THE BOY's DEPARTURE
あの、ぼく、桃 太郎と言います。
桃が苗字で、太郎が名前です。
珍しいですよね、こんな苗字。
実は母親が勝手に作った苗字でして。
両親が言うには僕は桃の中に入ってた子供だから認知はしないって。
だからぼく、苗字が桃なんです、はい。
両親には感謝してます。
だってみなしごのぼくをここまで育ててくれたんですから。
でもぼくももう12歳。
いつまでも二人の世話にはなってられないなって。
だから家出しちゃったんです、はい。
そうしたらすぐに野党に会っちゃって。
金出せって言われても全然持ってなくて。
イチかバチかで母親がお昼に作ってくれたお団子を差し出したんです。
でもやっぱりお団子じゃ納得してくれなくて。
ふざけんなよって、お腹を匕首で切り裂かれちゃった。
すごく痛いし、お腹の中のものがどんどん出てきちゃうし。
これで死んじゃうのかなって。
ぼくはなんのために生まれたのかなって。
お父さんとお母さんに会いたいなって。
そんなこと考えていたと思います、はい。
意識が遠のいて、昼も夜もわからなくなった頃に。
気づいたら浜辺に打ち上げられてたんです。
何がなんだかわからなくて。
しばらく辺りをふらふらと歩いてたんです。
ぼくを呼ぶ声が聞こえて。
振り返ったら天女さまがいました。
きっと天女さまだと思います。
すごくきれいだったし。不思議な着物をめしていらしたし。
天女さまはぼくに言いました。
あなたにはもう少し時間があるって。
だから、その時間を使って人助けをしてみないかって。
ぼく、それを聞いてすごく嬉しくて。
せっかく生まれたんですから。
やっぱり何か世の中のために成し遂げたいなって思ってたから。
二つ返事でその話を受けちゃいました。
人を困らせるオニ?を退治するらしいんですが…。
任務が果たせるようにって動物と話せる能力もつけてもらっちゃったんです。
しかも、無事にオニを退治できたら元居た世界に返してもらえるって。
ぼく、生まれて初めて自分にも幸運があるんだなって思いました。
絶対この任務をうまく終わらせて、家にかえるんだ。
父さんと母さんにもう一度…




