エピローグ☆シリとアスラン
「シリ!こいつやっつけていいか?」
突然。ブルースがシーツカバーでアップルビ氏に後ろからかぶせて羽交い締めにした。
「ブルース!」
シリはとっさのことにどうしていいかわからなかったが、次の瞬間には第三の目でブルースをいさめて、シーツカバーをはずさせた。
「シリ。彼を操っちゃいけない」
アップルビ氏は静かに言った。
「でも!」
シリは反論した。あなたがひどい目に合うところだったのよ、と。
「彼は、ブルースは、優生保護法の対象者だ」
「だからって、暴力は見過ごせないわ!第一、あなたに身を守る術があって?」
シリは今度は、アップルビ氏を操ろうと気合を入れた。
「!?」
できなかった。
「シリ。私の額をよくみてごらん」
シリが至近距離からアップルビ氏の額を見ると、一筋の傷あとがあった。これは、この場所は、第三の目があり得る場所だった。
「あなたも50染色体なの?うそでしょ?」
「本当なんだな、これが。昔、母から縫い付けられた」
「でも私の力が効かないのはなぜ?」
「大学で能力開発の研究をやってて被験者だった。それからアップルビ財団が病院を建てるときに招かれて、ずっとここにいる。いろんな対策を研究してるんだ。肩書きは伊達じゃないよ」
アップルビ氏ーアスランが監視カメラに合図を送ると、屈強な看護師が数名来て、ブルースを連れ去った。シリにも触れようとしたが、アスランは首を横に振った。
「外へ出ても、身寄りがない君を助けてくれる人はいないよ。どうか、いままで通り私のそばにいてくれないかね?」
「だけど、閉じ込めるのはもうやめて!」
「わかった」
シリを隔離病棟から自由病棟に移すと彼は約束した。
「シリ」
「なに?」
「私の妻になってくれないか?」
「…。考えとくわ」
なんとなく今までのつきあいからそんなことを言われそうな予感はあったので、シリは別に驚かなかった。
「外の世界へ連れて行って!世界を私に案内して!」
「仰せの通りに」
シリとアスランは手をつなぎ、お互いに相手の顔を見た。そして笑った。