今となっては、遠吠え
当たり前だと思ってたんだ。君が隣に居るのは当然だと。
季節がひっくり返ろうが、月日が捲られようが、ずっとずっと二人は一緒であるはずだった。お揃いのキーホルダーのように、二つで一対を成すかたちはまさに、僕たちと同じだよな。
あの過去を。疑いもしなかった。いや、疑いようがなかった。君が居なくなるなんて、フィクションじみてたから。
もっともっと君の話を聞きたかった。僕の知っていることと言えば、君の偽りの名前と姿だけ。
多分君は、わざとそうしたのだろう。自分が深い人間になってはいけないと。もうすぐ居なくなるからと。
けど、僕はずっと前から、君が好きになってたから意味ないんだ。とっくに引き際なんて曖昧になってたよ。
だったら言っとけば、良かったんだ。言葉選びに慎重になりすぎて、臆病になってた。
春から夏になるまでに言えたら良かった。
君の白い手を取って。
ただ「好きだ」と一言。恥も格好も捨てて、どこまでも愛を吠えたてていれば。
少しは、季節も鬱陶しがりながら揺らいで霞み。
君も表面は仕方なそうに.....本当は嬉しそうで、きっと君のことだからこう言う。
『私は大がつく大好きの方だよ』と。