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第3話



カラオケで流行りの歌を大声でがなりたて、その後はゲームセンターで慣れない遊びに興じていると、あっという間に外は暗くなってしまった。

彩華はカラオケもゲームセンターもほとんど経験がないと言って、猛よりもよっぽど楽しんでいたので猛もつられるようにしてたくさんはしゃいで、笑った。

こんなに笑ったのは多分小学生ぶりくらいだ。

楽しかったけれども、楽しいと感じる度にどことなく胸の奥がしくりと痛んだ。

母が知ったらなんと言うだろうか。

きっと悲しそうな顔をさせてしまうのだろう。

だが。

……自分はそれほど悪いことをしているのだろうか。

猛が何かを楽しむ事は、そんなに許されない事なんだろうか。

「楽しかったねえ!」

隣を歩く彩華が、弾んだ声で言う。

吐いた息が白いのに、猛はぎゅっと心臓を掴まれる思いがした。

遠慮なく付き合ってもらってしまったけれど、彼女にだって自分の予定があっただろうに。

「どうした? 楽しくなかった…?」

猛の反応が鈍いので、彩華は不安に思ったようだった。

整った顔に憂いの影が落ちて、それはさらに少女の美しさを際立たせる。

猛は慌てて笑顔を作った。

この人は、笑っている方が素敵だ。

「めちゃめちゃ楽しかった…です」

「それならどうしてそんなに悲しそうな顔をしてるのかなー」

あさっての方を向いて、彩華は独り言のように言った。

だから猛も、独り言を呟くみたいに声を絞り出す。

「……まだ、帰りたくない」

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