春先帰り
もう一度寒くなると、
聞こえた帰りのバスは、
一人の部屋に向かう
ゴンドラみたい。
蕾のある街路樹や、
終わらない道路工事、
春先の風景が
ゆっくり流れてゆく。
途中で降りてみたら、
知らない通りを抜け、
新しい気持ちに、
出逢えるのかな。
それなのに居眠りして、
ほんとうの気持ちを
今日よりも遠くへ、
見送るばかり。
隣の人はずっと、
バスが走る間、
春らしい装いで、
パズドラに夢中。
時代がめぐる間に、
流行りのゲームの様に、
いつかほんとの気持ちも
変わってゆくのかな。
もう一度寒くなると、
誰かに言われなくても、
わかる、わかっている、
時が冷たいから。
もうこれで寒くないと、
早く聞かせて欲しい。
できれば昔ながらの
春一番で。
バス停に着いたら、
ありがとうを言って、
小銭で払って降りる。
青空を見上げ。
世界の平和のために、
何かできるわけじゃない。
今日もバスで帰った。
そう、帰っただけ。