたれかかり、そのまま脱力して地面に座り込む。
世界が回る。やはり頭はまずいな。魔力で守ったとはいえ、完全には守れなかった。特に衝撃!外傷は今は問題ではないが、脳震盪がひどい!
私の今の能力は「五感の強化、及び第六感の発現」だ。進化した能力で、私の場合は感覚が極めて鋭くなった。だからこそ私はこれまで音と気配を読んで、紙一重の侵入と脱出を成功させてきた。でも逆に言えば、そっちに特化していったせいで「身体強化」が使えなくなった。今まで特にデメリットには感じていなかったが……大事な時にやっちまった。
「大丈夫ですか!?ああ……どうしよう血が!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「……大丈夫だ。問題ない」
「でも!頭から血が!!」
「……ショウ……あんたは人の為に泣けるんだね」
本当に似ている。私も昔はそうだったなあ。本当は行動力も何もなく、猫かぶってさ。でも中途半端な正義感のせいでこんな時だけは衝動的に動いてしまう。非合理的が悪いというわけじゃない。でも何故か。こんな時だけは──理屈じゃ無い。けれども、どうしてか分からないけれど、動いてしまうんだ。
「ごめんなさい!俺がなんとかします!どうにかして!それで──」
「先に行け」
「……へ……?」
「今……この騒ぎを受けて……更に……奴らがくるはずだ。向こう側に……地下一階への階段がある。まずはそこまで行け」
「でも、あなたは!!」
「……後で行く。今は……行け。あんたは弱い。選ぶ選択肢が……あるのに……それを全てドブに捨てている。他人と……関わるのが…怖くなって……ただただ泣くことしか……できないんだろう?でも…だからこそ……お前に託す。いいな?」
そう言って私は雅をショウに渡す。少なくとも、私が持ち続けるよりかはよっぽど有効活用してもらえるだろう。
「……ごめんなさい。」
「謝る必要は無い。ただ一つ。『生きろ』」
「……はい」
ショウが雅を受け取る。元が白刃であったのが嘘のように、すでに刀身は禍々しい紫に変貌していた。
「なら……速く行け!」
「はい!」
ミズキさん……私は彼を尊敬します。願わくば、私のようにはならないで欲しいな。……神頼みするだけ無駄か。とはいってもな……あーやばいこれ。ワンチャン死ぬかも。
意識が、闇の中に溶け込んでいった。
──【奈落】第三支部地下1階──
『生きろ』
俺を縛る、邪魔な救済。
『生きろ』
俺を救った恩人の願い。
『生きろ』
でも俺は帰れない。
『生きろ』
なのに俺は、息を潜める。見つからないように、姿を隠す。通り過ぎる敵を確認して、静かに、かつ素早く移動する。
死ななければいけないと判断する理性。
生きなければいけないと判断する本能。
人は、というよりかは生物は、こういう時大体は本能の方を優先する。少なくとも本能としてそうやって今日まで命を繋いできたのならば、それが「種族」という名の『縁』を伝わってひしひしと感じるものなのだ。俺も例外ではなかったんだろう。
脅迫から始まった理性的選択肢。
遺託から始まった本能的選択肢。
どちらを選ぶのかという問いは愚問でしかなかった。
俺は自殺志願者ではない。ただ、何もしないだけ。自分に如何なる被害が出ようとも、それを単なる「結果」として割り切る──つもりでいた。
視界が赤い。赤い。黒い。死を象徴する血が宙を舞って床に散る。時が、一瞬だけ止まったような気がした。
そうだ。何もしなかった「結果」として残ったのは──第一に避けたかった他人の血だった。
あれ、なんだかストーリー概要が能力バトル系に変わっていくような……
ごめんなさい。元からそのつもりでいました。




