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ケリー  作者: 古山 瞬
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第二話 名前はケリー

 白い犬の事故から一週間後、私は、学校から急いで家に帰った。なぜなら、今日、私が引き取ると言ったあの子を神岸動物病院へ迎えに行く日だからだ。家に着くと母が 「聖良。病院から電話があったわよ。でも、本当に面倒見れるの? 犬嫌いのあなたが?」と母が念を押すように言った。 「大丈夫だよ。犬は怖いけど、あの子だけはほっとけないもん。私が、引き取らないとあの子一人で可哀想じゃない」と母に言った。


 そう、私は、犬が嫌いなのだ。まだ、私が、四歳の時に、近所の公園で遊んでいたら、何故か、野良犬に追いかけられて噛まれそうになった事がある。それ以来、それがトラウマになって、自然と犬を避けるようになった。


 私と母は、はやる気持ちを押さえて病院へ向かった。私は、あの子は元気になったんだろうか? 私の事を覚えているだろうか? と不安を抱きつつ向かっていた。

 病院に着いてすぐに、神岸先生に呼ばれると、あの子の元へ案内された。あの子も私たちに気付いたのか、尻尾を振って喜んでくれた。

「順調に回復してます。ご飯も、しっかり食べてますので、その点では心配はいらないと思います。ですが、やはり後ろ足の二本が麻痺のせいで動かない状態ですので、あまり無理をさせないようにお願いしますね」と神岸先生に言われて、私は、大きく頷いて、白い犬の元へ駆け寄った。

「元気そうでよかった。心配してたんだよ」と声をかけて頭を撫でてあげた。私は、気になっている事があった。それは、この子の種類が何かと言うことだ。私は、犬嫌いな為、犬の種類なんて興味がなかった。だが、今日から家族になるこの子はどんな種類なのかというのは知っておきたかった。

「神岸先生。この子の種類って何なんですか?」 「この子はですね、ラブラドールレトリバーと言う種類ですよ。大型犬なので成犬になれば大きくなります」と言って先生は、連れて帰る為に必要なゲージを用意してくれた。手渡されたゲージに白い犬を抱えて入れ、病院を後にした。


 家に帰って、これからどうしようか? と考えていると、母が、突然

「そう言えば、聖良? 病院で、この子の頭撫でてたけど、平気だったの? 犬嫌いのあなたが、平然と頭を撫でてるからびっくりしたわよ」と言った。

「本当は、怖かったんだけど、この子は私が、助けてあげるんだって思ったら自然と触れたの。でも、この子以外はやっぱり怖いよ。今日、学校から帰ってる時にも何匹か見たけど近付けなかったし。だから、この子は特別だよ。だって今日から、私の妹みたいな存在なんだから」と私は、白い犬の方を見て言った。 そう、私は、一人っ子だった為、家族が増えるのは正直うれしかった。 「そうそう、この子の名前なんだけど、私が好きな女優のケリーって人がいるの。だから、ケリーって名前にしたいんだけど、いいかな?」

「ケリーかぁ。可愛らしい名前じゃないの。そうね、じゃ、ケリーにしましょう」と母も納得してくれた。

「今日から、あなたは、ケリーって名前よ。改めてよろしくね。ケリー」と言って、私は、ケリーの頭を何度も撫でた。


 次の日、私は、学校で 部活仲間で仲のいい間宮理恵にケリーの事を話した。理恵とは、中学の時からの親友で、私が、犬嫌いだと言う事は、知っている。理恵は、私からの唐突な発表に驚いて 「ちょっと、聖良。どういう心境よ。あんたは、犬に近付けもしないし、触れないじゃん。なのに、あんたが、犬を飼っただなんて…… 今日は、雨が降るかもね」と、理恵が言った。私は、理恵に事情を話した。 「なるほどねぇ。さすがに、事故を目撃しちゃったらほっとけないわよね。しかし、犬嫌いの聖良がねぇ」

「私だって、最初は怖かったのよ。でも、ケリーが事故にあって苦しんでのに、犬嫌いだからってほっとける訳ないじゃない。今でも、犬は嫌いだよ。でも、ケリーだけは私が、世話をして、いつか四本足でまた、歩かせてあげたいんだ」と、私は、ケリーが四本足で歩いてる姿を想像しながら言った。すると理恵が、苦笑しながら私を見て 「聖良が、幸せそうな顔して、犬の話をするなんてねぇ。本当に、びっくりよ」

「もう、理恵ったら、私は、真面目に話してるのに」と、頬を膨らませた。理恵は、ごめん、ごめんと仕草をしながら、 「その子は、後ろ足が、麻痺してるんだよね。リハビリとかするんでしょ? リハビリの仕方とか知ってるの?」

「一応、病院で、リハビリの事は聞いてるよ。今日も、帰ったらするの」

この日から、ケリーの為の長い長いリハビリが始まった。

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