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第4話 武器捜索

 試しに一つ上の階を探索し始めたところで気付く。

 どこの部屋も施錠されており、入室することは叶わなかった。

 そこまで不用心な住人はいないのだ。

 考えてみれば当たり前だった。

 初歩的な観点に気付かないほど慌てていたらしい。


 仕方ないので自宅に戻り、ベランダから他の部屋に移ることにした。

 落下しないように気を付けながらよじ登っていく。


 四階の高さから足を滑らせれば怪我をする。

 それくらいは知っている。

 ゴブリンが私の手でそうなったのだ。

 あの光景を忘れるはずもない。


 しかもゴブリンはオークの追撃を受けて死んだ。

 二の舞には絶対になりたくない。

 だからこそ細心の注意が必要だった。


 自戒しているうちに真上の部屋に辿り着いた。

 ゴルフクラブで室内に続く窓ガラスを砕き、鍵を開けて侵入する。

 立派な犯罪だが、もはやそれを咎める社会は存在しなかった。

 気にすることはないだろう。


 ただ、住人に攻撃される恐れはある。

 自業自得とは言え、なるべく負傷は避けたいところだ。

 室内の気配を探りながら調べていく。

 いつでもゴルフクラブを振るえるように構えていた。

 一歩ごとに己の倫理が音を立てて壊れていく。


 結局、この部屋には誰もいないことが判明した。

 どうやら留守にしているらしい。

 化粧道具や衣服から察するに女性が住んでいるようだが、現在の時間は出勤しているのだろう。


 自分は自宅で目覚めたので落ち着く余裕があった。

 しかし、早朝から外にいた者は不運だったろう。

 パニックの渦中で犠牲になったのではないか。

 同情する余裕などないものの、そういった想像をしてしまう。


 めぼしい発見がなかったので、隣接する部屋へとベランダ伝いに移動した。

 同様の手順で侵入する。


 まず最初に感じたのは、強烈な血の臭いだった。

 むせ返るような濃さで室内に蔓延している。


 誰かが死んでいる。

 それを確信しながら各部屋を調べていく。


 死体を見つけたのは風呂場だった。

 浴槽に浸かった男が、血だらけで息絶えている。

 激しく損壊した顔は原形が分からなくなっていた。

 両手は猟銃を持っており、銃口が首元に向くように抱き込んでいる。


 どうやらこの男は自殺したらしい。

 変貌した世界に絶望したのだろうか。

 タイミング的に間違ってはいないと思われる。


 なぜ猟銃を持っているのか知らないが、たぶん仕事か趣味なのだろう。

 何にしても、彼には戦う気がなかったようだ。

 モンスターと殺し合うより、自ら死を選ぶ方が楽だと考えたらしい。


 とりあえず死体から猟銃を拝借すると、別の部屋から予備の弾を手に入れた。

 デスクには男の物と思しき遺書があったが、それを無視して自宅に戻る。

 生憎と誰かの言葉を引き継ぐ余裕がない。

 説明書が見つからなかったので、パソコンで猟銃の使い方を検索し始めた。

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