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隣人が魔物に喰われる世界観の暮らし ~異世界と融合した時代を気ままに生きるだけ~  作者: 結城 からく


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第11話 生還者の報酬

 オークを倒したことで高い治癒能力を得た。

 死んでもおかしくないほどの重傷から数日で完治するほどの効果だ。

 肉体が変容したのは間違いない。


 それを知った今、特に感情が沸き立つことはなかった。

 我ながら悪運が強いのだと思うくらいである。


 とりあえず、まだ死なずに済んだ。

 この狂った世界を楽しめそうなことに安堵する。


 引き続きパソコンやテレビから情報を集めていく。

 まだ各種インフラは機能している。

 テレビ番組もいくつかの局は臨時ニュースをずっと流していた。

 スタジオで籠城しているらしく、モンスターの攻撃に耐えながら放送中だとキャスターが言っていた。


 そこまで命がけになって仕事を全うする姿は尊敬するが、見習おうとは思わなかった。

 変貌していく世界で、かつての日常に囚われたくないのだ。

 残る人生は好きに生きていくと決めた。

 彼らの覚悟を否定するつもりはないものの、共感するのは難しい話である。


 カップ麺を完食したところで、再び外へ向かうことにした。

 オークとの遭遇で死にかけたばかりだが、新たな力を試してみたい。

 モンスターを恐れて家に引きこもってばかりではいられなかった。

 むしろ今回の一件で死にづらくなったのだから、嬉々として行動すべきだろう。

 武器や食料の調達もついでに行っておきたかった。


 そして、新たなモンスターを殺害するのが一番の目的である。

 倒すたびに能力が増えるのなら、これほど有意義なことはない。

 検証の意味も含めて実践した方がいいだろう。


 私服姿でゴルフクラブと猟銃を携えると、アウトドア用のリュックサックを背負って自宅を出た。

 なんとなく全身に力が漲っている気がする。

 ほどよい昂揚感に加えて、神経が研ぎ澄まされていた。


 戦いを経験したことで精神的にも余裕ができたのだろうか。

 今の状態なら、たとえオークが相手でも後れは取らないだろう。


 エレベーターで地上まで下りて、駐車場を抜けてマンションの敷地外に出た。

 住宅街は妙に静かだ。

 眠っていた四日間で住民が減ったのかもしれない。

 或いは標的にされないように息を潜めているのか。


 ネットによると、各地域には避難所も設けられているらしい。

 大人数で生活すれば不安も紛れる上、殺されるリスクも抑えることができる。

 とは言え、誰が信頼できるか分からない状況で集団生活をするのも危険だろう。

 あまり人付き合いが得意な性質でもないので、このまま単独行動を貫くつもりでいる。

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