第12話 魔物狩り
自宅の近所を探索し始めて十分ほどが経過した。
まず目につくのは、あちこちに落ちた死体だ。
人間だけでなく、モンスターのものも多い。
既に弱肉強食が深刻化しているようだ。
出歩いている人間は見かけない。
驚くほどに静かだ。
遠くから何かの声が聞こえてくるも、別の地区らしいので詳細は不明である。
テレビやネットによると、現れたモンスターは多種多様だった。
怪獣のように巨大な個体もいるようで、海外の主要都市が破壊される様も中継されていた。
つまりオークやゴブリンなどは弱い部類なのだ。
強力なモンスターともなれば、軍隊で対応する規模になってくる。
今のところは近所に出没していないのが幸いだろう。
ビルのようなサイズのモンスターが現れたら、さすがに太刀打ちできる気がしない。
しかし、それはあくまでも現状のみに絞った場合である。
モンスターを殺して力が得られるのなら、いずれ巨大怪獣にも対抗できるのではないか。
既に空を飛ぶような超人が生まれているのだ。
映画や漫画のスーパーヒーローに近い能力にまで昇華されてもおかしくない。
まるでRPGの経験値やレベル制のようだった。
残酷な蟲毒だと思うが、個人的には素晴らしいと思う。
実に夢のある話ではないか。
多用な"力"が跋扈していた世界が単純化されて、暴力が幅を利かせるようになった。
なんとも分かりやすい時代である。
ここで淘汰されるか否かは、すべて自分次第なのだ。
今までの退屈な日常より歓迎できる。
心は自然と躍ってしまう。
機嫌よく歩いていると、事故現場に遭遇した。
ブロック塀に突っ込んだ自動車が煙を上げている。
車内には誰もいない。
シートに血痕だけがこびり付いていた。
大方、モンスターから逃げようとして事故を起こしたのだろう。
そして停車したところを襲われた。
文明の利器も、原始的な暴力の前に屈したのである。
車内に有益な物がないことを確かめてから、崩れたブロック塀の破片をいくつか拾っておいた。
ちょうど小石くらいのサイズのものだ。
まとめて投げれば武器になる。
銃のように大きな音も出ないので便利だろう。
これを牽制に使って、怯んだところにゴルフクラブを打ち下ろす。
オークの殺害によって、身体能力が上がった感覚もある。
単純だが効果的な戦法だろう。




