第7話 生存の資格
何気ない動作で近付いた後、不意に駆け出した。
そして包丁を突き出す。
オークが鉄パイプで叩き落とそうとしてきたので、分かりやすく猟銃を向ける。
それだけでオークの反撃の手が鈍った。
先ほど撃たれた痛みを連想したのだろう。
その隙に包丁をオークの顔面を狙って繰り出すも、負傷した腕を割り込ませることで防がれてしまった。
切っ先が前腕の皮膚を破って数センチほど刺さる。
それでも致命傷には程遠い。
すぐさま包丁を引き抜きながら退避した
背中を防風が掠める感触。
距離を取ることに必死で見えなかったが、おそらく鉄パイプが振り下ろされたらしい。
判断が一瞬でも遅ければ、強烈な殴打を食らう羽目になっていた。
冷や汗が流れる。
向き直るとオークは右腕の傷を気にしていた。
乱暴に刃を引き抜いたせいか、刺した箇所が大きく裂けている。
それなりの量の血が流れ出していた。
身体能力の高いオークでも、無視できない状態だろう。
オークが鉄パイプを掲げて突っ込んできた。
猟銃を向けて牽制を試みるも、少しも足を止める気配がない。
負傷は覚悟の上で、短期決戦に持ち込むつもりらしい。
最も避けたかった展開だった。
もはやどうしようもない。
こちらも覚悟を固めて、ただ死力を尽くして立ち向かうだけだ。
猟銃を捨てて、包丁を逆手に持ち替える。
その他位置でじっと待ち構えることにした。
間合いを詰めたオークが鉄パイプで殴りかかってくる。
斜め前に飛び込んで避けようとするが、左の膝裏に激烈な痛みを感じる。
まるで爆発が爆発したかのようだった。
鉄パイプを避け切れなかった。
どうなったか確かめる余裕もない。
転倒しながらオークの両足にしがみ付くと、不格好な体勢のまま滅多刺しにする。
オークは叫びながら引き剥がそうとしてきたが、気にせず刺しまくる。
骨や靭帯に引っかかっても無理やり切り裂いた。
両脚を潰されたオークが転ぶ。
それほぼと同時に、鉄パイプの一撃を受けて殴り飛ばされた。
揺れる視界の中で突き抜けるような激痛を感じる。
涙は自然と溢れてきて、歯も何本かぐらついていた。
きっと情けない顔だろうが気にしない。
とにもかくにも果敢にオークへと飛びかかる。
ここで尻込みすれば死ぬ。
ある種の強迫観念に背中を押されて行動していた。