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25.仄かな死の香り

*スマホから投稿する場合、投稿後に文字数調整を行う為、前回読んだ時から話が繋がっていない場合があります。


*[本屋クロックドア 編]に登場する推理は、蒼城双葉さんが「小説家になろう」やpixivに投稿している、

『探偵王子カイ 容疑者ナギとワールドフールの螺旋』(https://ncode.syosetu.com/n0703eo/#main)から着想を得ています。

(具体的に言うと、「第二章15  『台風の目』」内の、タロットと星座の話からです。)


これは、日本の古典文学を元にした、二次創作作品です。

原作は、後書きに載せます。


[神戸][南京町]といった、現実の地名が出てきますが、実在する同名の場所とは、外観が大きく異なる場合があります。


挿絵(By みてみん)

 

「僕は、長い木の棒と、包みが合わさって、ある道具に見えるなぁと、思ったんです。



 その道具というのは、

 [スコップ]……柄が長いタイプの……それから、

 [鍬、鋤]です。


 どうして、それらの道具を、連想したのかというと……[園芸]や、[農作業]というワードが、記憶に新しかったからです。


 更に、その三種の中で、どれを表しているのか……

 それは、[吠える犬]の存在で、判明しました。


 先ほど僕が挙げた、三種の道具……どれも、[掘る]為の物です。


 [犬]、[掘る]……

 と来れば、

『花咲爺さん』、ですよね。


 そしてそのお話では、犬がお爺さんに、

『この下に、お金がありますよ。』と、

 吠えて伝えるシーンがあります。


 そのシーンで、お爺さんは……


 畑に立ち、鍬を握っています。



 だから、白髪はくはつの子も、同じように、畑で鍬を振るっていたのでしょう。



 違いますか?」




 熊城は、パチパチと、拍手をした。


「!


 合っていましたか……!」


 晃の顔が、パッと明るくなった。


「ええ……。

 彼女は、学校の裏庭にある畑で、よく鍬を振るっていましたよ。


 土に刃を突き立て、ザクリ、ザクリ……とね。」


 晃は、熊城の話に、違和感を抱いた。


「……よく、ですか?」


「そうっすね。

 耕す必要が無いのに、毎日のように……。」


「………。」


 晃は、奇妙な感じがして、高揚感が次第に冷めていった。


「ねぇ、法水さん。

 何で、彼女が、そんな事をしていたのか……


 そこまでは流石に、俺は、分かんないんすよ。

 ……貴方は、何でだと思います?」


「そ、それは……。」






『花咲爺さん』……


 その終盤で、お爺さんは、灰を捲き、木に花を咲かせる。





 ……[桜の木]に。





 [桜の木]に、[掘る]と来れば……。














 桜の木の、下には……。











「……死体。」




 晃は、ボソリとそう言った。


「えっ? なんすか?」


 熊城が、ポカンとしながら、訊き返した。


 晃は、慌てて頭を、左右に振った。



「い、いやっ!

 何でも、無いです。


 ……僕にも、分かりません。」




 晃は、もう一度、白髪はくはつの少女を見てみた。


 彼女は、何を買うか、まだ決めかねているらしく、じいっと棚を見つめている。


 その、儚く、可憐な横顔を見て……

 常夏の海を思わせる、透き通った青緑色の、瞳を見て……


 晃は、胸が締め付けられた。



 ……こんな子が、死体を求めて、土を掘るわけが無い。





「そうすか。

 まあ、しょうがないっすよ。」


 熊城は、晃の答えを軽く受け流した。


「さて、法水さん。

 約束通り、斎藤さんに関する情報を、教えましょう。」


「あ、ありがとうございますっ!」


 晃は、肩から下げた鞄から、手帳とペンを取り出そうとしたが、本で両手が塞がっていた。


「あの、この本、そこに平積みされている本の上に、置いても良いですか?」


「うん?

 ああ、メモしたいんすね。


 しなくて良いっすよ。


 俺が、他の店員から、客について訊いて回った後、情報を書いた紙を、貴方に渡します。


 だから、レジの辺りで、待ってて下さい。」


 熊城が、突然協力的になったので、晃は驚いた。


「えっ!

 い、良いんですか……!?」


「はい。

 俺は、自分が認めた相手には、尽くすたちっすよ。


 法水さんの推理には、感服しましたからね。」


「あ、ありがとうございます。


 でも、お仕事の方は……?」


「……どうせ誰も、俺の事を、本気で怒りはしません。」


 熊城は、そう言い終えると、クルリと晃に背を向けた。

 そして、三歩歩いたところで、晃の方を振り返った。


「法水さん!

 書き忘れるかもしれないから、先に口頭で、伝えておくっす。」


「は、はいっ。」


「斎藤さんは、一週間と一日……つまり八日前に、二冊の本を買いました。



 一冊目は、

 シェイクスピアの『ハムレット』。


 二冊目は、

 ドストエフスキーの『罪と罰』



 ……です。

 では!」



 熊城は、再び背を向けると、今度は振り返らず、スタスタと歩いて行った。

 彼が向かった方向は、元々、彼が去ろうとしていた方向……


 つまり、レジの反対側であった。

 晃は、レジに向かう為、小栗と夢野の作品が並ぶ列に、戻って来た。


 白髪はくはつの少女は、買う本を決めたらしく、棚から本を取り出すと、小脇に抱えた。



「……うっ!」


 晃は、腕がピリピリと痺れるのを、感じた。

 両手で抱えていた、二冊の本を、平積みされた本の上に置いた。



 ……分厚く、しっかりと装丁された本を、二冊も持っていたのだ。

 貧弱な晃が疲弊するのも、無理は無かった。


 晃は、棚の前で立ち止まり、少し休む事にした。




「……あの。」


 中性的な、少年らしい声が聞こえた。


 晃が顔を上げると、目の前には、白髪はくはつの少女が立っていた。




 思ったより、声が低かった事……いや、少年の中では高い方だが……に驚いた晃は、言葉がすぐに出てこなかった。


「本、お持ちしましょうか?」


 白髪はくはつの少女は、晃が置いた二冊……

『黒死館殺人事件』と『二重心臓』を、チラと見てから、そう言った。


「あっ、いやっ……!」


 晃は、あわあわと慌てながら、頭を左右に振った。


「貴方は既に、分厚い本を二冊、抱えていらっしゃるし……。



 何より、貴方のような、華奢な女の子に、そんな事させるわけには……!」



「……女、の子?」



 白髪はくはつの少女は、キョトンとした、あどけない表情で、首を傾げた。


「はい……えっ?」


 晃は、まさか……と思いながら、少女の首に視線を向けた。


 ホワイトシャツの、襟の上、首の表面に……



 [男性特有の膨らみ]が、あった。



 それはまだ小さく、パッと見では、分からないほどだが……


 注意深く、近くで見つめれば、ハッキリと確認出来るサイズだった。




「僕は、[男]……ですよ。」






*お読み頂き、ありがとうございます。


*『……こんな子が、死体を求めて、土を掘るわけが無い。』までが、pixiv版の5話です。


*原作

『黒死館殺人事件』著・小栗虫太郎

『二十世紀鉄仮面』著・小栗虫太郎

『オフェリヤ殺し』著・小栗虫太郎

『ドグラ・マグラ』 著・夢野久作

『二重心臓』著・夢野久作

『一寸法師』著・江戸川乱歩

『心理試験』 著・江戸川乱歩


*絵は自分で描いています。

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