第41話 擬態
距離を取ったまま宝箱を注視する。
室内の雰囲気からすると、どうしても異物感が拭えない。
明らかに周囲から浮いていた。
唐突に運ばれてきたような印象を受ける。
単に店主の私物かもしれないしれないが、それにしても一風変わったセンスだ。
試しに開けてみたい。
そのような誘惑に駆られる。
果たして何が入っているのか気になる。
突如としてモンスターが出没する世の中になったのだ。
同様の理論で、こういった宝箱が出現しても何ら不思議ではない。
店主の私物でなかった場合、どこか別世界のアイテムが入っている可能性がある。
それを他でもない自分が入手できるのだ。
自然と気分が上がってしまうのも仕方あるまい。
ただ、どうにも危険な予感もした。
軽率に開けるべきではないと訴える思考がある。
それは一定の根拠に基づいていた。
過去にプレイしたゲームには、宝箱に擬態して襲いかかってくるモンスターが登場した。
その名はミミック。
作品によっては致命的な攻撃力を持ち、油断ならないモンスターという扱いだった。
終盤、プレーヤーはミミックを警戒しながらアイテムを集めねばならないのだ。
目の前の宝箱はどう見ても生物とは思えない。
変容した五感も反応していないが、安全だと断定するのは早い。
ミミックは気配を消すのが上手いのかもしれない。
スマホで情報を集める手もあるが、なんとなく視線をずらすのは不味い気がした。
対峙した以上、絶対に目を離してはならない。
なぜかそんな風に思ってしまった。
色々な可能性を考えた結果、試しに攻撃してみることにした。
用心しすぎて損はない。
杞憂だったのならそれでいい。
宝箱の中身が気になるが、まずは安全の確保が先だろう。
ポケットの中の十円玉をつまんで宝箱に投げ付ける。
硬い音がして上蓋にぶつかるが、特に動きはない。
次に百円玉を投げるも同じだった。
やはりただの箱なのか。
しかし、威力不足だった可能性もある。
念のためにもう一度だけ確認したい。
次に拳銃を手に取って撃った。
弾は鍵穴の横に命中し、乾いた音と共に穴が開く。
刹那、宝箱が躍動した。
天井に激突しながら蓋が開いて、内部に詰まった牙と舌を剥き出しになる。
箱の内部から威嚇するような鋭い声が発せられる。
化け物と化した宝箱は、いきなり跳びかかってきた。




