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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
小さな蟷螂編
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対人訓練

しばらくはちょっとした日常回が続くかと思われます。暗いお話はまた今度ですね。

 ──5月8日・異空間──



「はっ!とりゃ!はぁぁああ!!」


アオイが必死になってナイフを振る。それをマオが目で追いつつ避けたり、受け流したりして防ぐ。その戦いの中、双方の瞳にはいつもの和やかな雰囲気はなく、まるで本物の戦闘のようだ。アオイが未来を読んでどうにかナイフを当てようとするが、マオがそれを自分の技量だけで防ぎきる。この戦いを表すなら……「隙のない戦い」だろうか?ことの発端は今日のミズキ先生の発言からだった。



 ──1時間前・ミズキ特別教室──



「どうやらねえ。みんなに必要なのは他の何でもない、戦闘経験だと思うんだ。だからさ。いつもの訓練に加えて、対人訓練を追加しようと思う。やり方は簡単で、生徒同士で一対一で戦う。これだけだよ。武器を使ってもいい。能力を使ってもいい。求めるのは本物の戦闘のような体験、そしてそれを通じて培われる経験だ。まあ……訓練の時間を増やすわけじゃなくて、この分他の訓練の時間をカットするから安心して。これもまた週一くらいの頻度でやるよ。はい。質問ある人ー。」


ミズキ先生の話に反応して、はーい。という声が一つ上がった。この声は……ハナか。俺は彼女に話しかけてみたいとも思っているが、いつも向こうから避けられてしまう。やっぱり信頼関係を結ぶのは難しいってことだな。あ、でも昨日の『昇化』を教えた時は、俺の話を聞いてくれてたっけ。この調子でみんなとも仲を深められるといいなあ。


「武器や能力を使うって……もし怪我とかしたらどうするんですか?もし刃物が深々と刺さったりしたら……私たち死んじゃうかもですよ?私はそれは嫌です。」


ごもっとも。ミズキ先生が求めているのは「限りなく実践に近い戦闘訓練」だ。武器を使っても良いということは怪我人も出てくるはずだ。


「その時は私の持っている回復薬で治す。そう。これは傷つけあうことが前提となっている危険な訓練なんだ。でもみんなが強くなるためにはこれが最善なんだ。正直心が苦しくなるけど、みんな……付き合ってくれる?」


誰も何も言わなかった。だけれども、その時すでにみんなの心は揺るぎなくなっていて、誰もが力強く頷いていた。そして、今に至る。




やることは本当に単純だった。ミズキ先生からの命令は「戦え」のみ。そして今何も言わずにただこの様子を傍観しているのみということは、これでいいのだろう。


「ふっ!」


「うぐっ!……参りました。」


勝負はマオの勝利で幕を閉じた。俺はそれを見ていたが、マオのナイフ捌きは凄まじいものだと言えた。俺はナイフの扱いに長けているわけではないか、詳しい技術のことはよくわからない。だとしても、隙のない動き、無駄のない体の使い方。その全てが、何か只者ではないということを裏付けているようだった。


「おっけー。お疲れ様。これで全員戦い終えたね。じゃあ今日はこれでおしまい。しっかり体は休めとくんだよー。じゃ、頃合いを見て帰ってね。」


俺は今日、チハヤと戦った。別に「チハヤが単体での戦闘能力が低いから」ではない。くじでこうなった。よくない制度だなと思いつつも、さまざまな人とランダムに戦うためにはこれが一番公正だと思う。とは言っても、チハヤの体術も前先生と戦ってた時よりも良くなっていたような……このままだと逆に追い越されちゃうかもなあ。



 ──進路相談室3──



「まあねえ。体が強くなる感じって結構感覚的なところがあるからさ。時間かけて数多くやっていくしかないよね。実際俺も『昇化』ができるわけじゃないし。」


「うーん……だとしてもなあ。あと少しだと思うんだけど……私、能力を使う時にはいつも魔力の流れを感じながら使うからさ、魔力の操作についてはできると思うんだけれども……それを体に伝えることが難しいんだよね。」


うーんと首を傾げながらマオが俺に相談する。俺は嬉しかった。仲間が俺に相談してくれている。それはつまり、俺を信頼してくれているということだ。


「へえ。そうなんだ。でも、そこまでできてるのなら、もうすぐなんじゃないか?感覚ってのはなあ、いっぱい反復練習して体に染み込ませたら、あとは寝て起きれば大体はできるようになってるはずだ。そうだ、他のコツもあるからそれも教えてやるよ。」


正直言って、心苦しく感じてきた。俺はそもそも嘘をつくのが苦手だ。人を騙すと、胸の中の奥の方がひやっとして、つい泣きたくなってしまう。だけれども、俺がもう後戻りできないことなんてわかっている。一度ついた嘘は貫き通せ。前言撤回なんてせず、ただひたすらに進み続けろ。そうすれば仲間は寄ってきてくれる。馬鹿。弱音を吐くな!強くあれ!俺は今、みんなの中心なんだぞ!!


この葛藤は誰にも伝わらない。そんなことは心のどこかでわかりきっていた。だけれども、なぜかはわからないが、本当の気持ちを出せないことに少しだけがっかりしていた。



 ──30分後──



「せっかくだし、みんなで土曜日にどこか出かけない?」


もうみんな帰ろうというムードになった時、そう言い出したのはチハヤだった。


「ほら。えーっと……私の能力ってさ、他人を強化するってものなんだけど、その人との絆が強ければ強いほど、より強くすることができるんだ。だからこういう時からみんなと仲を深めておきたいなーってのもあるし、それにさ、この特別教室は一応部活扱いなんだよ?部活仲間と遊びに行くなんて、高校生っぽくて楽しそうじゃない?」


俺たちに断る理由なんてなかった。そういえば、みんな訓練で忙しかったってのもあるけど、特別教室に入ってきてからこれまでで俺たちが集まって遊ぶ事なんて一度もなかった。俺も含めて、みんなそれに賛同した。そうなると話は早い。このことはもう確定したと言っていいだろう。俺たちは楽しみに感じていた。一応これでも俺たちは高校生になりたての新入生だ。こういうイベントに目を輝かせないはずがなかった。

補足: マオのナイフ捌きはかなり極まってます。マオの高校の全学年合わせても一番使えると思われます。


補足2: 『昇化』と『身体強化』の原理はかなり似ていて、どちらも「自身の体に影響を与える」という点が同じです。よって今のところショウが一番修得に近いとされています。

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