第18話 夏休みの残り
フェスをやり遂げた一方 歩の入院も、それに伴うベリィの臨休も続く中
なりん達の夏休みは宿題の残りに後夜祭への招待の準備にとまだまだ忙しい。
援護くんともまた会えないでいるのだが、さて。
というお話。
第19話 夏休みの残り
それからしばらくは、なりんもこりんも
午前中は自宅で溜まっていた夏休みの宿題の日割り日課を必死で消化し、
午後は臨休の続くベリィに集まって、アイドルカフェでの後夜祭へのゲスト参加の準備やブリーフィング、
アイドルカフェとリモートで繋げたディスカッションなどで過ごした。
ベリィの留守は穏が昼夜通して預かっており、店内の管理も打ち合わせも一時任せられている。
ベリ子は一旦生活を昼型に切り替えて、日中は歩の入院している病院に通っている。
「歩くんのお母様も看護師さんなんじゃなかったっけ?」
「本職が激務で、歩くんの看護まで手が回らないらしいわ。」
なりんも祖父のいる施設に母と交代で見舞いに行く一方で、援護くんにも歩にも会えないままでいた。
ー歩くん ご容体いかがですか
ー援護くん お疲れ様 元気?
SNSにメッセージを入れてみる。
歩からは返信はなく、代わりに援護くんから
ーシマはおとなしく入院してます。
スマホはベリ子さんが預かっています。
女性陣のお見舞いがよくかち合って大変なので
病院内で衝突が起きないようにベリ子さんが仕切ってます
と、事情と状況の説明があった。
「喰い扶持稼げない状態でモテてりゃ、そりゃマジでモテてるってことだよな。」
こりんが分かったようなことを言う。なりんとこりんも小娘とて女性には違いないので、
ベリ子さんの判断でお見舞いは一旦ご遠慮願われている。
そうしないと、歩ガールズがやっかんでうるさいらしい。
「彼女さんたち同士も仲いいんじゃなかったの?」
「こういう時に出し抜いておきたいものなのよ。」
穏が言うと生々しい。
援護くんは男性なのでお見舞いに行けてはいるが、
そもそも援護くんも普段は本職の介護の勤務をとても詰めるたちなので、頻繁に来れるわけでもないようだ。
「でもさ キャンプフェスには一人も来なかったね、彼女さんたち。」
「普段からベリィにも入れないでいるようよ。
ここでは裏方で忙しいから絶対来るな、来たら絶交な、て歩くんに厳命されててね。
彼女さん達だって不利にはなりたくないから、ただのファンな子以外は店にもイベントにも来ないわよ。みんなガチ。」
「そんなことまで分かるの?お姉ちゃん」
「一度あたしに関係問い詰めに待ち伏せかました子たちがいたからね。
その時のやりとりでだいたいのことは読めたわ。」
読めた、って怖っわ。
この夏でお姉ちゃんとかなり仲良くなれてた気がしてたんだけど、やっぱ怖いわ。ムリ。
…えっ 待って、じゃあ、歩くんにマジ恋したひとほどベリィには来なくなるの?
いや、恋で釣ってたらそれこそお店がヘンな方向むいちゃうか。
歩くんも歩くんなりに音楽や経営にはけじめつけてて、決してただ恋愛にだらしなくはない、ってことなのかなあ。
きっとあれだな。恋愛の感覚自体、彼氏彼女というよりは、昭和の言葉でいうところのプレイボーイとかガールフレンドとかであって、
歩くんにとってはまだ誰も本命ではない、つまりステディ?な関係ではないんだな?そして女性陣もそこは納得してて、
今は本命・本カノの座を皆で狙って、競って?いる感じ?
なりんは少女漫画や雑誌で見かけたありったけの知識や言葉を歩のありようにあてはめてみた。
…割りといい線いってるのではないだろうか。
SNSに裕人からもコメントが上がった。
ー島辺さんお見舞い申し上げます
ー援護さん、お疲れ様です!
お陰で文化祭に間に合いそうです。
ぜひ見に来てください!
ーこりんちゃん!元気ですか!僕は元気です!
ーなりんちゃん、また手伝ってくれますか?
ーなりんちゃん、会ってほしい子がいます
(…え?)
ー援護さん!
裕人が書き込む。
なりんへの2つめのメッセージは、
裕人ではなく、援護くんからのものだ。
本作品「なりんの援護くん」も残すところあと1話。(番外も含めたら1.5話)
ツイッター(今はX)で拝見した、「10万字あればだいたい一冊」という目安の情報を得て
「じゃあひとまず10万文字ほどの作品を書いてみようか」と書き始めてから
ちょっと欲が出て書き足した要素が予定よりも大きく字数を増やして(歩やフェスね)、
12万文字を超えたあたりで
(これもう削りようも絞りようも無いな、一旦この辺りで節目つけるか)と
このかたちでの一旦終結となりました。
以降のお話は今までに書き溜めてるプロットがイケそうなところまで煮詰まったら、
来年にでも改めて書き始められたらいいですね。
なにはともあれ ヒロインなりんちゃんのモデル・本作品のミューズである川名凜さんの
二十歳のお誕生日にね。次回の最終回をタイミング合わせられそうです。
次回第20話「援護くんのもとへ」。