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隣人が魔物に喰われる世界観の暮らし ~異世界と融合した時代を気ままに生きるだけ~  作者: 結城 からく


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第22話 生死の境界線

 オーガの接近を見た瞬間、躊躇いなく地面を蹴って逃走した。

 相手は大きな鬼のモンスターだ。

 真正面から殴り合うほど無謀ではない。

 惨殺された生存者と違って、変容による恩恵を受けているので俊敏な行動も可能だった。


 オーガの咆哮を聞きながら全力疾走し、すぐそばの一軒家に飛び込む。

 庭に面する窓ガラスに突進して、カーテンに包まれながら侵入を果たした。


 土足でフローリングを駆け抜ける。

 二階へと続く階段を上がる途中、庭の方角からオーガの叫び声がした。

 身体を屈めて無理やり追跡してきているようだ。


 ここまでも狙い通りである。

 怒り狂うオーガは、決して諦めないだろうと予想していた。

 もし諦めて立ち去るのなら、逆にこちらから追跡して奇襲するつもりだった。

 全力で追いかけてくるのなら、状況を利用して殺すだけである。


 ここは見知らぬ家屋なのでどうなるか分からない。

 しかしアドリブで乗り切る覚悟はあった。

 所詮、世界はゲームなのだ。

 たとえ失敗しても無価値な命が潰えるだけである。

 そう考えると恐怖も緊張も感じなかった。


 二階に到達すると、目に付く扉をすべて全開にした。

 どこにいるか分からないように細工しつつ、上着を脱いで寝室に放り込む。

 そして、別の部屋に飛び込んで身を隠した。


 それから間もなく荒い呼吸音が二階にやってくる。

 軋む床の音が相手の重さを暗示する。

 オーガが追いかけてきた。


 苛立たしげに壁を殴る音がする。

 猟銃で片手を潰された挙句、顔面にも穴が開いていた。

 その報復ができるまで気が済まないのだろう。


 ゆっくりと呼吸をして決して居場所を悟られないようにする。

 ただの一撃でも攻撃を受けると不味いのだ。

 ここで見つかれば殺される可能性は非常に高い。

 ある種の賭けだが、ほとんど平常心で待ち続ける。


 その後もオーガは、数分をかけて二階を探索した。

 やがて窮屈な室内を歩き回ることに嫌気が差したのか、壁を粉砕して室外へといなくなった。

 庭で大きな咆哮を上げて、敷地内の周辺をうろつき始める。


 まだこの近くにいると確信しているのだろう。

 正確な場所には気付かなかったので、やはり五感が特に優れているわけではないようだ。

 或いは怒りが感覚を曇らせている。


 ベッドの下から這い出た後、寝室の上着を確認する。

 上着はずたずたに引き裂かれて床に散乱していた。

 ひとまずクローゼットから手頃なジャージを拝借するのだった。

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