20.フランクな書店員
*投稿後に文字数調整を行う為(スマホからだと、投稿前に文字数が分かりません……)、前回読んだ時から話が繋がっていない場合があります。
*[本屋クロックドア 編]に登場する推理は、蒼城双葉さんの作品から着想を得ている事を、書き忘れていました。 投稿後に記述する事となり、申し訳ありませんでした。
*[本屋クロックドア 編]に登場する推理は、蒼城双葉さんが「小説家になろう」やpixivに投稿している、
『探偵王子カイ 容疑者ナギとワールドフールの螺旋』(https://ncode.syosetu.com/n0703eo/#main)から着想を得ています。
(具体的に言うと、「第二章15 『台風の目』」内の、タロットと星座の話からです。)
*蒼城双葉さんから、pixiv内のメッセージチャットを通じて、「小説家になろう」へ掲載する許可は戴いています。
*pixiv版では、蒼城双葉さんの作品を紹介している箇所がありましたが、そこは削除しました。
これは、日本の古典文学を元にした、二次創作作品です。
原作は、後書きに載せます。
[神戸][南京町]といった、現実の地名が出てきますが、実在する同名の場所とは、外観が大きく異なる場合があります。
「すみません……。」
しかし、店員の後ろからヒョッコリと、別の客が姿を表した。
「申し訳ございません!
こちらのお客様のご要望を終わらせ次第、すぐに伺いますので。」
店員は晃に、ペコリと頭を下げた。
喋り方がハキハキとしていて、快活そうな青年だ……晃は、そう考えながら、答えた。
「は、はい……!」
店員と客は、晃から見て左の方向に歩いていき、本棚の向こうへと、姿を消した。
晃は、その場で待つ事にした。
「さっきから、何の本見てるの?」
「これ。」
「タロット占い……。」
「うん。」
子供……女の子……の会話が、晃の耳に飛び込んできた。
晃が居る列の、裏側(……店員と客が進んだのも、この方向だ。)が、占いのコーナーになっていて、そこに女の子たちは居るのだ。
「そういうあんたは?」
「星座占い。」
「面白い事、書いてあった?」
「面白い、っていうか……。
星座に属性があるのは、知らなかったな。」
「属性?
……あ、ほんとだ。
乙女座は、地属性……。」
「……お待たせしました!」
気付けば、先ほどの店員が、晃を見据えて立っている。
彼の茶髪は、眉の少し上辺りで、ザクザクと切られていて、元気そうな印象を受ける。
四角い眼鏡(……レンズが、横に長い長方形である。)と、その奥の、聡明そうな緑色の瞳が、彼の賢さを醸し出している。
前掛けのエプロンに、付けられた名札には[くましろ]と書かれている。
晃はとりあえず、パッと浮かんだ2文字、[熊]と[城]をあてた。
「それで、何のご用でしょう?」
「えっと……2つ、お伺いしたい事が、あるんです。」
晃の声は、少し上擦り、震えていた。
支倉と離れ、たった1人で、知らない人間と話す機会は、滅多に無いからだ。
「はい。何でしょう。」
「……1つ目は、ここに来たお客さんについて、知りたくて。」
「ふむ、お客さん……。」
「はい……。」
晃は、下げて持ち歩いていた、本革張りの鞄から、蕗屋の写真を取り出した。
「この人が、この1週間の間に、こちらのお店に来ましたか?」
晃は、蕗屋の写真を、店員に見せながら言った。
店員は写真を、ジ~ッとよく見てから、晃に答えた。
「いえ、見ていませんね。
少なくとも、私がシフト入っている時間には。」
晃は、店員の顔を、よく観察していた。
……写真を見せる前から、答えるまでの間に、表情の変化は見られなかった。
「そうですか……。
それより前は?」
「うーん……俺が働き始めたのは、3ヶ月前なんですけど、それから見た事は、無いですね。」
……店員の顔に、感情の変化は見られなかった。
彼は蕗屋に、思い入れは無いのだろう……晃は、そう判断した。
「では……こちらの人は、どうですか?」
晃は、今度は斎藤の写真を、店員に見せた。
店員はそれを、少しの間ジッと見つめた後、質問した。
「この1週間の話ですか?」
「? はい……。」
晃には、質問の意図が分からなかった。
「……この人も、見ていません。」
「そうですか……。」
晃は、斎藤の写真を鞄に戻した。
そして、店員に頭を下げた。
「ありがとうございました。」
「いえ。
お役に立てず、すみません。
……2つ目のご要望は、何ですか?」
「……本を、探しているんです。」
晃は、熊城に案内されて、店の中心辺りにあるコーナーへと、移動して来た。
「『黒死館殺人事件』に、『二重心臓』……。
お客さん、可愛い顔して、マニアックな物、選ぶんすね。」
熊城と晃は、このコーナー……小栗虫太郎と、夢野久作の作品が隣あったコーナーに、辿り着くまでの間、少し打ち解けていた。
熊城は、幾らか会話を交わした客には、フレンドリーになる、珍しい書店員だった。
「それとも、プレゼントを渡す相手の、趣味っすか?」
「いえ……。
自分が読む用です。」
「へえ!
どうしてまた?」
「えっと……僕の知り合いが、その2冊を読んでいて。
僕も、読んでみようと……。」
胸に、チクリとした痛みを感じつつ、晃は嘘をついた。
しかし、
[祖先の存在を隠す為、彼が読んでいた本を読む。]
と、正直に話したところで、黙って精神治療の本を、差し出されるだけだろう。
「真面目なんすねー!」
晃は微笑んだ後、気になっていた事を、熊城に尋ねた。
「あの……この、先に輪っかが付いた、銀色の細い、針金みたいな物……それに挟まっている、この紙は……?」
「うん?
ああ、[ポップ]の事っすね!
本を手に取って貰う為に、店員たちが、宣伝文句や、絵を描くんすよ。
ちなみに、ここのは、俺が描いてるんすよ!
ほらっ、このヨットとか。
自分ではなかなか、イケてると思うんすけど……どうっすかね!?」
熊城が指さしていたのは、『二十世紀鉄仮面』のポップだった。
そのポップには、
[航海中の、悪党・瀬高の巨大ヨットに閉じ込められた法水は、生き残る為にあれこれ推理をぶちかます!]
と書かれていた。
その下には、しぶきを上げながら、海を突き進む、巨大なヨットが描かれている。
ヨットの船体は、地の色が黄色く、その上に紺の線が一本、走っている。
船の側面の、高い部分……甲板に近い部分に、烏の紋章が、描かれている。
その烏には、脚が3本、生えていた。
*お読み頂き、ありがとうございます。
*原作
『黒死館殺人事件』著・小栗虫太郎
『二十世紀鉄仮面』著・小栗虫太郎
『ドグラ・マグラ』 著・夢野久作
『二重心臓』著・夢野久作
『一寸法師』著・江戸川乱歩
『心理試験』 著・江戸川乱歩
*絵は自分で描いています。




