第四話 犬嫌い克服?
初めて、ケリーが四本足で立っているのを見て、私と、理恵、それに、お母さんまでもが、喜んだ。私にいたっては、嬉しさのあまり、その場で泣きくずれてしまった。 「聖良! やったね! 長い間頑張ってきたかいがあったね」
「うん…… ありがとう理恵。理恵があの時から手伝ってくれたおかげだよ。理恵のおかげで、私は、挫ける事なく、今までやってこれたから。ケリーも、よく頑張ったね。偉いよ。」と、私は、ケリーを抱きしめた。
ケリーは、私達に、見てと、言わんばかりに、今度は、ゆっくり、おぼつかない足取りだが、一歩づつ一歩づつ歩いてみせたが、すぐに、転んでしまった。
「もう。ケリーったら、無理をしちゃ駄目だよ。今度は、しっかり歩けるように頑張ろうね」と、私は、ケリーに声をかけた。
それから、私達は、ケリーの歩行練習に時間を費やした。毎日、少しづつ 餌などを使ってゆっくり誘導したりを繰り返し行なった。
その結果、走れるとこまでは無理だったが、短距離なら歩けるようにはなった。
「聖良、これからは、散歩が出来るね。まぁ、ケリーの事を考えて、近所までだけど、ケリーも家ね庭ばっかり歩くより、違う景色を見ながら歩くと、ケリーも喜ぶと思うよ」
「そうよね。理恵! ありがとう。散歩してみるよ。っても、散歩するって事は、野良犬とかに会うかもしれないんよね…… 大丈夫かなぁ。私、まだ、ケリー以外の犬は怖いのよね」
「何言ってんのよ。ケリーに抱きついたり、頭撫でたりしてるじゃない。他の犬だって一緒よ。ケリーが大丈夫なんだから平気平気! 後は、あんたの気の持ちようだってば。あんたが、怖くないって思えばね」
「もぅ、理恵ったら、人事みたいに…… いいもん、野良犬が、いないようなところに散歩するから」
「あ~あ、これじゃ、いつまでもたってもダメだね。もっと、自分から犬を好きになりなさい」と、理恵のいつものくどくどと長い説教が続いた。「いい事、思い付いたわ。聖良、今度の日曜日、私に付き合いなさい」
「別にいいけど…… 何? 理恵、何かたくらんでるでしょ?」
「別に、企んでなんかないわよ」と、理恵は、不適な笑いを浮かべながら私に言った。
日曜日、私は、寝不足だった。なぜなら、今日何処に行くのか、理恵が全く教えてくれなかったからだ。学校でも、
「日曜日までのお楽しみだよ」としか、理恵は答えてくれなかった。
日曜日の事を考えてしまえばしまうほど、気になってしまい、昨晩はあまり眠れなかった。
私は、眠い目をこすりながら、顔を洗い、髪の毛を二つ束を作ってリボンで結んだ。
理恵との待ち合わせ場所に着いた時には、もう理恵の姿があった。
「聖良! こっち、こっち! 待ってたよぅ~。ていうか、15分も遅刻だよ。遅刻した罰と言うわけでパフェおごってね」「何でよ。15分くらいじゃん。てか、理恵が、何処に行くのか教えてくれないのが、悪いのよ。気になって仕方なかったんだから。そのおかげで寝不足よ。寝不足は、お肌の天敵なのにぃ~!」
「はいはい。ブツブツ言わないの。今日、行くところは、前に言った通り、ケリーだけじゃなく、他の犬も好きになってもらうようにって事で、この近くにドッグフェスティバルが開催されてるから聖良を連れて行こうと思ってた訳なのよ」
「えっ! 本当に行くの? 理恵?」
「もちろんじゃない! こんないいチャンスは、滅多にないよ。これで、聖良の犬嫌いが治ってくれたらいいんだけどね」「どうだろうね。大丈夫かな? 噛んだりされないよね?」
「それはないわよ。どの犬もちゃんとしつけされた子ばっかしだから。おとなしい子ばっかりだよ。聖良は、本当心配性だよね」と、理恵と私は話をしながら歩いていた。 フェスティバルの会場に着いた私達は、犬の多さにびっくりした。ざっと150匹ぐらいはいるだろうか、見渡す限り犬だらけだった。
「理恵! 本当に大丈夫? 私、こんなにいるとは思わなかったよ」
「確かに、多いけど…… よく見たら可愛い子ばっかりじゃない。聖良、もう少し近くに行ってみよ。ちなみに、気に入った子がいたら触れるんだって!」
「ふぅ~ん。って、私は、別にいいよ。ここから見てるよ」
「もう、そんなんじゃ、克服なんか出来ないよ」と、理恵に言われ、手引っ張られながら、近くまで連れて行かれた。
「理恵の意地悪。無理矢理連れて行かなくてもいいじゃない」と、私は、半ベソをかいた。
「そこ! 泣かない! 誰の為に来てるて思ってんの? 聖良の為なんだから。あんたが、ビクビクしてたら、犬達にバカにされちゃうよ」
「だって…… こんなにいたら…… どうしよう? 理恵!」
「私も、一緒にいるんだから大丈夫よ。何かあったら助けてあげる。まぁ、何もないと思うけどね。初めは、小型犬のとこに行ってみようか」
今日、一日、犬嫌いな私は、親友の強引な誘いのおかげで、大変だった。無理矢理に触らせたり、抱いたりして……
以前に比べると犬に対して拒否をしなくなったかなって気がするんだけど、理恵が言うには「まだまだ、甘い」って言われる始末。
本当に犬嫌いが治るのかなっと思いながら家路に着いた。