たいようのした
「おーい、こっちだぞーおいでー」
「はーい!」
きょうはかぞくみんなでぴくにっくにきました。
その、のはらにはほかのひとたちもたくさんいて、みんなえがおです。
はしるとかぜをかんじ、とまるとたいようのひかりをかんじ
わたしはしあわせをかんじました。
「おい、ふふふ、どうしたんだ?」
「さんどいっちだぁ」
「あら、きらい?」
「ううん、だいすき! ごちそうだぁ!」
「はははは!」
「うふふふ!」
わたしはうれしくてくるくるとまわり、うたをうたいました。
しあわせです。しあわせです。
でもやがて、かぞくも、ほかのひとも、わらい、たちあがり
それでどこかへいってしまいます。
いっしょにくるかい? そういわれ、わたしはてをのばそうとするのですが
でも、いつもなにもつかめないのです。
なにも、もっていません。
あれがどんなうただったかもおもいだせません。
だってこれはゆめで、わたしのなかにそんな、かこはないのですから。
「起きろ、おら!」
たんこうしごとのあさははやいです。
と、いっても、ねとまりしているところもたんこうないで、くらく
いまがよるなのか、ひるなのか、あさなのかわかりません。
けりおこされたそのときが、しごとのはじまり。あさなのです。
せいかくには、ふまれたあさ。
たんこうのあなのひとつにつくられたねどこに
さぎょういんは、ぎゅうぎゅうにしきつめられ、ねむりにつくのです。
それをかんとくさまがうえからふんであるくのです。
そうやってめざめたあと、わたしたちはねどこからでて、しょくどうへ。
もちろん、それもあなのひとつです。
まめのすーぷをすすり、そしてさぎょうをかいしするのです。
しょくじはいちにちに、にど。あさとひるだけです。よるはありません。
ねるだけだからひつようないだろとそういわれます。
くちごたえはゆるされません。なぐられます。
はなしかけるときはかならずけいごで。でもけっきょく、なぐられます。
そのあとで、ようけんをのべ、そしてまたなぐられるのです。
えいようがたらず、いしきがもうろうとし、たおれてしまうこともあります。
そんなときはどごうとともに、けられます。
するとふしぎなことに、またたちあがり、さぎょうへもどれるのです。
でもとてもつらくて、なぜかわらいがこみあげてきます。
けらけらと、けらけらと。でもこらえなければなりません。なぐられるからです。
ここでのせいかつはとてもつらいです。
いちにちのおわりはほっとします。
ねどこにはいり、からだをまるめると、ははやちちをおもいだします。
そうするとしぜんとなみだがほほをながれおちます。
みみをすますと、どこからか、かならずきこえてくるすすりなくこえ。
それがたにんのものか、じぶんのものか、ときどきわからなくなるのです。
つらく、つらく、つらいせいかつです。
そとは、はるでしょうか、なつでしょうか。それもわかりません。
そとを、たいようをおがみたくて、にげようとしたものはなんにんもいます。
でも、みんなしにました。
じっさい、めにしたことはありません。
たんこうのなかまでひびく、じゅうせいと、かれらのわらいごえと
てをたたくおとがみんな、ころされたのだとおしえてくるのです。
にげなくてもしんでしまいます。
しぬまえはひかりのたまのようなものがみえるそうです。
それはおひさまのようにあたたかくて、さいごのときは、みな、あたたかいなぁ。
そうつぶやくのです。
わたしはそのはなしをきくたびに、こきょうをおもいだします。
あーたーたーかーな~ひぃのしたー
こーとーりーのまねをしぃーうでのばーす
かぜふけばーそーらーにちかづー
「誰だ! 歌は禁止だ! お前か! お前かぁ!」
いつのまにか、こえにだしていたようです。
あのゆめのうたでしょうか。それともだれかがみたゆめでしょうか。
いつか、たいようのしたで、おもいっきりうたいたいとねがった、だれかの。
かんとくさまがとてもおこっています。
でもかんとくさま、あなたがいまふみつけているそのおとこは
けさからずっとここにいる、したいとなったものです。
それがなんだかおかしくておかしくてたまらず、わたしはわらいだしたくなりました。
でもがまんします。
なぐられるからではありません。
このままみんなとうたをうたいたいからです。
そう、みんなです。
いつのまにか、だいがっしょうになっていました。
「やめんか! ゴミ共! 歌は禁止だ! 忘れたのか馬鹿者ども!
偉大なる指導者様がお決めになった事だぞ! この! この!」
うたはきんし、かんじはきんし、わたしたちは
ほかにもいろんなことをきんしされました。
れつあくなかんきょうで、しこうりょくはていかし
わたしは、わたしたちはかんがえることもできませんでした。
「やめろ! はなせ! やめろやめろ! おい――」
でも、今はちがいます。
みんなで手をのばせばよかったんだ。
もう踏まれる必要はないんだ。
自分たちで立ち上がるんだ。
今が夜明けの時だとわかるのだから。