焔風の支配者・二十三
『ちゃんとこいつこき使ってやりなよ?』
望みを叶えるためにどうするか、それに対してミズキはこう言っていた。この言葉はもしかしたら俺に対しても言っていたのかもな。誰だって何らかの望みを持って生きている。それが生き甲斐であれど、目標であれど関係ない。ただこのやり方は俺はあまり好きじゃない、好きじゃない、が、腹が立つほど有効だ。
懐かしい、俺は昔っから能力が戦闘向きで、尚且つセンスもあったから何でも自分一人でできると思っていたな。周り全員が俺を必要とし、俺はそれを助ける事で満足する。そうなっていた。
でももうそれは過去の話だ。俺はもうあの時のクソ野郎じゃない。俺はもう子供じゃないし、ハナビに対して制限ばかりする奴でもない、そして昨日の俺は昨日捨てた。今の俺はもう違う。
誰でも使う、俺はもう一番じゃねえ。俺の望みの前には俺とは格の違う奴が待ち構えている。だからこそ俺が自分の理想を叶えるためにはこうやって他人を、俺を、全てを犠牲にするしかない。きっとテイラーはそう思ったんだろう。
俺は姑息な奴、特に他人や他の力を借りる奴が大嫌いだった。そんな奴が自身の力のみで成り上がってきた真の努力家と同じ基準で同じ結果を得て良いわけがないと思っていたからだ。戦闘において勝利という事実は変わらない。ただ当たり前だが複数人で敵をリンチしてる奴よりも正々堂々と一対一で戦っている方が素晴らしい。
こんな事考えてるから俺はいつまで経っても戦闘狂なんだろうな。今はもう、あの時──日本山を襲撃した時よりも戦いを楽しんでいないが、今の方がよっぽど強い自分になっている。
………
うーむ、やっぱまだイライラするな。理性としてわかっても本能が邪魔する感じもまた腹が立つ。そう考えると俺はまだ癇癪を起こす子供なのかもな……
──10月3日 午前7時・テイラー家──
正直気が気で眠れないかと思っていたが、疲労もあったのか一瞬で眠りに落ちた。そして迎えた今日、室内ではあるがある程度のストレッチと軽い運動をしてから合流した。その後適当な朝食を食べ、準備は万端だ。
「うし、準備はとっくにできてる。チハヤ、今もあいつの場所はわかるか?」
「はい!あそこから動いていません!」
「よし、んじゃあ作戦は昨日の通りに、さっさと行こ──」
何の前触れもなく起きるからこそ、災害は危険視されるのだ。なぜなら前触れがあり、準備することができたなら、人はある程度耐え忍ぶことができる。今のテイラーがまさにそれだ。テイラーがいなければこの町は今頃あの灰に埋もれていたところだろう。
突如として鳴り響いた轟音、世界が揺れ、机の上から皿が何枚か落ちて割れる。窓の外を見ると、どこか既視感のある光景が目に入る。
「うっそだろおい、こんな事も起こんのか!?」
「私だって初耳!ミズキ、これは何が起こった?」
「いや、私は学者じゃないし詳しい論理とかはわからないけど、今そんなのは要らないでしょ。大事なのは『富士山がもう一度噴火した』っていう事実だけなわけだし」
ここ数日で落石は収まった。山肌のアレも止まったままだし、町の火もほぼほぼ鎮火された。だが今回ので全部が台無しだ!
「何で今こうなんだよクソがァァァ……!」
忘れていたものを思い出すかのように再び赫赫と光だした富士山はいつ見ても気味が悪い。あの地獄がまた来ると思うと本当に嫌な気分で思わず頭を手でクシャクシャと掻き毟る。はぁ、こんな事してても何にもならないか……
「どうする?今日は諦めて、また収まってきた頃合いに──するわけないか」
「あぁ、正直あんな力持ってるなら、とも思うが、やっぱ子供は出歩いてちゃダメだろ」
「そう…………あのさ、私だってずっと考えていることがあるの。もしもね、もしも……今回のこの一連の騒動でヒバナが死んじゃったらさ、私はもうどうすればいいかわからないよ……もう何回も傷を負ってる。毎度治してもらっているとはいえ、それでも耐えられないものはあるから」
「あ゛?いきなりそんな内気になってどうした?この程度の噴火、俺たちにとっちゃ脅威でもないだろ」
「ごめん急に。ただそれだけ、噴火の恐ろしさは私が一番知ってると思うから」
「まだ風壁の効力は残っている。それに数日前のやつよりかはまだ控えめだろ。俺とてそんなつまんねぇ死に方するつもりもねえよ」
(それに、きっとアレも使っていいだろう)
今度はしっかりと上着を羽織る。この上着の内ポケットには、かつて俺がミズキから報酬の前払いとしてもらっていた能力武器がある。武器をハナビに向けるな?確かにな。だがこれがなきゃ俺は今度こそ死ぬかもしれない。
ミズキが新しいワープホールを開通させる。昨日のワープホールは待ち伏せされている可能性もあるし、あえての新規作成だ。
「さて、話し合いで解決できたらいいんだが……」
とりあえずは行くっきゃねえな。
ちょっとヒバナの理由として弱かったですかね?しかしそういう世の中の理不尽を何よりも嫌うのがヒバナであるのです。
この世から理不尽がなくなれば、ハナビに危険は及ばないのだから。
あと火山が複数回に分かれて噴火することは普通によくあることです。




