火遊び
おそらくこれから段々といろんな生徒の介入が増えるかと思われます。
──5月11日・デパート──
俺たちは8人でデパートに行っていた。理由はもちろん──遊ぶためだ。すげえ……俺たち……ほんとに高校生なんだな……。そう思っているのは俺だけじゃないようで、他の仲間もどこか唖然としているようだった。特にカエデに関しては「まじか……まじか……!」とか言っていた。ちなみにカエデは普通そんなこと言わない。どちらかというと彼は温厚でのんびりとしたような男の子って感じだったので少し意外だった。
「よし……まず……みんな来てくれてありがとうね。それじゃあ……えっと……楽しみながら笑い合おう。」
チハヤ……大丈夫か?これ。雰囲気悪くなってるじゃん。
あまりにも雰囲気が悪くなってしまった。まあ開口一番があんな戸惑ったものでは、到底楽しむなんてことはできないはずだ。
『なにあいつ、きも。』
脳裏に浮かんだ光景が今の状況と重なる。くっそ。またか。やっぱり俺は今のままでいなくちゃいけない。だから、俺がすべきことは……
「まずゲームセンターでも行かないか?俺、クレーンゲーム結構好きなんだ。」
周りから賛同の声が滲み出てくる。よし。成功した。
「あ、えっと、うん、いいね。じゃあそれで行こー!」
チハヤが明らかに自分で作ったとわかるような明るい声で先導しようとする。俺は誰よりも早く「おー!」と言って、周りの雰囲気を明るくした。ゲームセンターに行く途中、一瞬だけチハヤから感謝の目を向けられたのを俺は見逃さなかった。俺はそれに対してチハヤの目に、「問題ないよ。そのくらいのこと」と言うつもりで視線を返した。その瞬間、俺とチハヤの間に少しだけ、絆が芽生えた……ような気がした。
──12時・フードコート──
俺たちはゲームセンターで2時間ほど遊んだほど後、フードコートで昼食をとっていた。要は休憩時間である。これまでで、チハヤはみんなとかなり打ち解けてきているみたいで、特に女子との間で話に花を咲かせていた。そんな俺はというと……
「ぬあああああぁあ!!取れなかったああ!!」
「おい黙れよ。周りに迷惑だ。」
ちょっと離れたところでリュウと会話中だ。と言ってもこれは会話と呼べるのだろうか?どちらかと言うと一方的な言葉のデッドボールとまで言えるような状況ではあったが、それもまた徐々に改善されてきて、リュウも少し刺々しいが、会話をしてくれるようになった。これもまた一つの成果だ。
「うっ……すまん、リュウ。」
「俺に謝るより先に行動で謝罪の意を示せよ。イライラするからな。」
「うーん……俺、ここでは声量抑えることにするぞ。」
「……そうしとけ。」
「とは言ってもハナはすごかったなあ。狙った獲物は全部取る!みたいな感じで全部取れてたぞ。なんかコツとかあるのか?」
俺は今度はハナに話題を振ってみた。実はハナとはかなり接点が少ない。理由は意外とすぐわかった。「存在が薄い」のだ。あ、いや、悪口じゃないよ。というのも、俺の予想だと、ハナの能力の『蜃気楼』が関係していると思う。なんというか……ハナは性格もどちらかというと明るいし、容姿だって決して暗いわけではないのに、なぜかいつもふわふわとしているのだ。でも話しかければちゃんと反応はしてくれるし、むしろ嬉しそうな反応さえするから、積極的に話したいとは思っている。
「……あっ、あたし!?えーっとねえ。アームの特性を1回目で把握することかな。アームの強さとか動く速さとか。……もし興味あるなら今度教えてあげるよ。あたしだってショウに教えてもらってる身だし。」
「ああ!是非ともお願いしたい!」
うぐ。思わぬところで不意打ちを喰らった。俺の教えを真正面に受けてくれているみんなに申し訳なく感じる。今はみんなも見ているし、ハナもすごく嬉しそうだから絶対に顔に出したらいけないけれど……ごめん。ハナ、みんな。
──13時・カラオケルーム──
昼食を食べ終えた後、俺たちが向かったのはカラオケルームだった。これに関しては、実はハナの意見から始まった。正直ハナが意見してくることはあまりないと思っていたから普通に驚いた。だけれども普通に名案だと思ったし、みんなも賛成していたから昼食後すぐにここにきた。ちなみに3時間コースを組んだ。多分これで今日は終わるな。
だとしても俺、友達とカラオケ来たことなんてあったか?ハナとリュウがタブレットを操作する。その後音量を設定して、終了時間と今の時間を確認して、ドリンクバーに……いやこの2人手慣れすぎだろ。流石にすごい通り越して面白いわ。
そうしてその後は、みんな自分を解放する気持ちで目一杯歌っていた。これがカラオケというものなんだな。最高じゃん。今度1人でもカラオケ行ってみるか。
「いやすごいな!リュウは。歌すっげー上手かったじゃん!」
「いややめろよ、こんな人がたくさんいるところでこんな話。」
カラオケが終わった後、俺たちは適当にぶらつきながらカラオケを振り返っていた。とはいっても、反省会ではなく、普通の他愛のない会話だ。いや、むしろそっちの方がいいな。
「いや、それでもリュウが歌ってる時ってさあ、なんというか……すっごく雄大な感じがして、かっこよかったんだよなあ。今度なんか歌い方とか教えてくれないか?」
「教えることなんてねえよ。思うように歌ってるだけだ。少なくとも俺はなんも考えてねえ。」
「あとハナも結構上手かったよな。」
「え、そう?あはは。ありがと。歌い方はねえ。えっと……声を遠くに届けるイメージかなあ。」
「そうか。アドバイスありがとう!」
ちなみにハナの歌声は透き通っているようだった。今風の女性の歌い手みたいというのが一番近いだろうか?
「あはは……逆に私は結構下手だったなあ……意外とショックかもです。」
そうこぼしたのはアオイだ。アオイはなんでもできる万能ウーマン(女性なので)みたいなところがあるが、歌に対してはそう言うわけでもなかったらしい。
「まあそんなとこもあっていいんじゃないか?アオイは真面目でなんでもできる感じがするからなあ。少しくらいできないところがあったほうが俺は好きだぞ!」
「……そっかあ。ありがとう。」
今日を通して、俺はみんなとより一層深い絆を結ぶことができたはずだ。みんなのありのままの姿を見れたり、意外な一面を見たり、とにかく楽しかった。ありゃ。足パンパンになっちゃった。俺、体力はあるんだけどなあ。楽しくなるとつい能力の発動を忘れてしまう。俺はもう一度全身に能力を纏い、体を軽やかにしていった。
──5時・近くの公園──
「みんなー。今日は一緒に遊んでくれてありがとう!私はすっごく楽しかった!みんなとも楽しみながら仲を深められたしね!」
デパートを出て、近くの小さめの公園で俺たちは一度集まる。何をするか?それはもちろん、当初の目的を果たせたか確認するんだよ。
「それじゃあこれからみんなに能力をかけるから、みんなそのまま動いたりしてみて。そうだなあ。一人ずつ行こうかな。」
今回の一連の活動で、チハヤはかなり明るくなった。いや、明るい部分を見せてくれるようになった。それほどまで彼女は俺たちを仲間として信じてくれているのだろう。つまり、確実に絆は強化された。あとはそれがどのくらいかだが……
「うわ!すご!」
「これは……かなり強力になっていますね。すごいなあ。」
『絆強化』の強化幅はかなり広かった。アオイの目線は街灯と同じ高さにあるということはまさか……一般人が街灯の高さまでジャンプできていると言うことだ。まさしく強化だな。これは。
そうだ。元から誰よりも身体能力が高い俺を強化したらもう最強になるのでは?善は急げ。やってみよう。
「うわあ!!すごい。木のてっぺんぐらいまで飛んでるよ!!やっぱりショウとは一番仲を深められたと思ってたし……あれ?」
「……?」
俺の頭の中は疑問符だらけだった。おかしい。何がって?強化がだ。一般人程度の身体能力しかないアオイが街灯まで……つまりは普段の三倍以上のジャンプ力になったんだ。俺もそうなる……はずなんだが……変だな。この程度の高さなら……強化なしと大して変わらないな。
「……まあいいや。みんな、今日はありがとう!私も前と比べてよりみんなを強化できるようになったって感じれた!ありがとうね。それじゃあ……あっ!もうすぐ塾の時間だ!私もう帰るね。もう一回言うけど、今日はありがとう。じゃあね!」
そう言って慌てながら公園を飛び出したチハヤを俺たちは軽く手を振って見送った。その後、俺たちもだんだんと帰っていき、そうやって何事もなく表面上平和な1日が完成したのだった。
補足: 今回行ったデパートはちょっと前にマオが行ったところとは別です。どちらも同じような施設がありますが、今回行ったデパートの方が圧倒的に大きいです。




