第二章☆引き籠もり
ブルースは登校拒否児童だった。そのうち成長するに従い、自室から出てこなくなってしまった。
カーテンは昼間からしめきってあって、部屋は薄暗く、かろうじて昼と夜が区別できる程度だった。
その環境の中で自分以外の人間を厭い、憎んだ。
ある日、ブルースはありったけの紙幣を握りしめ、武器屋へ出向いた。店員はブルースの顔色の悪さから、銃火器を売るのをためらったが、身分証明書は確かなものを持っていたし、照会しても前科持ちではないため、武器を複数売ってしまった。
ブルースは重い武器を引っさげ、その足で近くの学校に殴り込んだ。
なんの罪もない人たちが標的になった。
自警団が駆けつけて、ブルースを一斉に攻撃した。
「俺は死ぬのか…」
ブルースの意識は朦朧としていたが、彼が生死の境をさまよっているとき、医師団は善悪にかかわらず、人を救おうと懸命だった。
「!?」
ブルースが気がつくと、包帯でぐるぐる巻きにされて生きながらえていた。
手を尽くしても救えなかった者の家族らから罵られ、隔離された。
白い病棟。
運動の時間に他の入院患者と一緒に体育館で軽運動をした。
そんな中に、たった一人だけ、ブルースにとって天使に見える少女がいた。
看護師と雑談しているのを聞いて、彼女の名前がシリだと知った。
幼い頃に見た宗教画から抜け出てきた天使のようだった。
「おい」
「?」
「お前は天使だろう?俺を裁きにきたのか?」
シリは小首をかしげていたが、ふいにクスッと笑って、
「そうよ」
と言った。彼女は前髪をかきあげて、額を見せた。額には3番目の瞳があった。
ブルースは彼女をまぶしげに仰ぎ見て、残りの人生があるのであれば、その全てを彼女に捧げようと誓った。
シリはただ、びっくりさせようと思っただけだったが、思わぬ忠誠者を拾ってしまった。