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なりんの援護くん  作者: なりた
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第6話 六月の安穏時空

援護くんを迎える食事会での再結集を契機として

澤菜家は絆を深めた。長女穏のんは祖父に手土産を持参し

次女凜ことなりんの元には父からの書籍が届き

家族間に協力と贈り物が行き交う。

家族の穏やかな時間は新展開への序章だろうか

、というお話になってるはず!?

 第6話 6月の安穏時空


 のんの引っ越しは、その週のうちに完了した。

下校した凜が家に帰り着くと丁度家の前に停まっていた軽トラに誰かが乗り込むところで、

穏と母が見送りに出ていた。

 穏のために1日使って梱包・運び出しから運転・積み下ろしまで手伝ってくれた青年を

凜も遠く目に少しだけ見かけた。

 援護くんよりもずっと背が高くて、たぶん援護くんよりずっと若い。穏と同じ位か?凜よりは年上なのは確実だが。

眼があったらしい。笑顔と会釈で軽く挨拶してくるので、凜も曖昧に会釈を返した。

 そうしてトラックが走りだすと、

「お帰り、凜。それじゃ母さん出るわね。」

 母はそう言って、そのまま出勤していった。

「行ってらっしゃい。」

 トラックに次いで母を見送る姉妹。

「お姉ちゃん、誰?」

「新しく見つけたバイト先の、アユミくん。」

「前から知り合いなの?」

「そんなような、そうでもないようなねー。」

 見つけた早々のバイト先でまだそんなあやふやな関係で、そこまで手伝ってくれるんだあ。

ていうか、手伝わせるんだ?ウチののんのんったら。

 凜は姉の魔性っぷりに感心するやら呆れるやら。

 寝言のりゅうくんですらないのね、次々とまあ。            

 そもそも6年生の圭吾くんを1年生で

登下校送迎のナイトにし、20年近い歳月ののちに再会を望ませた?のも穏だ。

 べつにそれは援護くんがのんのんちゃんに恋ごころを抱いていたわけでもないようだが、

むしろそういうの抜きで男性たちが何かと手助けしてくれるなら、それはやはりモテているって事なのかも知れない?

 凜だって圭吾を援護くんにしているのだが、人間、自分のことは見えづらかったり、うっかり計算に入れ忘れるものらしい。

そう、援護くんがどうであれ、凜も殿方が放っておかないお年頃の乙女なのだ。

 凜がそんな未知の自分を自覚する機会は、

もうそろそろの事かもしれない。。

     

穏の荷物の中に、凜は気になるものを見かけた。

「お姉ちゃん、これ車椅子?」

「そうよ。フリマで安かったから買っちゃった。使えそうでしょ。」

 スリムで小ぶりなその車椅子は 澤菜家の廊下でも楽に通りそうだが、それにしてもスリムだ。

「これは本人が自分の腕で漕げないタイプ。

誰かに押してもらうしかないけど、お爺ちゃんもう漕ぐのは無理でしょ。」

「そうだね。いいかも。」

 なるほど。穏の力ではベッドからトイレまでお爺ちゃんを支えて歩くのは無理が見える。

 乗り降りだけを支えて、あとは車椅子ごと押すのならなんとかなるのかも。

 お姉ちゃん、目端めはしが利くよね。

「車椅子での介助の仕方は、今度圭吾くんに相談してみる。あたしはその前に部屋を完成させるから。」

「預かってる荷物、もう廊下に出しちゃっていい?」

「それちょっとタンマ。」

「んー、出す。」

 これは今日中に決着つけさせないと、

延々部屋を占拠されるな。断固拒否!

 結局その日は祖父の部屋と穏の部屋を行ったり来たりで、姉の部屋作りやゴミ出しやらを手伝って、

凜は姉の荷物を全て姉の部屋に収めさせる事に成功した。

 やはり凜は彼女の自己分析の通りに、出来すぎるやれ過ぎる子で、しかもよい子なのだ。


「りん、あれぁ車椅子か。」

 久しぶりに祖父が文章を口にする。

「そうよ。お姉ちゃんがお爺ちゃんに、って買ってきたの。」

 トイレへ向かう廊下で祖父を支えつつ、

凜が答える。

「そうか。」

 祖父はなにか考えているようだが、それ以上の文章は出なかった。

「こんど援護くんが来たら、使い方やあたし達の支え方も聞いてみるつもり。」

「おう。」

「だから使うのはそれからね。」

「おう。」

 凜は介助の合間に車椅子の画像を撮り、

SNSに転送した。

「援護くん お姉ちゃんがおじいちゃんに、て買った車椅子 今度乗り降りとか介助の仕方を教えて」

 そこまで送信して、部屋で今は小物の整理に勤しんでいる姉を警戒する。

 お姉ちゃんは確かまだ援護くんとのホットラインは持ってない筈よね?

 本の件は未だに気がかりだが、とにかく

援護くんに話しかけてしまいたかった。

 これで、どう出るかのバトンは今は援護くんの側だ。

「おう。」

 祖父の合図が聞こえたので戸を開け、おしぼりを渡す。

「りん、圭吾ァ次いつ来んだ?」

「明後日だね。」

「おう。そうか。」

 それきりまた黙る祖父。

 おじいちゃんも車椅子早く使いたいのかな。

 祖父を支えてベッドに戻り、個室と水回りの掃除手入れを手早く済ませて手を洗い、

凜は読書に戻った。

 父が手配してくれた、援護くんも読んだヤングケアラーについての本。

 通販サイトから届いた際、父が選んで贈ってくれた本が数冊同梱されていた。  

 福祉や介護に関わる著書に、介護士の問題集まで。

これはもしや,お薦め関連商品の欄をまるごと買い足したのか?

やや大雑把かもだけど、援護くんと生きていきたいと言った私の言葉を

お父さんなりに真剣に聞いてくれてたんだろうね。

 素直に感動したぶん、やや心配にもなる。

「理解ある父」、を頑張り過ぎじゃないか?

嬉しいけど、無理すんなよ?ね。お父さん。


のんの持参した車いすは我が家にある物がモデル

祖母のために購入し父も座っておりました。

バザーで買えるかは定かではありません。

次回第七話「唐突な別天地」

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