22.白髪(はくはつ)の乙女
*スマホから投稿する場合、投稿後に文字数調整を行う為、前回読んだ時から話が繋がっていない場合があります。
*[本屋クロックドア 編]に登場する推理は、蒼城双葉さんが「小説家になろう」やpixivに投稿している、
『探偵王子カイ 容疑者ナギとワールドフールの螺旋』(https://ncode.syosetu.com/n0703eo/#main)から着想を得ています。
(具体的に言うと、「第二章15 『台風の目』」内の、タロットと星座の話からです。)
これは、日本の古典文学を元にした、二次創作作品です。
原作は、後書きに載せます。
[神戸][南京町]といった、現実の地名が出てきますが、実在する同名の場所とは、外観が大きく異なる場合があります。
「すみません、僕の紹介がまだで。
僕は、法水晃といって……明智粉雪さんから、再調査を依頼された者です。」
晃は、本革張りの鞄を開け、笠森判事から受け取った[再調査承認書]を取り出した。
晃が突きだしたそれを、熊城はジッと見たが、意思は揺るがぬようだった。
「のりみず……。
名探偵・法水麟太郎と、同じ苗字っすね。
……でもだからって、お客さんが彼のような、ズバ抜けた推理力を持っているとは限らない。
俺の情報を活用してくれる、賢くて優秀な人にでないと、俺の情報は教えられないっすよ。」
熊城は、来た道を戻り、小栗と夢野の棚がある列に入った。
「っと、こっちじゃない……んっ?」
熊城の視線の先には、夢野作品の前で佇む、1人の少女が居た。
少女の身長は、粉雪と同じ……150cm代前半だ。
白い髪は、首の後ろで結ばれていて、フワリと小さな尻尾を作っている。
衣装は、フード付きの黒いローブに、黒いブーツ……まるで、黒魔女のようだ。
少女の、憂いを湛えた青緑色の瞳は、棚の本へと、真っ直ぐ向けられている。
熊城は、晃の元に戻ると、こう言った。
「丁度良いや……。
この先に居るお客さん、俺が知っている子なんすよ。」
「は、はぁ……。」
「ほら、あの子っすよ。」
熊城は晃に、棚の陰から、白髪の少女を見させた。
「綺麗な子っすよね、お人形さんみたいで……。」
「そうですね……。」
晃は、熊城に乗せられて、つい肯定してしまった。
顔を赤らめ、俯く晃に、熊城は容赦なく言い放った。
「ねぇ、法水さん。
あの子が、どういう子だったか……当ててみて下さいよ。」
「えッ……!?」
晃は、突然の要求に、言葉を詰まらせた。
「法水さん。
あなたが、あの子の特徴を、ピタリと言い当てられたのなら…。
それは、あなたが優秀だって事になる。
……優秀な人には情報を渡す、俺はさっき、そう言いました。
それを曲げるつもりは、無いっす。」
晃は少女を、上から下まで、隈無く観察した。
黒のローブ……魔法使い……オカルト趣味?
いや、もし違ったら……。
晃は、誰かの知恵を借りたかった。
「すみません、ここには、仲間と来ていて……。」
「逃げるんすか?
今、答えて下さい。
でないと、俺が持つ情報……まだ、あなたにも聞かれていない情報……それを、闇の中へ、葬りますよ。」
永遠に喋らない……そういう意味だという事は、晃にも分かった。
熊城が有力な情報を、掴んでいるかもしれない今、従うしかない。
笠森判事からの、再調査承認書を見た後での、この態度だ。
何も無いのであれば、熊城の首を絞める事になる。
熊城は、そんな事態に陥るほど、愚かな男では無い……熊城と話し、圧を感じた晃は、それが分かっていた。
「うーん……。うーん……。」
晃は、白髪の少女を見ながら、一生懸命考えた。
「……ここで、特別スペシャルヒントを、教えてあげるっすよ。」
予想していなかった助け舟に、晃は喜んだ。
「ほっ、本当ですかっ……。」
「あの子は、乙女座っす。」
「……え?」
……全く嬉しくない、ヒントだった。
「そ、そんなんじゃ、分かりませんよ……っ!」
「分かるっすよ。
……法水麟太郎氏ならね。」
熊城の顔は、真剣だった。
きっと、彼の言葉に、偽りは無い……麟太郎なら、解けて当然だと、本気で思っているのだ。
「麟太郎さんなら……解ける……それって、どういう……?」
「………。」
熊城は、黙っていた。
それが彼なりの、意思表示だった。
……試しているのだ。
ピースは既に、出揃っている。
後はそれに、晃が気付けるか……。
晃は、思考をギュンギュンと回転させた。
乙女座……乙女座……麟太郎氏なら分かる……。
麟太郎……彼に、謎を解く為の、知識があったから?
しかし、今の晃には、麟太郎が何を知っていて、知らないのか、想像がつかない。
だって、彼が登場する本を、読んでいないのだから……。
肩を落とした晃は、本以外にも、情報源があった事を、思い出した。
それは、ポップだ。
晃は、麟太郎関連のポップを、出来るだけ思い出していった。
「……うん?」
晃が、何かに気付いたかのように、眉を歪ませた。
熊城は、そんな晃を、微笑を浮かべながら、眺めていた。
その時、(……あえて、伏せておこう。)という音を、晃は聞いた。
音の発生源は、白髪の少女だ。
晃は、彼女をもう一度、よく観察してみた。
そして、気付いた。
少女が身に付けている、[あれ]が、別の[あれ]にも、見えるという事に……。
「……おっと、そうだ。
制限時間を設けないとっすね。
俺にも、仕事がありますから。」
「……いえ、その必要はありません。」
「へぇ……良いんすか?」
熊城は、顔が綻びそうになるのを、必死にこらえて、言った。
「はい。
……僕の推理は、終わりましたから。」
……カリリヨンの音がする。
(カリリヨンとは、エレクトーン・ピアノのように、鍵盤が二段構造になっている楽器の事。)
という事は、これから、私のサイン会が始まるのだ。
「……カルト的人気とは言え、ファンが居るのも、考え物ね。」
私は、照れ隠しに少し、強がった事を言ってみせた。
……司書机に置かれた、原稿を見下ろす。
だいぶ書いたんだな……。
大体、5万文字くらい?
(はあ、こんな独白までも、万年筆を走らせて、記してしまうだなんて……職業病ね。)
そろそろ、タイトルを付けようか。
うーん……サイン会があるから、深く考える時間は無い。
……『緋色の呪縛』。
晃の父が、言った言葉だ。
作品全体のテーマに合っているし、良いんじゃなかろうか。
それに、コナン・ドイルの、『緋色の研究』みたいだし。
……どうせなら、ルビを降って、小栗虫太郎らしくしてしまおう。
『緋色の呪縛』
うん、『人外魔境シリーズ』の、タイトルっぽいぞ。
……って、ダメダメよッ!!
ぜんっぜん、駄目だからね!?
一発で、内容が何となく掴めて、文字量が多いタイトル……
それが今の、主流なのよっ!
「法月先生!!
法月 倫子先生ッ!!」
図書室のドアが叩かれ、私の名前が呼ばれる。
はいはい、すぐ行く!行くから!!
私は表紙に、新タイトルを書き殴った。
『神戸異人坂のオカルトな事件~90年後の心理試験』
*お読み頂き、ありがとうございます。
*ここまでが、pixiv版の4話です。
*原作
『黒死館殺人事件』著・小栗虫太郎
『二十世紀鉄仮面』著・小栗虫太郎
『オフェリヤ殺し』著・小栗虫太郎(忘れていました)
『ドグラ・マグラ』 著・夢野久作
『二重心臓』著・夢野久作
『一寸法師』著・江戸川乱歩
『心理試験』 著・江戸川乱歩
*絵は自分で描いています。




