メアリー・スミスの日記からの抜粋 声劇台本
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舞台 架空のイギリスっぽい何か、社交界
登場人物
アリス・グロブナ 21歳 女
メアリー・スミス 21歳 女
登場人物表
アリス♀:
メアリー♀:
メアリー(ナレーション)「あなたは少女でありレディ。そして全てを引きつける大輪の花。あなた様を永遠に残すために、今話しましょう。あなた様の物語を」
アリス「はー。今日もいい人がいなかったわ」
メアリー「そうですか。お疲れ様です」
アリス「もう!それ以外なにかないの?」
メアリー「むしろ、お手つきをされてない人がまだいらっしゃった事に驚きました」
アリス「あらー。そりゃ……そういえばどうだったかしら?」
メアリー「お手つきされた方くらい覚えててください。前もそれでトラブルがあったじゃないですか」
アリス「そんな事もあったわね。でもあの時は……」
メアリー「あの時は?」
アリス「何故か許してくれたわね?なんでだったかしら」
メアリー「……言いたくはないですが」
アリス「何?」
メアリー「なんでもないです。今日もお疲れ様でした」
アリス「そう。おやすみなさい」
メアリー「おやすみなさいませ」
メアリー(ナレーション)「貴族の笑顔の仮面をつけた戦い、社交界。誰も彼もが嘘をつくこの世界で、公爵夫人アリス・グロブナ様だけが正直でございました」
アリス「この間の伯爵の息子?は良かったわね。なかなか綺麗な顔で。でもやっぱり若い子はダメねー」
メアリー「そうですか」
アリス「男爵も良かったけど、やっぱり物足りないわー」
メアリー「そうですか」
アリス「もう!あなたはー。ちょっとはウィットに富んだ会話ってのが出来ないわけ?」
メアリー「私はあくまであなたの……そういえばなんなんでしょうね」
アリス「どういうこと?」
メアリー「貴女付きのメイドであり、しかし距離を置くことを許されない命令を下されている。……これは一体?」
アリス「……そうね。その真面目腐ったところは好きよ」
メアリー「ありがとうございます」
アリス「素直なところもね」
メアリー(ナレーション)「高貴な生まれの夫人でありながら、自由で楽しい事に忠実なあなた。それにふさわしい美しさ。そばにいられるだけで、幸せでございました」
アリス「このドレス、刺繍は可愛いけど、色がねー。ピンクはは流石にやりすぎたかしら?もっと落ち着いた色か大人っぽく……」
メアリー「お似合いだと思いますけどね」
アリス「流石に私も公爵夫人よ。もっと似合うのがあるじゃない?」
メアリー「はえ?」
アリス「何よ。珍しい顔ね」
メアリー「そんな自覚あったんですね」
アリス「ちょっと!あなたじゃなきゃ首にしてるところよ!」
メアリー「されないのはわかっておりますので」
アリス「さては前の会話気にしてる?」
メアリー「なんの事でしょう?」
アリス「……そんなたまじゃないのは分かってるわ。……とにかくドレスは変更お願い」
メアリー「かしこまりました」
メアリー(ナレーション)「奔放で自由な所もありつつ、妙に責任感もある方でした」
アリス「……ねえ、あの人は今日は?」
メアリー「ご主人様は今日も墓参りです」
アリス「そう……よくもまあ飽きないこと。それで仕事もこなしてるんだから流石よね」
メアリー「アリス様の夫でございますから」
アリス「どういう意味よ」
メアリー「実際、自分がアリス様に接せられない分自由を許すのですから、出来た方だと思います」
アリス「そんな事……いいわ。今日のドレスはワインレッドよ」
メアリー「その色はお嫌いでは?」
アリス「いいから!」
メアリー「分かりました」
メアリー(ナレーション)「アリス様は、ご主人様の2番目の妻でした。アリス様と年の離れたご主人様は、アリス様に自由を与えてはいました」
アリス「あー!もう!どうして似合わないの!?」
メアリー「どうしました?」
アリス「どうもこうもないわよ!この翡翠色のドレス!せっかく頼んだのに全然似合わない!」
メアリー「同じ緑なら若草色のが似合うって言ったじゃないですか」
アリス「だって!!」
メアリー「アリス様。無理に大人にならずとも、あなたは美しいのですから」
アリス「そんな事分かってるわよ!」
メアリー「ではなぜ、大人の色にこだわるのですか?」
アリス「それこそあなたが1番分かってるでしょ!?」
メアリー「分かっているからこそ聞くのです」
アリス「……もういいわ。休みなさい」
メアリー「分かりました。アリス様」
アリス「何よ」
メアリー「私たちが見たことすらない前の奥様なんて、どうでもいいじゃないですか」
アリス「あなたじゃなきゃ首にしてるところよ」
メアリー「しないのはわかっておりますので」
アリス「そうね」
メアリー(ナレーション)「アリス様は奔放で自由で、でも責任感があってそれでいて、一途な方でした」
メアリー「アリス様、……アリス様!?」
アリス「本当に、あなたが1番厄介よね」
メアリー「何をなさっているのです!?」
アリス「何って、生きる意味が終わったから。本当は凍死が1番綺麗に残るらしいけど、時間がかかりすぎちゃうじゃない?」
メアリー「まさか、ご主人様の後追いをする気ですか!?」
アリス「それ以外何があるの?」
メアリー「なんて事を!」
アリス「しょうがないじゃない!あの人は結局、前の妻を忘れてくれなかった!服装も!行動も!何もかも真似たのに!」
メアリー「アリス様」
アリス「メアリー知ってた?あの人はね、私と目を合わせてくれた事もなかったのよ。散々浮気されたくせに、自分が浮気するのが許せないのよ」
メアリー「アリス様」
アリス「ずっと努力したけど、もういいでしょ。今更何を思って生きれば」
メアリー「アリス様」
アリス「まあ、最後にあなたの言い分くらい聞いてあげる」
メアリー「あなた様は美しいのです」
アリス「何それ」
メアリー「外見だけではありません。あなたは、何をとっても美しい。そんなことに、ご主人様は関係ありません」
アリス「私を、全否定するつもり?」
メアリー「いいえ。全て肯定します。恋に努力するアリス様も美しいですが、私はわがままなのでもっとみたいのです」
アリス「……何を?」
メアリー「これから先も人生を歩まれ、どんなに歳をとっても美しいあなたがみたいのです」
アリス「歳を取れば醜くなるに決まってるじゃない」
メアリー「いいえ。あなた様は例外です」
アリス「良く根拠もなくそんなこと言えるわね」
メアリー「あなた様をずっと見てきたのだから、当然です」
アリス「意味がわからないけどそうね。あなたの珍しいわがままくらい。聞いてあげる」
メアリー「ありがとうございます」
アリス「メアリー」
メアリー「なんですか?」
アリス「あなただけは、私を見ててね」
メアリー「当然です」
メアリー(ナレーション)「そうして、私たちは生き続けました。年老いておばあちゃんになっても」
アリス「メアリー?何してるの」
メアリー「アリス様」
アリス「何よ」
メアリー「あなたはやっぱり。美しいです」