第62話 ストレングスは激怒した
事情を聞いたストレングスが憤慨する。
客を殺すヒュージセンチピードに怒りを燃やし始めた。
殺意が熱気となって噴き上がっている。
目の前に立っているだけで汗を掻いてきた。
こちらの説明を真に受けたらしい。
若干の嘘と想像が含まれているが、それを否定するのは難しい。
実際、犠牲者の中にファミレスの客になる可能性があった人間が混ざっているかもしれない。
だから完全な出鱈目を言っているわけではなかった。
ストレングスがそのまま外に出て配達用バイクに乗って発進しようとしたので、なんとか引き止める。
どうやらさっそくヒュージセンチピードと戦う気らしい。
さすがは殺人鬼である。
やる気と行動力が凄まじい。
ただし、その展開は都合が悪いので、なんとか説得して話を続ける。
このままストレングスを中学校へ向かわせるわけにはいかなかった。
ヒュージセンチピードはとてつもない強さを誇る。
軍隊の兵器を導入してようやく勝てるレベルだ。
個人では敵う規模のモンスターではない。
さすがのストレングスでも、あの巨体が相手では厳しいのではないか。
だからもっと協力者を集めないといけない。
もっとも、普通の人間や中途半端な人間狩りを募っても意味がない。
すぐに叩き潰されて終わりだろう。
これから探すのは、優れた変容を経た殺人鬼だ。
一騎当千の狂人を集めることで、災害級のモンスターを捻じ伏せる。
今回のストレングスと同じ要領で仲間にしていくのだ。
そうすることでようやく殺し合うという選択肢が生まれる。
無論、リスクが高いのは分かっている。
これから殺人鬼と交渉を繰り返していくのだ。
ヒュージセンチピード戦の前に命を落とす可能性もあった。
そこまで想定した上で、やり遂げたいと考えている。
あの巨大ムカデを殺せたら、どれだけ楽しいのだろう。
まるで己が最強とばかりに暴れ狂う怪物に鉄槌を叩き落とすのだ。
さぞ痛快な気分になれるはずである。
変わり果てた世界で生き抜くには、避けては通れない道だと思う。
情けない逃亡は選ばない。
屍を築いて踏み越えながら進むしかないのだ。
やらねば、いつか死ぬ。
ここが正念場だった。
本音を交えてストレングスに伝える。
バイクに乗る彼女は、自身の背中を指し示した。
そして白い歯を見せて笑顔を作る。
バイクに乗れ、ということらしかった。
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