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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
小さな蟷螂編
23/100

対天城ミズキ特別組織【奈落】・二

時は少し遡る。



 ──【奈落】第三支部周辺──



一見なんの変哲もない普通の廃墟。されど二つの人影が入っていったその廃墟だからこそ警戒を強める。崩壊したビルになるはずだった(・・・・・・・・・・)もの(・・)。誘拐犯の拠点はこの中にある。


いや、間違いがあった。誘拐犯(単独犯)の拠点ではないはずだ。続々と廃墟の周りに集まっているならずもの共を見て、少なくともそう確信できた。


(どうしてこんなに奴らはこんなにもおとなしい?普通なら勝手に戦いが始まって、何人か死人が出ていてもおかしくないはずだが……いや、考えたくはないが、恐らくあの()の能力だろうなこれ。夜吹ショウを完全に封じ込め、さらに三桁単位で動きを支配する能力なんて一体……?)


『みなさん。お集まりいただきありがとうございます。まずは、おめでとうございます。ここより、あなた達は、全てを手に入れる権利を得ました。』


どこからか放送が入る。音質的に廃墟に設置したスピーカーか何かを使って音声を流しているな。ならば奴らをここに集めた目的は一体……?


『あなた達のミッションはただ一つ。夜吹ショウを殺すことです。ミッションを達成できた1名にのみ。私から願いを叶えましょう。』


ますますわからなくなる。なぜこんなデスゲーム紛いの事をわざわざ?くそ!泳がせてこの位置を知れたのはいいが、肝心な動機がまだ掴めていない!今考えなしに出るのは悪手だ!


『今からここでのあらゆる行動を許可します。戦闘でもなんでもしてください。しかしここでの責任を私は一切取らないので……では。夜吹ショウくんはここの地下3階にいるので。では私からは以上です。頑張ってください。』


ドガァァァァァァン!!!!


次の瞬間、静止していた空間に時が戻ると同時に、一斉に奴らが動き出す。早速意気揚々と人を痛めつけ始める者、どうにかして生き延びようと必死に周りから距離を置いている者、廃墟へとなだれ込むように吸い込まれていく者。様々である。目に見える範囲でざっと200人。予め獲物(武器)を借りていて良かった。私は左腰に下げていた、両手で握りしめるにはあまりに小さい小刀を抜く。白色の刃が、夕方の斜光を受けて一際目立つ。


ミズキさんから借りたこれの名は『紫刀(シトウ)(ミヤビ)』。ミズキさんが直々に作った唯一無二の傑作。どうやらもう一つの刀と合わせて一つらしいが、今回はこれだけで充分。



さて、始めよう。救済を。



足音を、気配を消して一人の男の背後に近づき、男の背中に白刃を立てる。漏れ出る赤黒い鮮血には私でさえも未だ慣れることはできない。だとしてもやらなければいけない。「嫌だから」と言う理由で私がしくれば、待ち受けているのはミズキさんの生徒の死かもしれないし、『計画』の決定的な亀裂かもしれない。


小刀を男から抜き、血を振り払う。男は力無く倒れ、すぐに気を失った。これで一人目は終わりだ。刃を確認して……よし、しっかりと機能しているし、問題はない。


私が一人を戦闘不能にしたことなんて、この中では特別なことではない。むしろ逆に軽傷で済んでいるだけマシである。次にすべきことは……しばらく余裕もありそうだし、少しだけ斬って(・・・)いくか。少なくとも、今すぐ彼に危険が訪れるわけでもない。


200人──いや、廃墟に入っていったり戦闘不能になったりして……今ここにいるのはざっと50人。


「……まあ、無いよりかはマシだろ。貰っていってやるから覚悟しろ!!」


白刃が赤をベールに藤色に染まった。



 ──区の中──



「ねえレン……やっぱ行っちゃダメ?」


「ダーメ。せっかくのチャンスだ。プライスレスなら貰ってこうよ。それに奴ら()もまだ本格的に動いてない。一旦ステイが賢明だよ。」


レイナに付けておいた小型カメラのライブを見ながら作戦会議をする。この時はいつかはくると考えていた。まだそんなに大々的に活動を始めているわけでもないからというのもあり、流石に『計画』が始動して三ヶ月で勘繰られるとは予測できなかった。


「でもさあ……絶対なんか裏あるよあれ。」


「まあね。無かったらおかしいね。」


「なら尚更……ショウは安全なの?」


「な訳ないでしょ。仮にもあそこは敵陣だよ。見えはしないけど、今頃何かしらの危険に遭ってるかも?」


「……行ってくる。」


「ダメだって言ってるでしょ!ここで行ったら折角の機会が──」


「生徒の安全よりも機会の方が大事なわけない!」


「……そんなにもショウくんとレイナを信頼できないの?」


レンの得意技の正論パンチが炸裂する。私は別に特別頭がいいわけでも無いからそこら辺ですぐに言いくるめられる。でもだからといって「はいそうですか」と思えるほどバカでも無いし、逆に脳死で飛び出すなんてこともできない。


全く。やはり(・・・)背水の陣となるんだな。


「いや、だとしても私はもうちょっと後で行くよ。ちょっとだけあいつに挨拶(カチコミ)しに行かなきゃだし。」


「……まあそれならいいでしょ。いってらー」


その言葉を聞いて、取り敢えず席に座る。別に好きでも無いコーヒーを少しずつ飲みながら、画面に目を向ける。雅は……よし、調整ちゃんとできてる。これなら多分問題ないだろう。──────フォボスめ。私はお前をどうにかして……


勝つのは私だ。

補足: 紫刀(シトウ)(ミヤビ)


ミズキ作の白色の小刀。とはいってもどちらかというとサバイバルナイフ。とある特殊能力があるが、この武器は一対の刀の片割れとして作られているため、能力を完全に引き出すためにはもう一方の刀が必要。能力を使用すると白い刃が紫色に染まっていく。

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