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隣人が魔物に喰われる世界観の暮らし ~異世界と融合した時代を気ままに生きるだけ~  作者: 結城 からく


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第51話 ビッグマウス

 出発準備を済ませた後も、しばらく殺人アナウンサーの田中佐藤こと"ビッグマウス"のニュース番組を視聴する。

 内容はあまり興味がないので、彼自身の観察に集中した。

 ソファに座って無言で注視し続ける。


 ビッグマウスは瞬きを一度もしない。

 不気味に見開いたまま喋っている。

 白目部分が血走ってピンク色になっていた。

 それでいて瞳は澄んでいる。

 異様な目力を加味しても、純粋な光を湛えていた。


 時折、頭を包む麻袋が振動していた。

 内側から押されて激しく変形する。

 明らかに人間の頭の輪郭から逸脱する瞬間があった。


 それでもビッグマウスは平然と原稿を読み続けている。

 たまに白紙の原稿を持っているが、果たして本人は気付いているのか。

 淀みなく語る口調からはどちらとも判別が付かない。


 ビッグマウスはかなり変容が進んでいるようだ。

 特に首から上の部位が人間離れしている。

 画面越しなので分かりにくいが、他の部位もモンスターの影響を受けているのではないか。


 きっと幾多もの戦いを経験しているのだろう。

 単独で大量のモンスターと人間を殺してきたに違いない。


 ネットの掲示板で、ビッグマウスは殺人鬼に分類されていた。

 奇妙なビジュアルと残酷な凶行が要因である。

 スタジオの外で殺戮を展開している姿もネットに動画としてアップロードされていた。


 今は淡々と原稿を読むこの男は糸ノコギリで数百二人を惨殺している。

 無差別に追いかけ回して首を掻き切るのだ。

 たまに四肢を切断しながら、連れてきたカメラマンにその様子を撮影させていた。

 そういった報道にどんな意味があるのか、彼以外には分からない。


 どさくさに紛れて襲いかかるモンスターもビッグマウスの餌食になっていた。

 彼は恐ろしいほどの敏捷性で反撃に移り、怪物達の急所を糸ノコギリで破壊する。

 新幹線のようなサイズの大蛇が倒されたそうで、スタジオ前には巨大な死体が放置されているそうだ。

 ビッグマウスという殺人鬼は、超人的な暴力を保有していた。


 世界が狂っていく中で、とうとう人間も狂い始めたらしい。

 特殊能力で生まれたのはヒーローだけではない。

 こういったサイコキラーも台頭し始めているのだ。


 ビッグマウスに比べれば、昨日の軽トラックの二人組はまだマシだろう。

 しかし、いずれこういった狂人と出会う機会も増えるに違いない。

 より一層の警戒が必要だった。

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