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或る週末の1日。

作者: 睡魔

5番煎じくらいの内容の作品です。

ただただ私が好きな世界観を書きました。

初めて小説を書いたので拙い点も多々あると思いますが、生暖かい目で見て頂ければ幸いです。

それでは、この作品の空気感を存分に感じ取ってください。

今日は週末。


朝7時、僕はスマートフォンから流れる「明日があるさ」で目を覚ました。

好きな曲ならきちんと目が覚めるはずと設定したアラームだが、朝一番から明日がある、というのは何となく可笑しい気がする。しかし今日は週末。今日を乗り切れば休日__明日がある__と意気込んで1日を乗り切るという点においては抜群の選曲だ、と心の中で昨日の自分を褒める。


とにかく眠たい目を擦りつつ、圧倒的な包容力を誇る布団から這い出て、学校へ行く支度に入る。生憎、両親は外に出ているらしく、冷蔵庫に置いてあったアイスコーヒーとヨーグルトを取り出し、棚に入っていたスティックパンと合わせて口に運んだ。


普段なら朝食に暖かい味噌汁が飲みたいと愚痴をこぼすところだが、今日は週末。気分は穏やかだ。些細なことは気にしない。


散らかった部屋を横目に、制服に着替えて鞄を持ち、相変わらず昨日何処に置いたか覚えられない自転車の鍵を探して普段通り、予定より5分遅れて家を出た。


いつもは立ち漕ぎで爆走する道でも、週末だと、少しゆったり漕ごうかなという気分になる。不思議だ。


手慣れたハンドルさばきで道に撒かれたゴミを避けつつ、僕は8時前になっても暗い空を見上げた。


いつもの通学路を通り、学校へ着く。少し遅い登校だったが、人影は見当たらない。が、僕の教室だけ、明かりが付いていた。__まさか。

とにかく僕は靴を履き替え、教室へ向かった。


歩く度に、静かな校舎の中でコツコツという音が響く。僕はこの音が好きで、よく学校に遅くまで残っていたりするのだ。


明かりの着いた教室に着くと、予想通りというか予想外というか、とにかく先客がいた。向こうも驚いた様子でこちらを見ている。

「まさか人が来るとは思わなかったよ」

「別に今日は休みでもないし、僕が登校していけない理由はないだろう?」

彼女の言葉に対して、僕の返答は至極真っ当なはずだったが、彼女は怪訝な顔をする。

「一応聞いておくけど、今日が何の日かは分かっているよね?」

「勿論。今日は2月8日の金曜日で、週末。今日が終われば、明日からは休みだね。」

自分の席について、荷物を整える。

「そう言う君はちゃんと今日が何の日かは分かっていたのかい?」

僕は敢えてからかうような口ぶりでそう言った。すると彼女は少し不機嫌そうな顔をして「そう。今日は_」

彼女がそう言い終わる前に、教室が揺れる。不気味に唸り、校舎ごと、大地が揺れている。


揺れが収まった。すると彼女は、先程とは少し表情を変えて

「今日は終末。忘れられるはずもないよね。」

落ち着き払った声でそう言った。


・~・~・~


今日は終末。


午前6時25分、()はアナログ時計が鳴り響く5分前に目が覚めた。早起きは三文の徳というが、5分程度だと、少し損をした気分になる。しかし今日は終末。今日が終われば明日は無い、となると5分でも早く起きることは悪いことではないように思える。


普段より目は冴えていて、気持ちよく布団から起き上がることが出来た。当然ではあるが、両親は外に出ているので、ただの箱に成り果てた金属の塊から菓子パンと生温い牛乳を取り出し、朝食にした。


普段なら生温い牛乳など絶対に許せない代物だが、今日は終末。妙に気分は落ち着いている。些細なことは気にならない。


整頓された部屋を横目に制服に着替え、スニーカーを履いて外に出た。


いつもは溢れんばかりの人を乗せて、騒音を撒き散らす電車も今は無意味な鉄塊と化している。終末だと線路沿いを歩かざるを得ない。当然だ。


アスファルトの道に散らばるゴミを避けつつ、蒼色を失った空を見上げた。


学校には人は居ない。職員室から教室の鍵を取り、教室の鍵を開け、自分の席に座る。誰も来るはずのない教室で、淡々と今日の授業の準備を行った。


・〜・〜・〜


僕はもう一度彼女の顔を見る。彼女の顔は穏やかだ。微笑すら浮かべている。週末だからだろうか。


・〜・〜・〜


突然に現れた彼は、私にはとても落ち着いて見えた。まるでただ、登校日に登校した生徒のようだ。終末だからこそ、なのだろうか。


・〜・〜・〜


沈黙が続く。



「これはびっくり、人がいるなんて思いもしなかった。」

扉が開いた。

「…先生も来たんですか。」

「教師ですから。学校に来るのは当然です。」

「………」

先生の答えはごく当たり前のものだったが、僕は正直、驚いた。彼女も同じようで、目を丸くしている。



「__では、授業を始めましょうか。」

いつものように先生は号令をかける。

僕達もいつものように起立し、礼をしたのち、着席する。

授業は何の違和感もなく行われた。

ただ、その授業が古典だったか、物理だったか、はたまた英語だったか_それはいまいち覚えていない。

とにかく僕らは1時間きりの授業を終えた。


「このあとは、貴方達はどうしますか。」

黒板を消し終えた先生が尋ねる。

「今日の授業が終わったので、帰ろうかなと思っています。」

授業が終われば家に帰る。僕はそうするべきだと思った。彼女も同じようで、片付けを始めている。

「そうですか。では、さようなら。」

先生は何の質問もしない。

「先生は」

彼女は片付けを中断し、教室を出ようとする先生を呼び止めた。

「放課後は、何をするんですか。」

「放課後、ですか。そうですね。」

先生は少し考えてから、空を見ることにします。と言った。

「ああ、それと_」先生は思い出したように付け加える。

「今朝、家の庭で採れた林檎です。とても美味しいのでよかったら。」

先生は、鮮やかで、綺麗な赤い林檎を一つ渡した。




下校。僕は自転車を押し、彼女は歩く。時計の針は午前9時半を示し、規則的に、少しの乱れもなく、時を刻む。

空は昏い。僕達は他愛も無い話をしながら帰る。そのことに違和感はない。


「君は、終末はどうするか決めているのかい」

ふと浮かんだ疑問を彼女に投げかける。

「私は週末は勉強はしないって決めてるんだ。夜更かしして、映画を見るの。」

「明日が休みだから?」

「ええ、明日頑張ればいいもの。」

「でも今日は終末だ。」

「なら、なおさら勉強しなくていいね」


「あなたは、週末の予定はあるの?」

彼女が聞き返す

「僕は終末に何か特別なことをしようなんて思わない。普段どおりさ。」

「明日がないから?」

「ああ、家でゆっくり寝る。昼寝して、ご飯を食べて、早めに寝るんだ。」

「でも今日は週末だよ。」

「なら、なおさら満喫しないと。」

睡眠に代えられる楽しみはない。これは僕の信条だ。



地面には汚れきった紙くずや黒く腐敗した生ゴミが散乱していた。僕達はそれを気にせずに歩く。



何度目かの分かれ道で、僕は足を止めた。

「それじゃあ、僕はここを曲がるから。」

「そっか、あなたは近いんだ。」

「ああ。あと二、三回角を曲がれば着く。君はやっぱり遠いのかい。」

「いいえ、あと二、三駅先だから、同じようなものよ。」彼女は冗談交じりに答えた。

僕が自転車に乗った時、彼女はどこからともなくサバイバルナイフを取り出し、器用に林檎を等分した。

「君はキャンプでもするつもりだったのかい。」

「休日ならそれも楽しそうね。考えてみるよ。」

僕は彼女から林檎を受け取り、それを食べながら帰ることに決めた。マナー的には褒められるものではないが、今日は週末。それくらいいいじゃないか。



「あ、ちょっと待って!」

僕がペダルに力を入れた瞬間、彼女が呼び止める。

手に持っている林檎が少し欠けている。

「あまりにも美味しいから、僕の分も欲しくなったのかい。」肩を竦めて振り返り、林檎を齧った。

「_____________。」




白い光が二人を、辺りを、世界を包む。

まず、最後まで読んでいただきありがとうございます。

空気感を気に入って頂けたならば、それ以上に嬉しいことはありません。


一応自分の中では1つの筋で通しつつ、読み方が割れるような書きぶりを意識したつもりなのですが、なかなか難しく、綺麗に書けなかったような気もします。そのあたりは大目に見てください…


とにかくこの作品の何とも言えない雰囲気を感じて頂けたなら私は満足です。


最後にもう一度、ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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